事件3 鬼ごっこ(チェイス)③
「とにかく。おじさんは逃げたいのね」
休憩を終える頃。
二人が立てこもる廃ビルの周囲を、膨大な数の気配が取り囲むのを感じながら、ルカは男に確認する。
その数は、四百と少し。
下手な戦場よりもしゃれにならぬ数である。
「身も蓋もないでござるな。だがその通りと言えばその通り。たとえ竜王会滅びるとも、あの女だけは野放しに出来ぬ。さればこそ、今は下賎の刃にかかるわけにも行かぬ。西区から出れば、この身を隠す当てもある。今は恥を晒してでも生き延びねば……」
ルカは一度目を瞑り、そしてかっとその目を開いて男に言った。
「よし。これも乗りかかった船。おじさんが無事に逃げられるまで付き合うわ」
「いや、そういうわけには行かぬでござる。拙者が先に出るゆえ、童は隙をついて逃げるでござる」
「何言ってんの。ここまで来たら何しても一緒よ。要はつかまるか、逃げ切れるか、でしょ、おじさん?」
ルカが笑顔でそう言うと、ふぅと男は嘆息をついた。
「おじさん、ではどうも締まらん。アイギスと呼んでくれ。それから童。お前先ほど呪禁を使って刃を防いでいたな。あれは霊刀には効かぬ。危ないから、これを使ってくれ」
そう言うとアイギスと名乗った男は懐から一本の守り刀を取り出す。
ルカはそれを手に取ると、白刃を夜の空気に晒した。
「へぇ。いい刀ね」
「拙者が打った。銘を【艶丸】。並みの霊刀であれば相手にならぬ」
そう言って胸を張るアイギス。
ルカはくすりと笑っていった。
「ありがと。それから私のことはルカって呼んで。それでおじさん、私からいっこ提案があるんだけど」
アイギスが眉をしかめるのも気にせずに、ルカは淡々と要点を話す。
夜の鬼ごっこが始まる。
息を潜めて、廃ビルを睨みつける鬼人族たち。
その数420は各々の獲物を確かめながら、必殺のタイミングをうかがっていた。
丸一日の鬼ごっこの末ようやく追い詰めた標的である。
万が一にも取り逃がすことのない様、彼らは軽率に踏み込むことをしなかった。
今でこそヤクザ者に身をやつしているとは言え、先の大戦ではもっとも有力な種族のひとつであったのだ。これだけの数がじっと好機をうかがう集中力は並みのものではない。
共和国の軍隊とすらまともに応戦できるとまで言われる竜王会の構成員達。
その牙が、野生の狡猾さをもって哀れな獲物に突き立てられようとしている。
それらを率いる新体制下の幹部となった男、ギリアムは、廃ビルの向かいのビルからその挙動を見のがさなぬ様に、鋭い眼光で睨みつけていた。黒いスーツの上からでも分かる屈強で頑強な肉体。
天を突き上げるようなたくましい角。
ギリアムは実力者揃いの鬼人族の中でも随一の戦闘能力を誇る、新生竜王会の実質的戦闘隊長であった。
「まだ、動かぬか。だが、いくら時を待っても、己らの時は来ない…」
すでに他の幹部陣は軒並み処刑されている。
残る獲物はこの廃ビルに篭るを残すのみなのだ。
油断ならぬ相手とは言え、時が過ぎれば過ぎるほど各地に散った仲間が集まってくるギリアムに有利に働く。
所詮これは事後処理だ。
新しい時代はここから始まる。
その時―――
爆発が廃ビルの一角を吹き飛ばした。
「来たか――」
ギリアムは慌てることなく、精霊石を使って指示を出す。
「来るぞ。でてきた所を仕留めろ。絶対に逃がすな」
が、しかし。
廃ビルの四面。
それぞれが順に吹き飛ばされる。
「こちらを拡散させたいのだろうが…」
ギリアムはそのたくらみを鼻で笑った。
「誰がここで見ていると思っている」
