郵便局、配達中!!
「今日もよく頑張ったな」
俺はあくびすると、伸びをした。
今、下校途中で、陽が眩しい時間帯だった。
蒸し暑く、少し歩いただけで、汗が出てくる。
まるで太陽が道路を鉄板として、焼こうとしているみたいな感じだった。
「どこかに寄っていく?」
彼女の言葉に、俺はうーんと考え、答える。
「実は俺、この後、バイトが入っているんだよな」
「そうなの?」
「代わってくれって言われたら、シフトチェンジしたんだけど…。まずかったか?」
「それは…」
彼女が足を止め、下を向いてしまう。
まるで1人ぼっちにされた子どもみたいに見え、謝ろうかどうしようか考える。
2人はしばらく沈黙に包まれる。
周りの音は耳を過ぎていき、自分達と関係ないと、バリアを張っているようだった。
俺はどうしようか困っていると、後ろから車が走ってきて、少し前で停まる。
「あ」
思わず俺が呟くと、彼女もそちらを見る。
「郵便局だ」
赤い車は目立ち、運転席から20代くらいの男性が降りてくる。
まるで虎みたいに凛々しい顔つきの人で、彼女が俺を見つめてくる。
俺は無視したわけではないのだが、男性を凝視する。
男性は車を開けると、荷物を取り出す。
「え」
驚いたことに、男性が重たそうな荷物を2つ重ねて持っているからだった。
しかし男性は軽々と持ち上げると、家の玄関に向かう。
俺と彼女は視線を追わせていき、口々に言う。
「すごいね」
「ああ、すごい」
俺は子どものように、わくわくしていた。
逞しい男性が目標なので、まさしく神が機会を与えてくれたかのような、そんな感じで喜んでいた。
俺と彼女は男性が出てくるのを、何故か待ち、様子を窺う。
「あ、出て来た」
家を後にした男性は、爽やかな足取りで出て来て、車の運転席に向かう。
「あの!!」
「…え?」
男性が初めて気づいたようで、こちらを驚いた表情で見つめてくる。
俺が軽く唇を舐めていると、彼女が肘で小突いてくる。
それで俺は正気に戻り、男性に近づく。
「あの、荷物、重たくないんですか?」
俺が質問すると、男性は目を丸くした後、「あはは」と声をあげて笑う。
その声は耳障りの良いもので、鳥達が高音パートを任されたように、群れをなして飛んでいく。
まるで自然界の王様みたいだと感心していると、男性が言ってくる。
「これが俺の仕事だから。重いとか、軽いとか、関係ないんだよ」
「そうなんですか? 腰を痛めたりとかは…?」
「大丈夫。俺、身体を鍛えているし」
力こぶを作ってくれ、俺は「わお」と驚く。
尊敬の眼差しを向けると、彼女が隣から少し緊張気味に言う。
「楽しいですか、仕事?」
その質問はまずいのではと思ったが、彼女も気づいたらしく、耳たぶを引っ張る。
しかし男性は怒らず、氷をもらってリラックスする虎のように、余裕で答える。
「楽しいか、楽しくないかは自分で決めることだよ。働くようになれば分かる」
「はい。ありがとうございました」
俺は彼女と頭を下げると、男性が魅力的に手を上げ、車に乗り込む。
そして一度、後ろを向いて手を振ってくれると、車が走り出した。
その姿をじっと見つめると、
「かっこいい人だったな」
「うん、かっこいい」
彼女も同意してくれた。
「よし、決めた!!」
俺は両手を上げると、
「俺もかっこいいって言われる店員になろっと」
「頑張って」
2人は見つめ合うと、上機嫌に歩き出したのだった。




