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てめぇら全員イカれてるっっ  作者: カンパネルラ
2/8

僕「たち」は「一心同体」、のはずでした

この作品はに年ほど前執筆し、ごくごく最近他の小説サイトに載せておいた物です。

もしかしたら小説サイト巡りをしている最中見かけるかもしれません(よほどの偶然がないかぎりw

 僕たちは、小さいころからずっと一緒だった。

 何をするにもいつも一緒で僕たちの毎日は続いていた。

 でもそんな僕たちの様子を良しとしない子もいたようだ。

 クラスメイトの女の子から問われたのは五年生の初めごろだった。


――--ねえ、あんたたちいつもそんなべったりでへんなの。あきたりしないの?

 

  僕たち二人は急な質問にお互い顔を見合わせてきょとんとした。

 どうして、僕たちが一緒にいるのがへんなのだろう。一緒に居たいから二人で居るだけなのに。ほかの人からすると「へんなこと」の範疇にはいってしまうのだろうか。

 第一生まれたときから常に一緒なのだから毎日ほぼ二十四時間並んで歩くことに僕らにはさりとて違和感はなかった。むしろ自然で、逆にどちらか片方が隣に居ないときなどそわそわして落ち着かなくなってしまう。それはまるで体の一部を失ってしまったような、そんな感覚。

 だから飽きるとか、飽きないとかそんなことは考えたことはなかった。

 その旨を伝えると女の子はなにかつぶやくと去っていってしまった。

 聞こえはしなかったけれど唇はたしかに「きもちわるい」と動いていた。


 中学に入ってから、咲の様子が変わった。

 大きな変化ではなかった。でも少しずつ変わっていくのが僕にはわかった。

 咲は文学志向の僕とは違い、陸上部に入って元来早かった足を更に鍛え上げ、県大会にまで出場するようになった。

 グラウンド前の芝生の上に座って彼女の走るさまをじっと見ていた。

 僕たちはいつも一緒でなくてはいけない。僕は文庫本を片手に彼女の様子をじっと見る。

 正直、本に集中してはいない。目前の光景に夢中になっている。

 彼女の風と同化するような走りに、僕は惚れ惚れとしてみているのだ。

 その日僕はいつものように部活が終わるのを見計らって咲に近づいた。


ーーーー咲、今日もお疲れ様。このまえ君がおいしそうだっていってた新発売のアイス買ってあるんだ。すぐ帰って食べよう、ね。


 すると咲は少し困ったように首を横に振った。


ーーーーごめんね、幹。今日はちょっと用事があって遅くなるの。だから先に帰っててくれない?


ーーーー僕のことなら気にしないで用事済ませてきちゃいなよ。待ってるからさ。


 僕が笑顔で答えるとそれまで穏やかだった咲の顔が急変した。


ーーーーいい加減にして!私たち、もう中2なんだよ?こんな年にもなってベタベタしてられないでしょ?・・・・・・私の気持ちも考えてよ。・・いい?今日からお互い別々に帰る、いいね?



 今まで溜め込んでいたものが一気に奔流となって流れてゆく川の水のように、僕を突き放した。

 咲はそれだけいうと部活の仲間と一緒に部室のほうへと歩いていってしまった。汗まみれになった体育着を着替えて、それからどうするんだろう。

 ただ帰宅するだけだ。

 何か癇癪を起こすようなことを言っただろうか。まさか。僕は咲が食べたがってたアイスを買ったから一緒に食べようと、誘っただけだ。

 部活のストレスが溜まっていたんだろうか。

 ならすぐ収まるだろうししばらくほうっておいてあげよう。

 そう合点すると僕はそばにおいていた学生かばんを手に学校を出た。

 歩きながら沈み行く夕日を眺めているとあの日のクラスメイトの「きもちわるい」という唇の動きがいやに鮮明によみがえった。



 初め一週間ですむだろうと思っていた彼女の謎の不機嫌状態は僕の予想をはるか上をいっていた。もう一ヶ月たつが咲は下校はおろか登校すら一緒に行かなくなった。

 あの時買ったアイスも、二つそのまま手をつけてない。


ーーーーまた別々?まだ何か怒ってるの?


ーーーー・・・・・・うるさいな。なんだっていいじゃん


 彼女にとって僕という存在は完全に切り離されたものみたいだった。母親の胎内にいたころから片時もはなれず傍に居たというのに時がたつにつれ彼女からその感覚は抜け落ちていったのかもしれない。

 あの日から咲の態度は頑なで、前のように明るい彼女はいなかった。

 クラスも当然のように僕らは一緒だけれど僕らは会話をすることがなくなった。いや、話せないといったほうがよいだろうか。

 僕が話しかけようとしても彼女は他の友人のほうへいってしまう。最近ではどこかの女子グループに入ってしまったようで移動教室にも、昼食時にもそのグループと行動をともにした。

 僕にも話すような人間はいても積極的に話しかけたりはしなかった。慣れないのもあるけど僕自身、他人とあまり馴れ合いたくはなかった。

 何か用事のあるとき、一言二言話す程度。一日に5回話せばそれでも多いほうだった。

 僕には咲しか要らない。僕が咲を必要とし、咲も僕を必要とする。

 これは至極当然のことなのだ。彼女が本当に僕を排斥しようなどと、思うはずがない。

 だから今の彼女は少し二人だけでいることに飽きているだけなのだ。

 きっと、そういうことなのだ。それに以前にも一時期、そういうことはあった。

 彼女は今大会を控えている。情緒不安定の折に僕に八つ当たりしているだけだ。 もしかしたら、前回のあれを気にして今こんな態度をとっているのかもしれない。

 だけど大丈夫、きっとまた、直ぐに戻ってきてくれる。

 そう考えると彼女の「不安定期」が終わるのが待ち遠しくなってきた。ふふ、と笑みがこぼれる。

 仕方ないなあ。待っていてあげようか。


 