ギリアムは廃ビルのどこから獲物がでてくるか、眼力を凝らして睨みつける。
すると、東側の壁面から人影が飛び出した。
「東だ!」
ギリアムが叫ぶ。
と、同時に、西からも人影が飛び出す。
「ふん!」
陽動のつもりか。
報告では、少女がひとり、標的と行動を共にしていると聞く。
その少女は噂の黒色精霊種に育てられた小娘であることを、ギリアムはほぼ確信していた。
前のボスと貧民街の黒色精霊種は懇意であったと聞く。
ならば、加勢が入ってもおかしくはない。
だが、所詮は浅はか。
確かに二人が二手に分かれれば、戦力を分散できるだろう。
しかしそれでも200対1。
まして如何に腕が立つとは言え、小娘などはあっという間に仕留められるに違いない。
そうなれば、陽動などは意味を成さないのだ。
ギリアムがあざけ笑いながら兵を二人に分ける指示を出そうとしたその時。
しかし、北と南の壁面から、更に二つの人影が飛び出した。
「は?」
思わず間抜けな声を出すギリアム。
敵は二人ではなかったか。
いつの間にか四人に合流したのか。
理由は分からないが、敵が四人なら部隊を四人に分けるしかない。
しばし呆気にとられていたギリアムだが、あわてて部下達に指示を出す。
「ぜ、全部の敵を追え!絶対に逃がすな!」
叫びながら、自身もビルを飛び出す。
100対1なら、小娘はともかく、戦場で鬼神とまで謳われたあの男を仕留め切れないかもしれない。
それでも尚仕留めるとすればそれは、ギリアムの仕事だった。
「上手くいったね」
100人の鬼人族たちに追いかけられながら、その包囲をまんまと突破した赤い髪の少女と黒いスーツ姿の壮年の鬼人族は、夜の街をひた走っていた。
「凄い術を使うでござるな。そなた本当にヒト種か?」
「よく言われるわ」
そう言ってルカはにこりと笑った。
「でも、【水鏡の術】はただ私たちの影を投影してるだけだから、壁とかはお構いなしに透過しちゃうの。だからあっという間に見破られると思う」
「何の。こうして突破できれば十分。あとは逃げ切るだけでござる」
水鏡の術とは、自らの幻影を左右とか上下の方向を決めて、鏡に映る姿のように同じ動きを取らせる術である。
ルカたち自身以外の幻影はそれぞれ三方向に、ルカたちと同じ様にひた走っているわけだ。
攻撃も当たらない。壁でも塀でもすり抜けるとあればすぐにばれてしまう。
それでもアイギスが言うように、廃ビルを無事に逃げおおせたことは大きい。
「このまま一気に逃げ切れるといいね。さすがに400対1はぞっとしないわ」
「あの中には手練も混ざっていよう。戦わずに済むに越したことはないでござる」
風の様な速度で走りながら会話を続ける二人。
夜の空気が肌に心地いい。
「たまにはいいね。思い切り走り回るのも」
ルカがそう言って微笑すると、アイギスは呆れたように笑った。
「敵わぬな、ルカ殿には。この状況を楽しんでいる?」
「まぁ、ちっとはね。おじさんからしたらそれどころじゃないだろうけど」
そう言って若干申し訳無さそうにするルカにアイギスはいやいやと首を振った。
「せっかく逃げるのならば楽しい方がよいでござる。心苦しいのはルカ殿のような少女を巻き込んだこと」
「気にしないで。勝手に巻き込まれたんだから」
快活にそう言うルカに、アイギスは頭を下げる。
「いつか、いつかルカ殿が本当に困ったことがあれば、誓ってそなたの力になろう。もちろんその時拙者に命があればあればでござるがな」
そう言って、アイギスは自嘲気味に笑った。
その時。
二人の目の前の道の上に、黒い影が映った。
「そこかぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「!?」
慌てて思い思いの方向に飛ぶルカとアイギス。
二人が立った今までいた場所に、巨大な大刀を叩きつける一人の鬼人族がいた。
「危なっ」
ルカが思わずそう呟くのと、彼らの進路に数十人の鬼人族が立ち塞がったのはほぼ同時だった。
この隙に、回りこまれたのであった。
「ちっ」
空を見れば鳳が飛翔している。
男はどうやら鳳の翼を借りてここまで先に現れたらしい。
ルカは忌々しげにアイギスから預かった守り刀を引き抜く。
アイギスは、現れた男と対峙していた。
「ギリアム………か」
その身の丈ほどもある大刀を軽々扱う鬼人族の男に向かって、アイギスはそう呟く。
その声音には複雑なものが馴染む。
「お主ほどの男が、ハインリヒのような小物に従うとは………」
アイギスが苦渋に満ちた声で顔を歪めてそう言うと、対する男は表情を変えずに言い放った。
「時代が変わったのだ。巫女殿がハインリヒを望むならそれもいいだろう。我々は神の声に従うのみ」
「神、だと?本当に信じているのか?ギリアム!」
アイギスの声はしかし、少しもギリアムに届いたようには見えない。
男は大刀を構え、アイギスに対して辛らつな視線を寄越すだけ。
「そうだ。だから死んでもらう。貴様の死は主が望まれたことなのだから」
じりじりと後退しながら、ルカはアイギスに近づく。
「どうする、おじさん?無理やり突破する?」
ルカの言葉に、アイギスはしかし首を横に振った。
「いや。あれを突破するのは並のことではない。ルカ殿は小勢を蹴散らして先に行ってくれるか?拙者は―――」
アイギスは腰に提げた刀を引き抜く。
済んだ水の様な音が周囲に響いた。
「あれを斬ってから行く」
高められたアイギスの気合が、空気を燐と震わせた。
「抜かしたな、老いぼれ!」
「口が過ぎるぞ、小僧!」
瞬間。
ギリアムが大刀を引っ提げてアイギスに切りかかる。
その空気さえばらばらに破壊されそうな一撃を、アイギスは刃で受け流す。
「おじさん!」
「早く行け!ルカ殿!」
そのまま返す刃でギリアムを斬り付けるアイギス。
だがその技量も並大抵のものではない。
低く身を沈めてそれをかわしたギリアムが、大刀を大地をさらうように突き上げる。
「くっ」
後ろに下がりそれをかわすアイギス。
達人同士の決闘がそこで繰り広げられていた。
「これは、手が出せないわね……」
ルカの頬を冷や汗が伝う。
それほどに、目の前の剣戟のレベルは段違いである。
その時、ルカの視界の隅で、アイギスに向けて投げナイフを構える鬼人族の姿があった。
「ちょっと、無粋じゃない?」
あっというまに駆け寄り、艶丸を一閃させるルカ。
その一撃が、見事に投げナイフの刀身を断ち切る。
「すごい切れ味……」
そのあまりの鋭利さに見蕩れながらルカは男を蹴り飛ばす。
「こいつらは私が片付けるから、おじさんは早くそいつをやっつけちゃってね!」
「ルカ殿、しかし…」
「いいから!おじさんはそっちに集中!」
ギリアムと対峙するアイギスに余裕があるわけでは決してない。
アイギスは再び切りかかってくるギリアムの剣を受け止める。
「女に殿を頼むとは。落ちたものだな鬼神?」
ぎりぎりとつばぜり合いをしながらアイギスを嘲るギリアム。
アイギスはそんなギリアムに向かって辛らつに言い募る。
「得たいの知れぬ尻軽女のその尻に敷かれる、貴様らよりはましでござるよ」
「あの方を、そんな風に言うんじゃない!」
激昂したギリアムの一撃がアイギスの肩口を掠めてスーツが弾ける。
