15(年明け)
参考書と問題集を埋もれて受験に備え、叔母とふたりでぎゃーぎゃーいいながら大掃除を済ませ、おせちを用意し、年明けを待った。
「今日はもう勉強いい?」
お蕎麦を啜っていると叔母が訊いた。
「大丈夫だけれども?」
年始の準備で何か忘れただろうかと頭の中で探した。
「初詣で行かない?」
「これから?」
叔母は頷いた。昨年は確か年明けにお参りした。「まだ鐘も鳴ってないのに?」
「合格祈願と甘酒貰いに行こう」
「商売繁盛も」
にやっと叔母は笑った。だからわたしも笑い返した。
夜気に身をさらしながら、歩いて神社に向かった。とても静かな夜だったけれども、そのすぐ向こうに賑やかさが控えているのを感じた。
「風邪を引いたらたまらんなぁ」と叔母がボヤいたので、「無病息災もお願いしよう」と提案した。
はたして神社の境内にはすでに人が集まり始めていた。伝統だとか荘厳さよりも、お祭りを間近にしたような雰囲気に満ちていた。鳥居をくぐったところで後ろからくいっと腕を掴まれ心底驚いた。深紅色のコートを着た江戸川だった。
「驚かさないでよ」まだ心臓がドキドキしている。
「ずいぶん早いのね」
「あんたも同じでしょ」
すると彼女は今し方気が付いたように「そうだった」微笑んだ。
「お友達?」叔母の声に、彼女はぴょこっと頭を下げた。「同じクラスの江戸川です」勢い余って、「とっとっと」僅かによろけかけたのを支えてやった。叔母が笑った。
挨拶と紹介を終えると、叔母にお札と破魔矢を渡された。「裏に返納所があるから持って行ってくれる?」
「一緒に行っても?」
江戸川の言葉に、叔母はもちろん、と応える。「隣に小さなお宮があるからそっちでお参りしておいで。あたしは今年の(あ、来年か)お札を買って、あっちの焚き火んとこで甘酒でも飲んで待ってるから」
ごゆっくり、なんて送り出してくれた。
なるほど、確かに表の本殿だろうか、そっちは列が作られつつあり、参拝するまで待たされそうだった。わたしは人ごみが余り好きでないので、これ幸いと叔母の言に甘えた。




