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おんながおとこに抱かれるということ。 ソフトクリーム。

作者: ミハナ

ドアがひらく。

私の体はそのすきまにすべりこむ。


エリザベス女王が最期に乗っていたというその車は、

たしかにドアが丈夫で重く、沈み込むようなシートはひやりとしている。


丁寧に私の体を洗うことと一緒に湯船につかることが、

いちばん楽しそうに見えるこのひとは、会うたびにいつも、

るるちゃんは将来何になるんかなあ、と頭をなでながらわらう。


ベッドでの時間は特別に短く、

このひとはいつもはじめからおわりまでひょうひょうとしている。


ドアがひらく。

エンジンがかかり、タイヤがすべる。


いつもの曲がり角がみえ、けれどもまっすぐすすんでいく。

駅はすぐそこなのに、線路がだんだんとおざかる。


遠くに行きたくなった、という声を聞く。

車は高速道路をすいすいと進んでいく。


こまるよ、という私の声に、

そうだよなあといってわらうその顔はいつもよりもずいぶん物静かで、

冗談だよといいながら、どこかのドライブインに入るのをみる。


雑多な、騒々しくてしょぼくれたドライブインの、

小さなテーブルの向こう側で、買ってくれたソフトクリームを食べる私をみている。


さっきまでその手のひらで包まれていた私の体。


おいしいと、遠くにあるそのひとの笑顔につぶやく。



ドアがしまる。

いつもの駅まではあっという間で、そのことに私はぼんやりとする。


いつものように手をふって別れる。なにも気づかなかったふりをする。



思い出すいくつかのこと。


そんなことをいいだせないあなたは、

だけれども私を好きだったということ。

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