「お主の信念に誓って守りたいものを、履き違えるなギリアム」
アイギスは刀を低く構えながら言う。
「剣だけが、お主の頼みと知れ」
「慮外者が!」
ギリアムの剣をアイギスは紙一重でかわす。
その目は、その心を見透かすように大刀の主を哀れんでいた。
これまで、ルカは自分よりも確かに強い存在をアルフリートしか知らなかった。
彼女に全てを教えた師であり父親でもある黒色精霊種と何らかの理由で本気で戦ったとして、ルカの勝利はないだろうと確信が持てる。
いつもは飄々としたあの自堕落な養い親は、それでも世界でもっとも希少な種族黒色精霊種なのだ。
だが、目の前の二人の戦闘は、彼女が養い親から習い覚えたものとは趣を異にしていた。
ルカは鬼人族の構成員を蹴飛ばしたり、殴ったり、投げ飛ばしたりしながら、二人の鬼人族の戦いから意識を逸らすことが出来ない。
「ぬぅ!」
ギリアムが大刀を横薙ぎにはらえば、アイギスがそれを剣の腹でさばく。
「せい!」
アイギスがバランスを崩したギリアムに高速の平突きを繰り出せば、ギリアムはそれを身を捩ってかわす。
「はッ」
「いぇいッ」
双方の体技が達人の領域。
打ち合わされた太刀が甲高い悲鳴をあげ、夜の大気が不安げに震える。
仮にルカがあの二人のいずれかと打ち合ったとき。
それを考えるとルカの背筋を冷たいものが走る。
どんな猛獣にも、闇の一族にも、犯罪者にも臆したことがない彼女の本能が、圧倒的な技術の前に心胆を寒からしめていた。
(勝てるのか?私は?)
鬼人族とは剣に生きる種族である。
鍛冶に長け、剣術に長け、そしてその技を長い年月に渡って伝承し続ける。
その技の集大成は、規格外の少女をして驚愕せしめる。
それはまるでそう、剣舞の様な。
あらかじめ入念な打ち合わせを終えた美しい剣舞のようにさえ見えた。
だが、事実は違う。
どちらかの首が地に落ちるまで続く血みどろの応酬。
命を対価に死を賭した、救いがたい死闘。
そして、それもまた終わりを迎える定めを持つものだ。
昇った太陽がやがて沈むように。
放り投げたコインが地に落ちるように。
やがて死が二人を別つ。
「な……に!?」
その時、丸一日を走り続けたアイギスの足に異常が生じた。
膝ががくりと折れ、彼の重心が一瞬間その制御を失いバランスを失する。
それは、ほんとうに刹那の隙。
アイギスの膝には再び力が篭る。
だが、その瞬間を、飢狼のような剣士が見逃すはずがない。
「覚悟!」
勝負とは非情。
待ったも否やもない。
命を拾うも断つも捨てるも。
すべてはいずれ最後に決まる。
ギリアムが大刀を構えてアイギスの胸を貫く突きを放つ。
それは完全に必殺。
外れることも外されることもない完全なタイミング。
双方が命の喪失を確信したその一撃はしかし。
アイギスの胴を避けて地を穿ちた。
「な!?」
驚愕に目を見開くギリアム。
アイギスは、ギリアムが情けをかけたかと驚いたがどうにも違うらしい。
しかし、勝負は非情。
この隙を見逃すアイギスではない。
「疾ッ」
致命的な隙に、しかしギリアムはアイギスの間合いにはいない。
だからアイギスが狙ったのは、彼の大刀だった。
ギャリィン、という金属音が鈍く鳴り響き、ギリアムの剣は半ばほどから折れ曲がる。
「ちっ」
すぐさま体勢を立て直し、後ろに下がるギリアム。
自分の剣を見やって、彼はまた舌打ちした。
「おかしな真似を……」
ギリアムが睨みつけるアイギスに、ルカが声を掛ける。
「おじさん!悪いけど、これ以上は無理」
ルカの声にアイギスが路地を見遣る。
