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17(わたしの合格祈願)

 返納所は直ぐにみつかった。木造に金網、トタン屋根。どうにもゴミ捨て場っぽい印象が拭えなかった。立て札がなければそう思われても仕方ないような有様で、薄暗さも相まって、どうにもバチ当たりな気がした。江戸川を見ると苦笑していた。彼女もまた同じ印象を抱いたのだろう。男の人がぽいと破魔矢を投げ入れたのを見て、特に作法だとかないと思うのと同時に、やっぱりゴミ捨て場じゃないのだろうかと疑念が再び胸の内でかま首をもたげた。確かに返納とはいうが。捨てるには違いない。預かったお札と破魔矢を、わたしも倣って投げ入れた。

 叔母の言葉通り、返納所の直ぐ隣に小さなお社があった。背の低い鳥居をふたりでくぐり、先に参拝していた女の人に次いで、おさい銭を投げ入れた。立て札に記された通りの作法に則り、頭を下げて柏手を打ち、お参りした。

 無事に受験が終わりますように。叔母の仕事が順調でありますように。元気で過ごせますように。

 金額以上にたくさんのお願いをしたと思うけれども構うものか。神さまは仕事熱心でもないけれども、狭量でもないはず。

「こっちはお稲荷さんなのね」お社を引き返す道すがら、江戸川が視線で示した。鳥居の左右に石の狐が鎮座していた。「油揚げ、持って来れば良かったかな」

「お願いが届いたらなら、そのお返しに来ればいいって」

 江戸川が右腕を絡ませ、手を握ってきた。「何お願いしたの?」

「合格祈願、商売繁盛、無病息災。そっちは?」

「内緒」江戸川はうっすらと微笑んだ。「そういえばダウトだったね」

「なにが?」

「お父さんが犯罪者」

 ぱらぱらと、まばらに返納に来る人影とすれ違った。わたしは深く息を吸って、ため息のような白いそれを吐き出した。「そうね」

「良かったね」

 何と返答していいか迷っていると、江戸川は左手をコートの袖から伸ばし、手首の内に巻かれた腕時計を目の高さにしていった。「明けましておめでとう」

 茶色い皮ベルトの小さな銀色のそれをわたしに見せた。シンプルな文字盤の上で二つの針が真上を差して重なっていた。

 江戸川は微笑んだ。わたしも笑い返した。「おめでとう。今年もよろしく」

「あまりないけれどもね」

「なにが?」

「引っ越すの」

 繋いだ手をまるで逃さないようにきゅっと握り、耳元に顔を寄せて彼女は囁いた。「だからわたしの合格祈願はミカの分」

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