まっとうに冒険者をしていたら、ダンジョン経営をすることになった話
ダンジョン、そこは、魔物たちが住む、常に死と隣り合わせの戦場。冒険者、それはダンジョンに挑む者たちの総称。ある者はダンジョンに眠る宝物のために、ある者は己の力を誇示するために、ダンジョンへと潜っていく。
そして私、エイユ・ウールは、ダンジョン内の宝物目的で冒険者になった。今私が向かっているダンジョンは、最近になって発見されたもの。つまり、まだ探索が進んでおらず、未知のお宝が眠っている可能性が高い。無論、未知のダンジョンと言うことは、未知の魔物と遭遇する可能性も高い。しかし、そんなことを気にしていては、一攫千金など夢のまた夢だ。
私は腰にあるナイフに手をかけたまま、慎重にダンジョン内を進んでいく。やはり朝早くから来てよかった。ダンジョン内に同業者がいる気配はない。
私はダンジョンの中を、内部の地理を記憶しながら進んでいく。空間の瞬間記憶。それが私の特技だ。ダンジョンはその多くが似たような構造になっており、道に迷うことも多い。その点私は、この特技のおかげで、今まで道に迷ったことはほとんどない。
「...!」
私は足を止め、ナイフを構える。角を曲がったすぐそこから、何者かの気配を感じたからだ。静寂が通路にこだまする。あと1メートル、30センチ、足音は近づいて来る。もう少し...。
その時、通路の角から一本の白い手が姿を現した。私は瞬時に踏み込み、ナイフでその手を切り取る。そしてそのままの勢いで壁を蹴り、次は魔物の頭を切り取った。無駄のない洗練された動き。実に合理的だ。
カランと軽い音を立て、魔物が倒れる。骸骨が私の足元に転がってきた。予想通り、歩いてきていたのはスケルトンだったようだ。
スケルトン。比較的どのダンジョンでも見かける魔物だ。個体によって武器を持っていたり、素手だったりするが、この個体は特に何も持っていないようだ。
私は深呼吸をすると、再びダンジョン内の探索を始めた。悪くない探索ペースだ。ただ、ダンジョンに入ってから20分ほどたつというのに、まだ宝物を見つけれていない。もうそろそろ宝物がある部屋についてもいいころだが...。
さらに歩くこと数分、私は大きな扉がある部屋の前に立っていた。明らかに周りとは雰囲気の違う部屋。何か貴重なものがあるに違いない。私は扉を少しだけ開け、中の様子をうかがう。そこで私は、信じられない光景を目にした。
「なっ...」
危うく声が漏れそうになったのを、私は何とか我慢する。予想通り、部屋の中には宝箱が置かれていた。キラキラと光る装飾の施された箱。あの箱を持って帰るだけでも、それなりの金が手に入るだろう。だが、問題なのは、その宝箱の周りを、40対近くのスケルトンが警備していることだ。
普通、スケルトンは1から3体ほどで現れる。よって、ここまでスケルトンが密集しているのは異常としか言いようがなかった。流石の私も、この数のスケルトンを相手するのは厳しい。
(何が何だかわからないが...とにかくここは後回しだ)
私はスケルトンたちに気づかれないよう、静かに扉を閉じると、その場を後にした。
静かな通路の中、私が歩く音だけが反響している。あまりの静寂に、時折耳鳴りがするほど、ダンジョンの中は静かだった。このダンジョン、入った時から思っていたが、普通じゃない。大抵、ダンジョン内では10分に一回ほど、何かしらの魔物に接敵する。だが、私は、このダンジョンに入ってから、あのスケルトンとしか接敵していない。おかしい。嵐の前の静けさ...ととらえるべきだろうか。どちらにせよ、警戒しながら進んだ方が良いだろう。
しばらく歩き続けると、再び扉を発見した。ただし、先ほどの扉とは違い、こちらの扉は質素な作りで、大きさもさっきの物より一回り大きかった。間違いない。ここはボス部屋だ。
ダンジョンは、何層かに分かれた構造をしており、下の階層に行くほど、敵は強くなり、宝物はより豪華になっていく。では、どうやって下の階へ降りるのか。答えは、どこかの部屋に居るボスを倒せばいい。ボスは通常の魔物より強く、より大きい。しかし、スケルトンなどとは違い、魔物自体が宝物を落とすこともあるため、非常に旨味なのだ。
私は深呼吸をし、ナイフを構える。このダンジョンは異様だ。ボス討伐も普段よりさらに警戒した方が良い。私は少しづつ、扉を開け、中をのぞき込む。中には何もいないように見えた。だが、油断してはだめだ。どこかに隠れていて、私が部屋に入った瞬間襲ってくる可能性もある。
私は頭の中でカウントダウンを始める。3...2...1!私は思いっきり地面を蹴り、一気に部屋の奥まで飛び込む。壁を背にして、入ってきた方向に、ナイフを構える。これで隠れていたボスを捉えれる...。
「...え?」
私は思わず、気の抜けた声を上げてしまう。部屋の中に居るはずのボスが、そこにはいなかった。一体何がどうなっているのか。まさか、ここがボス部屋じゃなかったのか?
