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自由への道


 コーヒーを飲み干し僕は死に場所を選ぼうと立ち上がる。セイラさんは「どうせ死ぬし片付けなくていいか!」と言いテントとリュックを放置した。そう言えば僕はどんな死に方をするかセイラさんに聞いてなかったことを思い出す。

 「あの、死に方って決めてます?」

 「私は決まってるよ!昌隆くんは?」

 「僕も決まってます。どこかで首を吊ろうと思ってます。これだけ木があれば僕の体重でも折れない木くらいはありそうですし」

 「奇遇ね!私も同じだよ!」

 今から首を吊ろうとしてる人達にしては明るく物騒な世間話。本当ならいい朝ねとか、今日はなにする~?とかそんな会話が似合う気持ちい朝なのに会話がだけがチグハグしていて少し面白かった。こんな朝の会話も悪くないな。

 「どこにするか目星は付いてるの?」

 「それがまだなんですよね~。散策しながら探そうかなって」

 「私も同じことを考えてたの!ちょっと散歩がてら見つけに行こ!」

 僕たちは遺書とロープを持って手を繋ぎ死に場所を探すという散歩にでかけた。見上げれば一面の紅葉のトンネル。まるで2人きりの世界だけの為に用意をされた様にとても綺麗で見事な紅葉だった。この景色と隣で歩くセイラさんを目に焼き付けよう。もう十分すぎる素敵な思い出だ。17年間支配されて小さい箱庭でしか過ごせなかった僕はこんなにも美しい景色があると感動した。胸がギュッと詰まる。感動ってこういう事なんだなと噛みしめる。昨日はあんな憂鬱で人目を気にするくらい臆病で山に入ったのに今じゃ心が軽やで恋をして感動を覚えて……。人間とは実に不思議な生物で物事1つで感情が揺れ動く……。ジェットコースターみたいだ。嫌な事、苦しい事、辛い事、痛い事がこんなことで変わるなんて誰が思うんだろうか。僕のクソ家族にもこの感動を覚えて貰いたいものだ。きっと理解はできないだろうなぁ。特に父は世界が自分中心に回ってると思い込んでるモラハラの下等生物だもんな。母は機嫌を伺う奴隷だけど少しばかりは同情はするよ。だって殴られるのが痛いのは僕も経験をしてるしね。

 そんな風に思いながら散歩をしてたら急にセイラさんが走り出して「みてみて!」と無邪気に笑う。そこには崖があって下を覗くと深い所に森が覆い茂っていた。



 「私ね、実はやってみたかった事があってさ!」

 「やってみたい事?」

「スカイダイビングなんだ!危険だからダメって両親に言われてさ!」

 崖の下を覗くセイラさんに僕はまさかと思った。

 「え、まって……」

 まって……ま……って……まって……!

 「空を羽ばたくってどんな気持ちなんだろうね!」

 そう言ってきつく結んだ手を解いた。

 空って……っ……違う……だろう……!まって、まって……お願いだから……!

 ぼくの感情も無視して言葉を続ける。無邪気に笑うセイラさんの姿から目が離せない……。嫌だ、嫌だ、嫌だ!

 お願いだからこれ以上何も言わないで!お願い……お願い…………まだセイラさんと一緒にいたいよ!ダメ、ダメ、まだダメだよ!

 「昌隆君と出会えて良かった!」

 違うだろ!?首を吊る話はどこにいったの……!そのための散歩だっただろ!嫌だ、独りにしないで…………!まだその時じゃないよ!嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ……い……や……だ……!

 「泣かないで……?私まで泣けてきちゃう……」

 そう言うとセイラさんは僕に口付けをした。

「これで最期ね。楽しかったよ!あっちで……待ってるね……」

 離れたくないと必死に手を伸ばした。まだ、もう少しだけ、1秒でもいい、セイラさん……先に逝かないで……独りにしないで……お願いだから……。

 

 「だめ!セイラさん!!!!」



 

 セイラさんは遺書を手に握って…………勢いよく走り、まるで天使が羽ばたいたかの様だった。

 セイラさんの最期は光に包まれて……とても美しかった……。




行き場のない伸ばした手は空気を掴んでどうすることもできないまま、ただ茫然と羽ばたいた影を見届ける事しか出来なかった。

 唇にはまだセイラさんの温もりが残っていて、脳裏には羽ばたいて行ったセイラさんの笑顔が強く焼き付く。僕だけを残して……ずるいよ。溢れる涙が雨の様に地面に落ちる。

 ぽつり、ぽつり、ぽつり……。

 声をあげ叫び続けてセイラさんを求めた。けどもう……。

 



 僕は深い悲しみを背負い急いで山も奥に入る。セイラさんの後を追うように、今なら死後にすぐ会えそうだったから。今までと違う悲しみに心が張り裂けそうに痛く、止まらない涙。息が吸えない。これが愛する人を亡くした痛みなんと……。



 走って、たくさん走って、吐きそうになりながらも走って……。

 


 必死になって走って行ったら思い切り額をぶつけた。よろめきながら両手で顔を抑える。指の隙間から赤い紅葉が落葉する。そして僕の泥だらけの革靴に乗っかった。上を見てるとそこには立派の木が立っていた。まるでセイラさんが導いてくれたかのような……そんな気分になった。

 ここを死に場所に決めようと思った僕は鞄からロープを取り出す。遺書は飛ばされないように石を乗せた。

 ロープを結び折れないか確認をする。


 


 そして、首のにロープを……。


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