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彼女の隣で  作者: 青葉
2/14

第一話 出会い

 「………あ」

 ニ番、だった。

 一番は「相田」で、二番が僕「相原」。

 桜一高の入学式、昇降口前の掲示板で、僕はいきなり衝撃を受けた。

 そんなのどうでもいいことかもしれないけど、生まれてこの方僕の出席番号は一番で、二番になるのは初めてだった。

 一年三組の名簿の先頭には「相原誠一」ではなく、「相田沙紀」としっかりとプリントされている。僕はそのゴシック体の「相田」を少しにらんでから教室に向かった。



 教室の中は静かで、誰一人話をしている奴は居なくって、誰もが指定された席に黙って座っていた。

 まあ、当然といえば当然の風景なんだけど、だけどやっぱり緊張した。

 黒板に磁石で張られている座席表を確認。僕の席は窓側の――――二番目。

 一番前はもちろん出席番号一番、相田。

 そいつはまだ来ていないようだ。

 僕は席について窓の外を見た。

 窓からは駐車場と、そして桜の木が三本見えた。

 その桜は満開で、僕は思わず目を奪われた。そうやって見とれているうちに、教室にはどんどん生徒が増えてきていた。

 

 桜一高は、去年創立百二十周年を迎えた県内一の伝統校である。

 校訓に「自主自学」をかかげ、服装も自由、校則もほとんどないといった、何ていうかまあ、とにかく自由な学校なのである。

 今教室を見回しても、皆着ている服は様々だった。僕は中学の制服を着ているけど、ちょっとお洒落なジャケットを着てる奴とか、もろ私服の奴とか、色々居た。

 ここは県内で一番入るのが難しい進学校で、「一高生」っていうのはこの辺では結構なブランドになっている。


 ボーっと外を眺めていると、チャイムが鳴って担任と思しき男が入ってきた。

 前の席は――――まだ、空いていた。

 担任は名前を森といった。五十手前くらいの体育教師だそうだ。

 森は名簿を開き、点呼を始めた。

 「相田ー」

 いきなり返事はない。

 担任も顔をしかめる。

 僕はまだ見ぬ相田に、はあ、とため息をついて、次に自分の名前が呼ばれたので慌てて返事をした。

 そのとき、少しだけ声が裏返ったことは気にしないことにした。



 入学式はなんの滞りもなく進んでいった。

 新入生の点呼は今ちょうど、二組が終わったところだった。

 当たり前だけど二組の点呼が終われば次は三組の点呼である。となると、さっきの教室と同じことが起こる訳で、また気まずい空気が流れる訳で、それは嫌だった。

 「何やってんだよ」

 僕は小さな声でそう呟いて体育館の入り口の方に首を向ける。まだ会ったこともない奴にこんなこと言うの変だな、なんて思って軽く頭をかいた。

 「一年三組、相田沙紀」

 担任も少し迷いながら言った。

 返事がなくて、沈黙が流れる。

 「相原誠……」

 担任が僕の名前を呼び始めたその時だった。

 「すいませーーーーん!!!遅刻しましたーーーーー!!!」

 入り口が音を立てて開き、彼女は体育館に飛び込んできた。

 そいつが、相田沙紀だった。

 

 

この物語に出てくる高校は僕が実際に通っている学校がモデルです。

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