途方に暮れていると、突然目の前がまぶしい光に包まれた。
「しまった!」
やはりどこかにボスがいたのだ。おそらくこの光は目くらまし。まずい。このままでは何も見えないまま...。
しかし、待てど暮らせど、敵からの攻撃が来ることは無かった。私は、少しづつ目を開ける。まだ目がちかちかしているが、命に別状はないようだ。ふと下を見ると。そこには、先ほどまではなかったであろう文字が描かれていた。私は恐る恐るその文字を読む。
「これは...COMING SOON...?」
「あー!ほんとにいるじゃないですか!」
突然、少女の声が静かな部屋の中にこだました。私は反射的に声がした方を見る。そこには、地面のタイルを両手で持ち上げ、下から這い出てこようとする少女の姿があった。
「え...?」
「オウルさん!冒険者の方が来たら、ここまで来させないようにしてって言いましたよね!?」
「すみません。でも、ハイリ様がなかなか起きなかったので...」
少女が穴から完全に出てくると、それに続いて、フクロウのような魔物が飛んできた。私は思わずナイフを構える。女の子はともかく、あの鳥は魔物に違いない。しかも言葉をしゃべれるということは、かなり高位の...。
「ええと、この度は我々の不手際により、冒険者様の素晴らしい探索体験に水を差してしまったこと、深くお詫び申し上げます。あ、これは私の名刺です」
「え、あ、頂戴いたします...?」
少女はナイフを構える私に気にすることなく、なぜか謝罪と、名刺を渡してきた。渡された名刺を見るとそこには、「922番ダンジョン代表取締役クラリ・ハイリ」と書かれている。
「ダンジョン代表取締役...?」
「はい!私がこのダンジョンの運営をしています!私のことは気軽にハイリとお呼びください!」
少女はにこりと笑うと、私に握手を求めて来る。混乱した頭のまま、私も握手に答えた。
「実は...このダンジョン、まだ内部が不完全でして、この部屋にいるはずのボスもまだ採用できていないんですよ」
「ボスを...採用?」
ボスを含めた魔物たちは、一度倒されても、数時間たてば再び現れる。よって、ダンジョン内の魔物は自然発生するものだと、巷では考えられているのだが...。
「それで、お詫びと言っては何ですが...ダンジョン内の見学と言うか...このダンジョンの評価をしてほしいんです」
「評価?」
「ハイリ様!」
先ほどから飛び回っていたフクロウが、ハイリの肩におりてくる。
「ダンジョン内部を見せるなんてどういうおつもりですか?しかも、関係者でも何でもない、ただの冒険者に...」
「だからですよオウル。私は冒険者の方々に、最高の冒険者ライフをお届けしたいと考えているんです!だから、魔物だけじゃなく、ダンジョンを体験していただく冒険者の方にも、意見を伺うのが筋ではありませんか?」
「しかし...」
まだ何か言いたげなフクロウを差し置き、ハイリは私の手を掴む。
「と言うことで!一緒に来てほしいのです!ええと...」
「あ、私の名前は...エイユです」
「エイユさん!きれいなお名前ですね!」
ハイリはうんうんと頷くと、そのまま壁に手を当てる。すると、壁が左右に別れ、中から隠し通路が表れた。
「こんなところに隠し通路が...」
「さあ行きましょうエイユさん!いざダンジョンの裏側へ!」
唖然とする私を気にすることなく、ハイリはぐいぐいと私の手を引っ張っていく。フクロウも、ため息をつきながら、私たちの後をついていくのだった。
「ええと、さっきダンジョン運営とか言ってたけど、ダンジョンってどこも、あなたみたいな運営者がいるの?」
「基本的にはそうですね。運営者の仕事は、主にダンジョン構造を決めたり、働く魔物の皆さんを採用したり、宝物の中身を設置したりすることですね」
「なるほど...?」
私はハイリに手を引かれたまま、隠し通路を進んでいた。この通路は今まで私が歩いてきた通路とは違い、下にはカーペットが敷かれ、壁には一定間隔でポスターなどが貼られている。
