2 足立真咲
突然現れた猫田佳奈。
狙いは、分かっている。
幼い日の記憶だが、はっきりと覚えている。
その光景は現実離れしすぎていた。
そこにいたのは、僕と、猫田佳奈。猫田のお母さん、森木さんのお母さん。僕の両親。
僕のお母さんが甲高い声で泣き叫ぶ。
「っなんで……っ!」
そのときのお父さんの言葉を僕は一生わすれないだろう。
「それで。条件ってなんだ?」
「ねえ。私の婚約者になって。親に紹介したいそ。ねえ、どうする?」
「は……?婚約者…?」
「そうよ。貴方も考えてみて。……私の母と父に婚約者としてあいさつすそ。わくわくせん?」
「しないよ!」
思わず叫んだ。
そんなこと。
死んでもしたくない!
でも。
「じゃあ森木花に言っちゃうよ。へえ、いいんだ」
「それも嫌だ。でもお前のお父さんには会いたくない……」
「んー。わがままやなあ」
「どっちが?」
「あの……」
後ろから声がかかる。
その声は。ーー
「あっ!花ちゃーん!」
「……ねえ。佳奈ちゃん、足立くん。何話してたの……?」
あの日のことを思い出した。
猫田がしゃべりだす。
冷たい目をして、淡々と。
詰まることなく、泣くことなく。
「あれ?もしかして知らんかったの?森木のお母さん」
……。
嫌だ。
僕は、あの日から女の子が苦手なんだ。
また同じことには、したくない!
「…やめてくれっ……お願いだから」
猫田。
あの日と同じことは繰り返したくない。
しかし。
猫田は笑っていた。
満面の笑顔で。
「ふふふ。もしかして知らんかったの?花ちゃん」
「やめろっ!!」
「私達、3人は兄弟なんよ。腹違いの」