3:彼女の妹と耳かきもぞもぞ…
愛花のいない土曜日。
暇である。
友達同士で二泊三日の遊園地女子会へと旅立ったのだ。
そんな俺はいつものように愛花の実家に呼ばれ、リビングのコタツでくつろいでいた。
さっきまでお父さんの将棋の相手をしていたものだから、頭を使いすぎた。今は無心でyoutubeのショート動画を無限再生してる。みかんが美味い。
お父さんは息子と将棋を指すのが夢だったという。俺をそこまで思ってくれているなんて、感無量だ。だから最初は負けっぱなしだった俺も、そこそこ将棋の勉強をして、なかなかにお父さんと渡り合える力をつけてきたと自負している。
「ただいまー」
そこに、美咲ちゃんが学校から帰ってきた。土曜だが、受験に向けた補習があったらしい。頑張るなあ。
彼女は俺の存在なんて当たり前のように、制服のままコタツに潜り込んできた。
「お兄ちゃん、今日もお姉ちゃん、旅行でいないんですよね?」
「だね。今頃は、パレードなんか観てるんじゃないか?」
そっかそっか。と美咲ちゃんはひとりごちた。
そして、まるでこの時を待ってましたと言わんばかりに、目をキラキラ輝かせた。
意を決して俺を見つめて……少し恥ずかしそうに、思いのたけを打ち明ける。
「じゃあ……お願いがあります」
「何?」
「耳かき……してほしいの」
俺は一瞬固まる。
美咲は上目遣いで続けた。
「最近、ちょっと右耳の奥に違和感があって、でも自分じゃ取れないの! だからおねがい、お兄ちゃん……?」
「いや、でも……流石にそれは、愛花に頼めば……」
「いやいやいや! お姉ちゃんの耳かき、すっごく痛いんだもん! もう耳削りって感じで、鼓膜破れるんじゃないかってくらい遠慮ないの! 怖くて、もう絶対やってもらいたくない……」
俺はぞっとした。
実は俺も、昔愛花に耳かきしてもらったことがある。
本当に容赦なくて、痛くて涙目になった記憶がある。
美咲ちゃんの言う通りだ。俺が間違っていた。
「わかる。愛花の耳かきは……拷問だ、ありゃ」
「でしょ!? だからお兄ちゃんにお願い……♡」
調子よく猫なで声で懇願されて、あまつさえ、美咲ちゃんは有無を言わさずに俺の膝に頭を乗せてしまったのだった。
長い黒髪が俺の太ももに広がり、シャンプーの甘い匂いが漂う。
五年前の愛花が甘えてきてる……そんな錯覚に陥るほど、美咲ちゃんは蠱惑的な魅力を放っていた。
「……お母さんに頼みなよ」
「えー。親に耳かき頼お願いするとか、恥ずかしいんですけど……」
姉の彼氏に頼む方が恥ずかしくない? とは思ったがもはや考えるのを止めた。
俺は仕方なく、付き合ってあげることにした。
白状しよう。下心だ。これは何の言い訳もできない。
五年前のバカップル時代を思い出して悦に浸りたいなんて、三大欲求の一角に抗えない俺の弱さだ。愛花ごめん……!
「じゃあ……動かないでね」
「うん……優しく……ね?」
俺は美咲ちゃんから耳掃除セットを受け取り、いざ、耳をかく。
先端が細く湾曲した竹の棒。を、美咲ちゃんの小さな耳にそっと入れる。
ゆっくり、優しく、耳の壁面をなぞるように。
「……あ……」
美咲ちゃんの体がピクンと震えた。
「どう? 痛くない?」
「ううん……全然……てか……」
じゅるり。と音がした。
俺の太ももに、それは生暖かく滲んできた。
「しゅごい……気持ちいい……」
美咲ちゃんの声が、甘く溶ける。よだれよだれ。垂れてますよ。
ともあれ、お眼鏡にかなって何よりだ。そうとわかれば容赦しない。同じように、優しく繊細に、美咲ちゃんの耳穴をほじくり倒す。
「ん……はぁ……お兄ちゃん、なにこれぇ……気持ちよしゅぎる……っ」
頰が赤く染まり、目はトロンと蕩けている。
恍惚とした表情で、時おり小さな吐息を漏らす。
「んっ……あ……そこ……もっと……」
俺は耳の入り口まで念入りに。美咲ちゃんの体が、耳をなぞる度にビクビクと反応するのが、面白い。俺の為すままにされるがままの女の子……征服感が刺激される……!
――その時、俺は気づいた。
美咲ちゃんの、ごろんと寝転がるコタツの中。
妙にもぞもぞ動いている。
手がコタツの中に潜り込んで、何かを……擦っているような動き。
時おり、体がビクンと跳ねて、甘い声が漏れる。
「……んっ……はぁ……」
……え?
まさか……え?……してる……!?
途端にぞっと血の気が引くような感覚を覚えた。だがこれは、この感覚は、美咲ちゃんに対する反応じゃない。
心臓が爆発しそうになる。
俺の理性が制御不能寸前となっていることに対する怖気だ……。
この子を滅茶苦茶にしたいと、本能で思ってしまった。それを実行してしまいそうになる衝動を、俺は今、必死に抑えているのだ……!
耳かきを続けながらも、視線を彼女のコタツの中に隠れた下半身に釘付けだ。
美咲ちゃんの指が……自分の下半身を、弄っている……。
罪悪感と興奮が一気に押し寄せる。
興奮が、徐々に盛り上がる。俺の興奮がピークに達しようとしている。
「美咲ちゃん……今……何してるの……?」
聞いてしまった。
美咲は目を閉じたまま、よだれを垂らしながら……答える。
「ん……なんか、お腹……キューって……少し痛くなったから……撫でて……ただけ……♡」
……は? 俺は耳かきの手を止めて、コタツを覗き込む。
美咲ちゃんの手は……確かに下腹部を優しく撫でているだけだった。よく見れば、ソレをするには、確かにいささか手の位置が浅い。
ただの腹痛マッサージだ。
俺は……。
俺は、最低だ……。
……ほどなくして、耳かきを終えた美咲ちゃんは体を起こして、うんと伸びをした。
「お兄ちゃん、ありがとー! もうスッキリ爽快です!」
彼女は満足げに立ち上がり、キッチンへおやつを取りに行く。
俺はコタツの中で、勘違いだと知ったにもかかわらず、未だに収まらない下半身を抱えて、ただ罪悪感に埋め尽くされた……。
殺してくれ……。
誰か俺を殺せ……!