ダンジョンが運営されている。にわかには信じがたい話だが、もし誰かが定期的に宝物や魔物を補充しているとしたら、しばらくたつと再び発生する金品にも説明がつく。
「ああそうだ、忘れないうちにこれを渡しておきますね」
ハイリはそう言うと、私に拳の大きさほどの金を渡してきた。ずっしりとした感覚が、私の手に伝わる。
「これは...」
「詫び石です。エイユさんにはご迷惑をおかけしましたので」
「詫び石...」
私は、渡された金を見つめる。この輝き、この重量感。おそらく本物だろう。これだけの金があれば、5か月ほどは、毎日ステーキを食べてもおつりが帰ってくる。
「そういえば...」
「なんでしょう?」
私は、このダンジョンを探索する中で、いくつかおかしな点があったことを思い出した。ハイリが本当に運営者なら、原因も分かるのではないか。
「さっき、私は宝物がある部屋を見つけたんだが...かなりの数のスケルトンがたむろしていて、近づけなかったんだ。なぜあの部屋には、あんなにスケルトンがいたんだ?」
「それは...」
ハイリは気まずそうに目をそらした。何かまずいことがあるのだろうか。それとも、あの宝箱にはとんでもないお宝が...。
「あれは、ハイリ様のシフトミスです」
「は?」
「こらオウル!」
後ろで羽ばたいていたフクロウが、私たちの横を颯爽と通り過ぎながら言う。
「普通は、巡回場所や巡回人数を指定するのですが...ハイリ様が、シフト管理を怠ったせいで、あの部屋だけ異常に、スケルトン密度が高くなってしまったのです」
「あはは。まだ、その辺の管理の仕方が私も分かってなくて...」
ハイリは頬を赤く染めながら、恥ずかしそうにしている。もしや、ハイリはダンジョン経営初心者なのではないか?それに、魔物の巡回コースは決まっていたのか。確かに冒険者内でそういう噂もあったが、実際に確かめるようなやつはいなかった。しかも、魔物はシフト制...。
「あ、ここが例の部屋ですね」
ハイリは立ち止ると、左の壁に手をかざした。壁が重厚な音を立てながら左右に開く。壁の先には、間違いなく、さっき私が見た部屋の光景が広がっていた。やけに装飾された宝箱。そして、無数のスケルトンたち。
「皆さんお疲れ様です!」
ハイリの声に反応し、スケルトンたちが一斉に振り返る。その異様な様子に、私は思わず一歩退いてしまった。
「こちらはダンジョンの見学に来られた方です!皆さんの働いているところを見学させてください!仕事の邪魔はしませんので!」
ハイリは両手を口元にあて、大きな声でスケルトンたちに告げる。別に私は、職場見学をしたいと言った覚えはないのだが...。スケルトンたちは私の姿を見ると、一斉に頭蓋骨を外し、腰を曲げた。
「皆さん礼儀正しいんですよ」
「もしかしてこれ、脱帽してるの?」
スケルトンたちはしばらくすると、頭蓋骨をもとの位置に戻し、また部屋の警備を始めた。40体近くのスケルトンが、その数に対して明らかに狭い部屋を巡回している。何度見ても慣れない光景だった。
「そういえば、あの宝箱の中には何が?」
「まだ何も入ってませんよ。中身は昨日頼んだので...届くのは明日でしょうか?私がプレミアム会員だったら、即日発送だったのですが...」
最後の方に言っていることは意味が分からなかったが、なるほど、あの宝箱には何も入っていなかったのか。だとしたら、このスケルトンたちは、このとても狭い空間で、中身の入っていない宝箱を一生懸命警備していることになる。そう思うと、急にスケルトンたちのことがかわいそうに思えてきた。
私が生まれて初めて魔物に同情していると、一匹(人?)のスケルトンが私たちのもとへ近づいてきた。
「どうかなさったんですか?」
スケルトンは、身振り手振りで、何かをハイリに伝えようとしているようだった。スケルトンが腕を動かすたび、カラカラと軽い音が鳴る。
「なるほど...まあ!それは大変ですね...」
