とある青年の述懐
すまないな、突然呼び出して。気にするな?ああ、ありがとう。何の用だと?本当に気の早い奴だ。少し、夢を見たんだ。とても優しく、暖かくて残酷な懐かしい夢。矛盾しているだって?だが、これが一番しっくりくる表現なんだ。そう、とても…。
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それは、冬から春へと変わる肌寒い時期だった。俺には、恋慕の情を抱いている少女がいた。少し煩いほど快活で、人に構いたがる優しい少女だった。彼女と俺は仲が良くて、だが、俺の口からは「仲が良い」なんて、気恥ずかしくて、とても言えなくて。だから、告白なんて出来なかった。出来るはずがなかった。
そんなある日、彼女が俺と2人きりで話したい事があると言ってきた。人目に付かない所に、2人で行った。俺の心臓の音が聞こえそうな位煩かった。手が汗ばんでいて、緊張していたのが分かった。
2人きりになって、何分か経ったとき、俺には長く感じたのたが、彼女は口を開いた。開いた口から出た言葉は「好き」という告白の言葉。頭が真っ白になった。真っ白になって、自分の思い通りの言葉が出てこなかった。
そして、俺の口から出てきた言葉は「俺たちは友達だ」という意志とは別の言葉。言ってすぐに後悔した。
彼女は「そうだね」と笑いながら言った。目に涙がたまっていた。そして、「ごめんね」と言って俺の目の前から立ち去った。
謝るのは俺の方だと思った。
俺は急いで、彼女の元に向かった。彼女に自分の本当の思いを伝えるためにだ。だか、その言葉は彼女には伝わらなかった。伝えるより先に、俺は世界から消えた。
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これで俺の話は終わりだ。その続きはだと?それは、お前も知っているだろう。彼女の方は知らない。会える訳がないからな。
結局の所はなんだってだと?まあ、あれだ。後悔するくらいなら、ちゃんと伝えておけって話だ。何時から気付いていたなんて、お前等は分かりやすいからな。伊達にお前等の上司やってないからな。
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コンコン
扉が叩かれる音がした。
「魔王様」
先程まで、青年の話を聞いていた男が青年を呼ぶ。
青年は少し眉をひそめたが、すぐに顔を引き締めた。
「入れ」
青年の呼び掛けで、1人の男が部屋に入ってきた。
「何用だ」
青年の質問に男が応える。
「勇者がこの世界に来たと、部下から報告が来ました。」
「そうか、ご苦労だった。下がれ」
「はっ!」
男は去っていった。
「遂に勇者が来ましたね」
「ああ」
「もしかしたら、魔王様の願いが叶うかもしれませんね」
「そんなものは詭弁だ。お前も分かっているはずだ。だが、かけてみない事はない。我が願いのために」青年の口元には笑みが浮かんでいた。
そして、青年の願いは…。
もしかしたら、何かとリンクしているかもしれませんね。
青年は不器用な人で口下手をイメージしました。語り手だから、結構喋ってますけどね。普段の彼はあそこまで喋りません。多分…。