そこには、視界を埋め尽くすほどの鬼人族が集結しつつあった。
「確かにな…。ギリアム。勝負は預ける。ハインリヒと魔女の首は必ず拙者が取るゆえ、その時に機会があれば続きと行こう」
「馬鹿が!逃がすか!」
そう言ってギリアムは折れ曲がった鉄の塊を持ってアイギスに飛び掛ろうとする。
「霧よ、散り広がれ」
その視界を、突如生じた白い霧が遮った。
「なに?」
「おじさん、今!」
「かたじけない」
路地を覆って余りある膨大な霧を生み出したルカは、今のうちと、アイギスを伴って路地をひたかける。
「おい!追え!逃がすな!」
霧の向こうからギリアムの声が聞こえたが、ルカは舌を出して駆け続ける。
「このまま一気に行こう」
「わかった」
追いすがる鬼人族達を振り切るため、少女と鬼人族は再び長い鬼ごっこを始めたのだった。
「いや、本当に世話になった」
西区の外れ。
空が白み始める頃、二人は鬼人族たちを撒いてようやくここまでたどり着くことが出来た。
「どれほど礼を言っても足りるものではござらん」
「いいっていいって」
ルカはそう言ってはにかむ。
「それよりおじさん気をつけてね。国を出ても追手はかかるかもしれないし」
「なに、国さえ出れば何百人もの鬼人族に追われることはござらんよ。しばらくは機を見るつもりでござる」
「あ、これ、返すね」
ルカがそう言ってアイギスに艶丸を返そうとすると、彼は首を横に振った。
「せめてもの礼に、それはルカ殿に貰って欲しいでござる。他に出来ることもないが」
「ええ?いいの?」
「よい。刀もその方が喜ぶだろう」
「やったー。気に入ってきてたんだ」
そう言って刀を抱えて喜ぶルカに、アイギスは口もとを緩めて笑った。
「ではまた。いずれどこかで会えるといいが。その時にこの恩を返そう」
「恩とか、いいって。でも、また会いましょう」
そう言って、ルカは差し出されたアイギスの手を握る。
朝日が昇る中を、ルカはアイギスを見送りながら手を振った。
「で、いつまでそうして見ているつもりでござる?」
しばらく歩き、ルカの視界から出た後、アイギスが虚空に向かって声をかける。
「ばれてたか」
「ばれもしよう。ギリアムの攻撃を逸らしたのはそなたでござるな」
アイギスがそう言うと、突如空間がぐにゃりと歪んで見える。
そこから現れたのは、漆黒の肌をした精霊種。
「お前がいなくなると、しばらく寂しくなるな。ギルバート・アイギス」
「これも時代でござるよ。アルフリート・ウルグルス」
ギルバート・アイギスと呼ばれた男、竜王会の前首領は、そう言って黒色精霊種に寂しげに笑って見せた。
「あれがお前の養い子でござるか。大きくなった。幼い頃拙者と会っていることなど、覚えてはいないようでござったが。良い子に育ったな」
「言っとくが、惚れても嫁にはやらんぞ?」
「阿呆か」
二人の盟友の邂逅はほんの少し。
やがてギルバート・アイギスは西へと旅立っていった。
「思い通りに、いかないものねぇ」
「申し訳ありません」
暗い部屋で、ギリアムが女に頭を垂れている。
全裸に薄い布を羽織っただけの女は、寝台に腰掛け、妖艶に足を組みかえる。
「ま、いいわ。所詮は座興ですもの。大事に差し支えることでもないし」
薄い唇からちろりと舌を出し、甘い何かを舐め取るように舌なめずりをする女。
「ギリアム。寝台に上がりなさい。今日は貴方にご奉仕させてあげる」
「ありがたき幸せ」
そう言うと、屈強な鬼人族である男は、女を寝台に押し倒し、重たそうな乳房を掴んで蕾を吸う。
女の艶やかな嬌声が室内に響く。
闇が、静かに胎動を始めていた。