8 恋…ではない
まずはこのゲーム――クラウンゲームについての基本的なルールを確認しよう。
そういって、久はホワイトボードに規約を書き出した。
ゲーム名【クラウンゲーム】
9の規約
1 称号の恩恵を受けた者は【ホルダー】としてゲームに絶対参加すること
2 ホルダーはある一定の条件を持つ者全てから完全公正なランダムで決定する
3 ホルダーにはそれぞれに特殊能力と高い身体能力を与える
4 ホルダー、または【宝具】によるゲームへの介入は全て正当行為と判断する
5 1人のホルダーが世界各地に存在する13の宝具を全て集めることによりゲームの終了とする
6 このゲームの勝者は【?】になることが可能となる
7 ゲームには原則として死亡以外に脱落を認めない(なお、宝具・ホルダーの特殊能力により脱退する場合、その限りではない)
8 ゲームとしての公平性、存続性を著しく脅かした場合、ペナルティを与える
9 以上を持って【クラウンゲーム】のルールの全てとする
久「では、この基本情報以外に綾子君が知っている情報はあるかね?」
まあ、私が知っていることなんて既に収集済みだろう。
綾子「まず、クラウンゲームは100年以上前から行われていること。
死んだら条件を満たした他の人に移ること。それから、ホルダーの人数が13を超えて存在することですね。いま、私が把握してる称号だけでも13以上あります」
久「ほう、【変態】【賭博師】【盗賊】【決闘者】【君主】【勇者】以外になにを知っているかな」
綾子「えーと【巫女】【聖女】【剣聖】【解析者】【不死】【巨人】【交換者】【幽霊】。これで14人。宝具の個数を超える」
指折りでいままで判明している称号を読み上げる。
久「すごいのう。その若さでそれだけの数を把握しとるとは」
どれも有名どころだが、と付け加えながら話を続ける。
久「勇から、変態になって3年と聞いてるが、一人でそれだけ分かっていれば優秀すぎるくらいじゃ。特に【幽霊】を知っているのはすさまじい」
綾子「ただの偶然ですよ」
謙遜しながらも、心の中では自身を褒め称える。そう、ネットで調べれば出てくる巫女と違い幽霊はかなり骨が折れた。
綾子「でも、久はもっと知ってるんでしょ。教えて~」
久「クハハハハ。そんな前かがみに並んでも教えてやるわ。称号の数は恐らく26。そのうち現在【エンド】が把握している称号は23。宝具に関しては13全ての種類を把握している」
湊「ちなみに、宝具に関しては勇殿の尽力があってのものですよ」
綾子「へー。私なんて6個しか知らないのに」
少し感心しながら勇を見る。とてもスコーンを乞食していたとは思えないほど彼は活躍しているらしい。
そういえば、エンドに所属していないのにどうしてトップの人に渡りをつけられるのか謎だったが――そうか恩を売っていたのか。
久「さて、今から我々が把握している称号とその特殊能力を教えよう。そこからもしエンドに入るというのなら宝具のほうも教えよう。ああ、言い忘れていたが私は【黄金の粘土】の在処も知っている。その辺も考慮して話を聞くといい」
すでに、変態の専用宝具も把握済みなのだろう。
綾子「ぜひ聞かせてもらおうじゃないですか」
数時間後、私はエンド所属のホルダーになった。
―――
帰りの電車にて
勇「ほんとによかったのか? エンドに入ることになって」
スコーン以外もねだっていたのか、マカロンをほおばりながら話を振ってくる。
綾子「問題ないよ。入るって言っても、呼び出しを受けるのはクラウンゲーム関連のことだけだし」
勇「でも、わざわざ【冥色の誓約書】にサインするか……」
【冥色の誓約書】とは、書き互いにサインした瞬間、書かれた内容を強制的に履行させる宝具だ。しかも、誓約書に制限などなく、署名さえすれば一方的に不利な内容でもまかり通る。
綾子「拒否権だって認められてるし。それよりも専用宝具の持ち主が分かったのが大きいね」
勇「まあ、頑張りなよ」
ウーロン茶を飲みながらサムズアップを送る勇に、私は首を傾げる。
綾子「え、勇は協力してくれないの?」
勇「ハァーー!!? 勘弁してくださいよ」
ホントに嫌そうな顔で私の誘いを断る。
まあ、今回のエンドとの接触は、勇にとって私との敵対関係を回避することだったのだろう。
あの後、【冥色の誓約書】をもう一度使い、双方危害を加えないことを約束させられた。つまり、もうこれ以上彼は私に付き合う理由がない。せいぜいたまに話すだけくらいだ。
勇「安心しなよ、綾子がクソビッチ殺人犯なんて口外しないから」
綾子「じゃあ、たまにでいいからさ」
勇のカミング発言をスルーし勧誘を続ける。
勇「仲間と一緒に行ってきなさい」
綾子「私たち友達でしょ?」
勇「いやただの他人だよ? アインもブロックしとこ」
勇はスマホをカコカコし始める。あっ、ホントにブロックされてる。
なんか、こんなに拒否されると逆に面白くなってきたな。
綾子「勇ってさ彼女いないでしょ」
勇「おいおい、俺で彼女にいないわけよいるよ」
綾子「日本語になってないよ」
パニクってるのかウーロン茶を口からだらしなく垂れ流す勇は実に面白い。
勇「俺が競馬で当てた金目的に来てくれる女の子ならいますけど」
悲しい人生だな。
綾子「あと、未成年が競馬とか……人のこと言えないでしょ」
勇「悪いが、俺はアニメが好きなんでね。ほかの男と寝まくる汚いヒロインはおよびじゃないのよ」
綾子「それ、間接的に私をディスってます?」
今の時代に勇が想像するような綺麗な女の子が何人いるかって話である。
綾子「まあ、この話はいいや。実際、無償で働かせようなんて思ってないから」
勇「……報酬は?」
綾子「まず一つ目に日常生活。もし、学校に別のホルダーが襲撃しても極力私一人で護衛する。
二つ目に、もし、私がいないときに襲われても私に連絡か近くに来てくれれば対処する。あと、もちろん私の私用についてきてくれたら情報でも金でも報酬をあげよう」
勇「そんなに、【賭博師】の強運が欲しいかよ」
綾子「まあ、もちろんそれもあるんだけど――」
私は少し間を置きしっかりと勇の目を見る。
綾子「単純に私は勇との会話が楽しい。もっと関わっていたいと思うし高校を卒業してお別れっていうのも悲しい」
そんな私のまっすぐな視線を受けて、勇も少し驚いた顔をする。
言うまでもないことかもしれないが、私は家族や友達の前では猫を被っている。誰にも本性を見せたことはないし、見せた奴はすでにこの世にいない。
だが、勇は私のサイコパスな部分を見ても否定しなかった。もちろん肯定してくれたわけでもないだろうが、そんな私を受け入れてくれた。
他人にどう思われようと気にしない性格ではあるのだが、やはり自分の存在を認めてくれる人は嬉しい。
勇(……多分、学校に襲撃してくるホルダーなら絶対綾子が恨みを買った奴だろうけど)
そんな言葉が喉まで出かかるが、勇は空気を読んで言わない。
勇「…まあいいよ。ボディガードはいて困ることはないし。でも、たまにな。頻度としては半年に一回とかだから。それなら、まあ在学中に限っては協力してもいい」
綾子「ありがとう!」
その日みせた綾子の笑顔は、出会ってから一番良い笑顔だった。