私にはまったくわからないが、どうやらハイリはスケルトンが言おうとしていることが分かるようだ。しかも、ハイリの相槌を聞くに、事態は深刻らしい。
「何かあったのか?」
「ええ、それが、スケルトンの方が一人行方不明になってしまったようで...」
「なるほど。それは大変だな」
スケルトンが一人行方不明。私にはわからないが、彼ら(彼女ら?)にはそれぞれの違いが分かるのだろう。仕事仲間が一人消息不明、確かに心配に違いな...。
「...ちなみに、そのスケルトンを最後に見たのはいつだ?」
「ええと...うんうん。どうやら、手を洗いに行って、それ以降見ていないそうです。...どうしたんですかエイユさん?顔色が悪そうですが...」
「いや、大丈夫だ」
私は何とかその場を取り繕おうとする。行方不明になったスケルトン。私には心当たりがある。そう、この部屋に訪れる前、私は一体、スケルトンを倒しているのだ。だが、まだ人違い、いや骨違いの可能性がある。大体、スケルトンの違いなんて、私にはわからないのだから。
「ふんふん。どうやらその方とは、幼いころから一緒に過ごしてきた親友のようです。まあ!来月結婚!?へえ、もう奥さんは子供を身ごもっている...。おめでたいですね!...エイユさん、大丈夫ですか!?」
「ああ、少し貧血になっただけだ」
私は壁に寄りかかり、何とか呼吸を整えようとする。落ち着け。まだ私が倒したスケルトンが、探しているそれとは限らないのだ。落ち着け私...。
「あ、これがその方の写真ですか?ふーむ。エイユさん、この方に心当たりはありますか?ダンジョンの中で見たりだとか...」
私はハイリが差し出してきた写真を見る。そこには、父スケルトンと母スケルトンに囲まれ、幸せそうに微笑むスケルトンの姿が...
「...が殺した」
「え?」
私は膝から崩れ落ち、絞り出すような声で告白した。
「私が...そのスケルトンを殺しました...!」
「ええと、これがあばら骨だから...」
「これは一体どこの骨なんだ...?」
私がスケルトンを倒した場所、つまり殺害現場で、私たちは骨パズルをしていた。きれいに切ったつもりだったが、地面に倒れた衝撃で骨が散らばってしまったらしく、全体の完成は困難を極めた。フクロウも最初こそ手伝っていたが、途中で飽きてしまったらしく、今は道の傍らで毛繕いをしている。
「まあ、大体こんなもので大丈夫でしょう!では...はあっ!」
ハイリが、何とか人の形になったスケルトンに手をかざす。すると、先ほどまでただの骨だったものが、よろよろしながら立ち上がった。
「ふう...。スケルトさん、ご機嫌いかがですか?...ええそうです。あなたはこの方に倒されたんです」
ハイリは私の方に目線をやる。スケルトンも同じように私を見つめた。何を考えているか分からない、空洞の目。気づけば、私はその場で土下座していた。
「ちょ!エイユさん!?」
「すまない!知らなかったこととは言え、家族もいるあなたを...私は一度亡き者にしてしまった...。本当に、何と詫びればいいのか...」
はたして既に骨のスケルトンを、「亡き者にした」という言葉が正しいかどうかはさておき、私は謝罪せずにはいられなかった。スケルトンはしばらく土下座する私を見ていたが、しばらくすると、私の肩に手を置いた。スケルトンの顎がカラカラと動く。
「ええと、彼は、『互いが自分のすべきことをやっただけだ。嬢ちゃんが気にすることじゃない。事故みたいなもんだよ。お互い、ツキが無かったってやつだ』とおっしゃっています」
「兄さん...」
私はゆっくりと顔を上げる。なんの感情も読み取れない頭蓋骨。だが私は確かに、彼から、人を許せる心の広さを読み取ることができた。
「ええと、『兄さんはよせやい。俺の名前はリブだ。よろしくな』だそうです」
「兄さん...いや、リブ!」
私は強くリブの手を握る。
「ありがとうリブ!私もきっと、あなたみたいに他人に優しくできる人になって見せるよ...!」