 虫唾が走って仕方がなかった。言い方はきついけど、私はいい加減辟易していた。

 私は昔からいつも幹と一緒だった。私たちは二卵性の双子でまったく似ていない、男女の双子。

 幹は色白で、二重がパッチリとした品のある男の子だ。幼い頃などあんまり華奢でかわいらしいものだから親の欲目を引いても小さなお姫様のように見えたという。

 反して私なんてちびのくせに骨格がしっかりしていたものだから「本当にふたごなの?」だなんてよく近所のおばさんに聞かれたっけ。

 私たちは似ていない。一緒に居ればいるだけ比べられた。

 みんなはいろいろといっていたけど小さいうちは気にならず、むしろ幹のことが自慢で、うれしかったのを覚えている。

 でもいつからだろう、彼を目障りだと思うようになったのは。

 昔同級生から贈られた「きもちわるい」という嫌悪の言葉。

 声には出さなかったけれど確かにそういっていた。

 そのとおりだ。あれ以来ずっと気にしてた。そして徐々にそのとおりだということがわかった。理解した。

 年月をかけて潮が満ちていくように嫌悪を抱くようになった。

 六年生のころ一度彼から離れようとしたことがある。でもやはり失敗に終わった。

 幹の態度があまりにも純粋で、期待に満ちているから。一時の自由を手に入れた私は、すぐに自己嫌悪と罪悪感に潰されそうになってしまった。

 幹はあまりにも単純に、無垢な赤ん坊のように私を欲している。

 幹には間違っているのは私で、幹が正義なのだと思わせるほどの洗脳力に似た強い想いが溢れている。

 彼は私たちが一緒に居るのはごく当然のことでそうしていなければ両方が死んでしまうなどという異常な妄執ともいえる思考を持っていた。

 彼は私の意識の根底にもそれがあると思っている。いや、求めている。

 だから私が離れるのも一定の期間だけで終わる、すぐ済むと思い込んでいた。

 無邪気でいられるのも鈍感でいられるのもその思い込みのせいだ。

 それがもうたまらなくいやなのだ。彼に束縛されて他のみんなとのつながりが消えてしまうなんて、もういやだった。

 でももうそんなことはさせない。

 私は幹から離れるすべをこれまでずっと考えていた。選択肢はひとつしかない。

 低い知能で用意できるのはこれぐらいしかない。そして、拙くも考え付いたこの恐ろしい策を決行せずにいられないだろう。

 先ほど購入した鼠駆除の薬をかばんの中で握った。

 玄関の前で思わず周囲を見回すけど、歩いている人影すらない。

 蜜柑が腐って溶けていくような強い夕日が私を背後から照らす。ドアに濃い人型がくっきりと浮かび上がる。

 その人型には角があった。まるで鬼のよう。こんな恐ろしい影は一体どんな化物だろうか。

まさか、私じゃ・・・・・・・・・・・・

 思わず瞬きをした。

 もう角はなくなっていた。元通り私の影がそこにあるだけだった。


 


 家に帰ると誰もいなかった。当然だろう。両親は共働きで咲は部活中だ。

 階段を上がると咲の部屋のドアが少しひらいている。

 僕は吸い込まれるようにして彼女の部屋へ入った。熱された空気に背中がじっとりと汗ばむ。

 季節はもう夏だ。初夏とはいえ締め切った部屋を熱気で篭らせるには十分であったようだ。

 それでも僕は窓を開けなかった。そうしてしまうと彼女の匂いが外へ逃げ込んでしまうからだ。

 そう考えると暑さなんてものは感じなかった。

 すぅ、と深呼吸をする。

 甘い匂いが僕の鼻腔をくすぐる。ああ、咲のにおいだ。

 ぬいぐるみであふれるベッドに倒れこみ、においをかいだ。ああ、求めてやまないにおいだ。

 彼女が僕の隣から席を外している間だけ、僕は寂しさを埋めさせてもらうことにしていた。ほんの少しのあいだなんだから咲も許してくれるさ。

 僕はつかの間の幸せを堪能した。

 キィ・・・・・・とドアの開く音。僕ははっ、と我に返った。

 ドアは全開していた。

 振り返ればそこには彼女の姿があった。

 なにしてるの、ときかれたので僕はああ、おかえりとだけいった。聞かなくても見ればわかると思うし、それを答えるのは僕にはちょっと恥ずかしかった。

 彼女の声は震えていた。驚かせてしまったかな。

 すると彼女はちょっとまってて、というと階段を下りていった。

 戻ってくると彼女はコップに入れたサイダーを僕に差し出した。

 

ーーーーねえ、飲んで。こんな暑い室内のなかだもの。のど、渇いたでしょ


 あ、元の咲だ。僕はうれしくなった。僕を見て、笑ってくれてる。優しくて可愛い、僕の咲だ。

 彼女からコップを受け取るといきおいよくそれにくちをつけた。汗が額からたれてコップに入る。

 サイダーが口の中で、甘くはじけた。









                      了






 中身が重いければ重いだけ考えるのが楽しくなります。

 この二人を主人公にしたりしなかったりで連載小説は短編でやっていこうとおもいます。

 他のサイトでやってるほうは完全にこの二人が主役です。(ラブコメですが)

 それでは、お粗末さまでした

 閲覧、お疲れ様です

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