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彼女の隣で  作者: 青葉
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第五話 ようこそ

「よ〜し、掃除終わりっ!!」

 教室の机をすべてもとの位置に並べてその日の掃除は終わった。後は自由な放課後である。

 掃除は別に、嫌いじゃない。どうしてだか分からないけど。

「ねえ、相原〜」

 相田沙紀が箒を持ったままこちらに近づいてきた。

「何だよ?」

 心なしか彼女はぐったりしたような感じに見える。

「聞いてよ〜。昨日バド部の体験入部してきたんだけどさ〜、予想以上にハードでもう筋肉痛で……」

 そんなことを言いながら彼女は肩をグルグルと回した。

 数日前に、

『ねえ、部活どこにするかとか決まってる?』

 なんて聞かれたのを適当に、

『いや、まだだけど……』

 と答えたのが発端で、相田沙紀は何故だか僕に仲間意識みたいなものを抱いてしまったようなのである。ここ何日か彼女は僕にそんな話ばかりしていて、確か昨日は女子バレー、一昨日は女子バスケット。そのどちらも合わない、とこいつは言っていた。

「シャトルがあんなに早く動くなんて信じらんないし、絶対届かないし、あれはあたしには合わないな〜」

 こちらに話す隙を与えないマシンガントーク。流石である。

 だがしかし、もう入学して二週間が経った。いつまでも押されている僕じゃない。

「も〜部活決まんない〜どうしたらいいか分かんないよーーー」

 そんなに頭を抱えるくらいなら無理して部活に入る必要なんて無いんじゃないか、とか思ったのだけれど、僕はそれを口にはしなかった。何故ならそれは面倒くさいから、もし僕がそんなことをいったらまた彼女の機銃掃射を喰らうことになるからだ。

「ごめん相田さん、俺部活行くわ」

 僕は彼女にそれだけ言って教室を後にした。背中から、

「ちょ、ちょっと部活ってどこにしたの!?」

 そんな声が聞こえたって、

「裏切ったわねーーー!!!」

 こんな見当違いの文句が聞こえたって、僕は気にしない。

「鬼、悪魔、変態、スケベーーー!!!」

 ………後半部分は完璧に間違っていると思う。




「こんにちはー」

 昨日とは違う挨拶で部室の扉を開いた。

「あ、相原君。やっほー」

 そういって笑うひとみ先輩はやっぱりキレイだった。

 

 昨日、ひとみ先輩に起こされた後、僕はとりあえず事情を説明したりした。

 もちろん先輩の寝顔に見とれていたことは言わなかったけど。 

『そうなんだ……。ゴメンね寝ちゃってて』

 ひとみ先輩は申し訳なさそうに笑いながら言った。

『い、いえ別に……』

 イイもん見さしてもらいましたーーー!!!

 ……もちろんこれも言ってないけど。

『私、二年六組坂井ひとみ。よろしくね!!』

 ひとみ先輩は右手を僕の方に差し出してきた。

『い、一年三組相原誠一です!!!!』

 僕はいきなりのことに焦りながら、先輩と握手をした。

『演劇部へようこそ!!!』

 そう言いながら笑うひとみ先輩はやっぱり綺麗で、それに可愛かった。

 ―――そう、僕は演劇部に入ったのである。



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