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果てしなき道の先に

作者: ZERO

暗い夜道の真ん中に男は立っていた。車や歩行者が通る事のない山の旧道だった。男は自分が何故この夜道にいるのか…分からなかった。だが心は落ち着きただ夜空を見上げるだけで何か不思議な力が自分を此処に呼び寄せたのではないかと思えた。

男はもうすぐ60歳になる。仕事一筋で嫁さんは5年前に癌を患い亡くなった

男は木川 真

刑事だったが嫁さんが亡くなり生きる気力を失いただ毎日死について考えるようになった

生物は必ず死ぬのだ。それがいつ来るのか解らない恐怖となる。だが真は死について考えるようになってから犯罪者の手に掛かって殺される被害者が少なくなるよう願ったがそうは行かないのが現実だった。

戦争や自殺…何も犯罪者の手に掛からずとも人は死んで逝く…

「人間ちゅうのは不器用な生き物だな…どうして死に急ぐ…」

真はそんな1人言を言いながら夜空を眺め続けていた



家に帰り着く頃には朝日が登り心地よい風が吹いていた

「ただいま」

家に入り仏壇に向かい仏壇の前に座った。真は嫁さんの写真を見ながら涙を浮かべていた。

すると電話がなり

「木川さんのお宅でしょうか?」

若い男の声だった

「はいそうですが?」

「私は立花と申します。突然ですが会って話せないでしょうか?例の事件の事で…」

立花と名乗る男はそうゆうと黙った

「例の事件?」

「電話ではちょっと…」

「…私はもう刑事ではない。悪いが…」

真はそうゆうと電話を切ろうとしたが気になって様子をうかがった

「それは分かってますがどうしても木川さんのお力が必要なんです。我々ではもう…」

立花は切羽詰まった様子だった

しかし真は不思議だった。現役の刑事が引退した60手前の男に助けを求めている事が…と思っていると

「やっぱり今から伺います!会って話さないと気が済まないので」

立花はそうゆうと電話を切った


真は受話器を置くとタンスからスーツを出し着た。自分でも何故スーツを着る気になったか分からなかったがスーツを着ると気持ちが高ぶった


「すいません。立花ですが」

真は玄関に向かいドアを開け警察手帳を見せるように言った。立花は迷うことなく胸ポケットから警察手帳だし真に見せた


真は確認し中に入れた

2人はリビングで話を始めた

「例の事件てのは?」


「えぇ…木川さんが担当していたあの殺人事件の犯人が脱獄しまして…今も逃げてます」

立花は真に言いづらそうに言った

「何だと!!」

真が怒るのも無理なかった。

殺人事件の犯人の倉田は1人の男の命を奪った。酔った2人の男が喧嘩し突き飛ばした際に突き飛ばされた男が頭を強打し亡くなったのだ

この事件を担当し逮捕したのが木川 真だった。逮捕したのは真が刑事を辞める2年前だった。真は倉田に更正し社会復帰を目指せと言ったのを思い出した


倉田は5年の実刑判決だった。が刑務所のなかで問題を犯してしまい8年に刑期が延びたのだ

「しかし…今更逃げてどうなるとゆうんだ…7年たった今更…」

真は首を傾げた


「分かりません…」


立花は頭を抱えた


「しかし野放しには出来まい。俺はもう刑事じゃないし今の話は聞かなかった事にする…が俺も奴を探しては見る」


真はそうゆうと立ち上がり立花も礼をゆうと立ち上がった

「何か解りましたら僕の携帯に連絡を」

真に自分の携帯の番号を書いたメモを渡し立花は去った


「さて…最後の仕事かな。母さん見ていてくれ、俺の最後の仕事」

仏壇に向かいそうゆうと真は家を出た。


真は倉田が行きそうな場所を探した。昔住んでいたアパートや職場などは警察が、押さえていると思い倉田が所有していた土地の廃墟に行くことにした

この場所を知っているのは、少ないと思ったからだった


廃墟に着くと荒れ果てており人が住める場所ではなかった。中に入るのも苦労したが中に入ると異臭が立ちこめていた

「…っ」

異臭が鼻を突き吐き気をもようしたがその異臭の原因はすぐにわかった

ネズミや猫の死骸が幾つもあった。

「ひどいな…」

真は一通り見て回ったが人がいた形跡は無かった


「流石に…いないわな…」

真は外に出てふぅーと深呼吸をし廃墟を後にした。



あちこち捜しては見たが手がかりも無く時間だけが過ぎていった


立花からの連絡もあったが有力な手がかりも無いとの事だった。自分の非力さを痛感したような様子だったがそれは立花だけでは無く、真も同じだった


そんなある日ふと真はあの山の旧道へ行こうと思いたった。夜空が見たくなったのだ。


旧道の途中にさしかかった頃前方に人が倒れていた

。真は急いでクルマを降り倒れている人に近づいた



「お前は…」


真は目を疑った。やせ細ってはいるが倉田だった。目は虚ろで口で息をしていた


「…木川さん…はは…久しぶりですねぇ…7年ぶりかなぁ」


倉田は弱々しく言った


「何故脱獄した!!」


真は怒りを露わにして言ったが少し後悔した。


「実はね…僕…癌らしいんです…肺癌が他にも転移してね…もう助からないらしいんですわ…そしたらね…夢の中で…この場所が何度も出てきてね…死ぬ前に見てみたい…この眼で…って思った」


倉田は夜空を見ながら言った


「お前は人の命を…」


「分かってる!!もう分かってるんだ…僕が何をしたかも…そして…自分の命が短い事を知って気づいた…死が此処まで怖いものかと」


倉田は泣き出し地面を殴った。真はそれを見ながら何故か涙が溢れた


「今からでも遅くない。警察に行こう。そして命ある限り償うんだ」


「…それがいい…罪は消えないし…あの人も帰って来ない…僕は…僕は…」


倉田は頭を抱え号泣し真は車の後部座席のドアを開け倉田を乗せた


「なぁ…木川さん…この道の最果てには何があるんだろうな…」


真は答えられなかった…その後2人は警察署に向かい倉田は再び刑務所に入った


それから数日後立花から電話があり倉田が死んだ事を知らされた。


「木川さん…倉田最後にこう言ったそうです。『木川さんに伝えてほしい。道の最果てを先に見に行く…』と」


真は泣いた。何故か涙が止まらなかった。倉田が今まで刑務所で懺悔し罪を償って来た。遺族もそれを認め刑期を短くしてやってくれと裁判所に訴えていた


なのに最後は刑務所の中で1人死んでいったのだ…



真は数日後山の旧道に花を持って行った

「道の最果てには何があった…倉田よ…俺も近々そっちに行くよ…」


真は花を道路脇に置き家に帰った。


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