第7話 能力に気付いた時
2014年5月下旬…またいつものように、さとしは学校に行って授業を受けている。
相変わらず孤立している。もはや他の皆は誰も相手にしてくれない。だから時々イジメられたりもする。女子トイレに靴を投げ入れられ、それを拾いに行けといって、拾いに行かせて、女子がそれを見つけて変態呼ばわりもされた。先生に厳重注意をされた。当然みゆにもこの話しは耳にしてる。
ある日は、水を掛けられたり、黒板に変態さとしと書かれたり、もはやイジメの対象となってしまっていた。さとしもここまでなるのは予想外であった。
でもさとしはこの程度では何も思わない。これまでに相当な敵と出会い、戦ってきたさとしにとっては、これは問題ではなかった。
さとしが自分の能力に気付いたのはさとしが小学生の頃であった。親とバッティングセンターへ行った時のことだった。父さんは、野球好きで、さとしはしごかれた。疲れ果てたさとしは休みたいと言ったが、父さんはやれと言うので、我慢してやっていた。ところがやっていくうちに徐々に球が遅く見えるようになってきた。さとしは速度を遅くしたかと父さんに聞いたが父さんは遅くしてるどころか速くしているという。たしかにメーターを見ると時速130kmと表示されている。しかしなぜかさとしには人の走る速度にしか見えない。おかしな感覚を覚えたまま、家に帰りその日はそれで終わった。
ある日、超能力の番組を見て、さとしは思った。
「もしかしてあのおかしな感じは…」
さとしは、高速道路の脇にこっそりと立ち、車を眺めていた。そして意識を集中させると、なんと時速100km以上で走行している車が人が歩いてる速度と変わらないように見えた。さとしは驚いた。自分も超能力を持っていると。初めは皆に自慢したが、信じてもらえず、変人扱いされて、友達もいなくなり、孤立状態となってしまった。そこでさとしは開き直った。
「別に信じなくてもいい。俺がいつか超能力を研究して実在することを証明させてやるんだ。」
それからさとしは皆と関わるのを止めて、超能力の研究に励むことにした。そして現在に至っている。
夜の街角で、一人の男が歩いていた。その男は帽子を深くかぶり、黒いコートを羽織っている。市内とはいえ、ここは街の外れで、深夜になれば人通りは少ない。その男は、自分が通っていた高校を眺めていた。それはさとしが通っている高校だった。
その男は高校を睨みつけるような形でその場を去った。