窓カラス
三作目の短編。会話文が無いものに挑戦してみました。
私の家には天窓がある。お陰で雨漏りすることもしばしばなのだが、毎週、真っ黒な客がやってくる。
彼は、いや、もしくは彼女なのかもしれないが、とにかく何が気に入ったのか毎週日曜日の朝、決まった時間に家の屋根に降りてくるのだ。その所為か、彼が降り立つと足音で目が覚める。そして、天窓まで近付き、こちらを見つめる彼と布団の中からじっ、と見つめ合うのである。
しかし一分も経たずに彼はこちらから目を逸らし、飛び立って行く。だがそれが、それだけでも、楽しかったのだ。が、今日は少しいつもとは違うらしい。天窓をコンコンとつつき、何かを置いて行ったのである。
立ち上がり、よく見てみると、それは干し芋であった。贈り物、という事なのだろうか。ありがたく受け取りたいところではあるが、如何せん、外に置いてあるものには抵抗がある。彼には悪いが、干し芋は捨ててしまった。
それから毎週日曜日の朝、彼は干し芋を置いて行く。干し芋を食べることは無かったが、それでも嬉しかった。友人が出来たように思えた。初めての友人だった。
ある日曜日の朝、彼は来なかった。いや、来てはいたらしいのだが、天窓からこちらを覗くことはなかった。らしいと言うのは、天窓の淵に、干し芋が一つ、置いてあったからだ。
毎週、此方が目覚めるのを待つかの様に、覗き込んでいた彼が、足音も立てずに去って行ったのである。ただ、自分が目覚めなかっただけなのかもしれないが、何故か、次の日曜日が彼と会う事の出来る最後の日になる気がしていた。だから、こちらからも、彼に何か贈ろうと考えた。彼は何を好むのだろうか。悩んだ末、生魚に少し火を通した物にした。
日曜日、カツカツ、という音で目が覚めた。彼の足音である。昨晩、置いておいた椅子に乗り、天窓を開ける。彼は不思議そうにこちらを見ていた。その嘴には、いつもと同じ様に、干し芋が咥えられていた。
自らも天窓から屋根に登る。当たり前だが、屋根は汚れていた。逃げることなく、こちらを見つめる彼に手を差し出すと、彼はそっと手の上に干し芋を置いた。こちらもポケットから布に包んだ魚を出す。彼は嘴でそれを受け取ると、足と嘴で器用に開いた。
しばらくして魚を完食した彼は、目の前で初めて鳴き声を上げ、飛び立った。少しずつ遠くなって行く彼を眺めながら、眩しい朝焼けの中、私は、干し芋を口に含んだ。
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