骨と握手を交わすのは初めてだったが、不思議と悪い気分はしなかった。彼には人として、私が見習うべき姿勢がある。
「ああ、まだ私の名前を言ってなかったな。私の名前はエイユ!これからも末永くよろしく...」
べきっ
嫌な音が通路をこだました。私が何度も聞いたことがある音だ。なぜ何度も聞いたことがあるのか。答えは簡単だ。この音は...スケルトンを倒した時に出る音なのだから...。
「リブーーー!!」
彼をもう一度組み立てなおすのに、私たちはさらに40分もかけてしまった。
「と言うことで、一通り見終わりましたが、いかがでしたか?」
「うん、まあ、悪くはなかったよ。目標とするべき存在も見つけたし」
「それはよかったです!」
ハイリは花が咲いたような笑顔で、うれしそうにしている。
「ただ...シフトだとか、宝箱の位置だとかはどうにかした方が良いと思うが。あと、通路も長すぎて退屈な時がある。もっと角を増やして、冒険者にもっと緊張感を持たせるべきだ。」
「それは...頑張ります」
たしかに従業員は皆よくできた人間...魔物だ。だが、肝心の職場環境が悪ければ、その良さをすべて殺してしまう。でも、ハイリは従業員一人一人にしっかりと向き合う姿勢を見せていた。彼女なら...きっと上手くやっていけるだろう。
「じゃあ、私はもうそろそろ行くよ。安心してくれ、このことは誰にも言わない。まあ、言っても誰も信じてくれないと思うが...」
実はダンジョンは人によって経営されている。なんて言っても、誰も信じてくれないだろう。というか、ハイリは人なのか?さっきリブを直すとき、不思議な力を使っているように見えたが...。
「でも...エイユさんが人に言わない保証はないですよね?」
「え?」
私はハイリの方を振り返る。エイユは俯き、表情はよく見えないが、周りの空気が、先ほどよりも明らかに重くなっていた。
逃げろ。私の本能がそう告げていた。私は足に力を集中させ、一気に通路を駆け抜ける。しかし
「なっ!」
通路の先には大きな鳥が鎮座しており、道をふさいでいた。鬼のような顔をした鳥、今まで見たことのない魔物だ。
「ありがとうございますオウルさん」
「いえいえ、仕事ですから」
後ろからハイリが歩いて来る。その目に光は無く、ただ殺すという強い意志だけが読み取れた。敵わない、殺される。私はその場に力なくへたり込んだ。戦わずとも分かる圧倒的力量差。逆になぜ今まで気が付かなかったのか。
「ダンジョンのことを知られた以上。このまま易々と返すわけにはいきません。エイユさんにはそれ相応の”対応”をしなくては」
「やめろ...」
足も腕も動かない。私はこのまま死んで...。ハイリは私の肩に手を置くと、不敵な笑みを浮かべながら言った。
「エイユさんには、今日からここで働いてもらいます!」
「え?」
まさかの提案に、私の声は上ずった。働く?ダンジョンで?
「ああもちろんお給料は出ますよ!労働時間は毎日八時間で、土日祝は休み。三食もついてきますし...自分の部屋も...有給だって!」
「それだけでいいのか?」
「え?はい!」
ハイリはすっかり元の雰囲気に戻り、ずいぶんホワイトそうな勤務条件を提示してきた。何を考えているか分からないが、とにかく命が助かるのなら何でもいい。
「分かった。私はここで...ダンジョンで働く」
「...!では、改めてよろしくお願いします、エイユさん!」
私は何とか立ち上がると、出会った時と同じように、ハイリと固い握手を交わした。
こうして、私はダンジョンで働く運びになった。最初はどうなることかと思ったが、意外とどうにかなっているというのが現状だ。まあ、面倒事もかなりあったのだが、それは別の機会に語ることにしよう。
ただ、一つだけ不満があるとしたら...せっかく金を稼いでも、休みの日は疲れすぎて、外で買い物する元気がないことだろうか。
かなりえずきです。久しぶりにギャグ100%の作品を書いてみました。好評だったら続きを書こうと思います。




