5 ホルダーからの襲撃
本日の私は金髪にピアスのギャルである。年齢は16ほどの設定でいつもより胸を大きくすることで、油断を誘うのと肉の量を増やしている。
そのせいか、周りからよく見られているが、むしろ嬉しいまであるな。
しばらくして、後方からホルダーの気配がした。
勇「やあやあ美紀。一瞬誰か分かんなかったけど、ちゃんと来たみたいで安心したよ」
単色な白い服にバッグも何も持たずに勇はきた。
そんな彼の口を思い切り塞ぐ。
「今日の私は【鴨宮 綾子】って名前だから。気軽に呼ばないで」
勇「あっ、そうなの。じゃあいくか」
勇は何事もなかったように駅のホームにむかう。そして、車内に入り座席に座ったタイミングで私は声をかけた。
綾子「で、今日は誰に会うの? というか軽装すぎない、武器とか持たない主義?」
勇「んっとねー。今日会うのは【エンド】っていうチームのキャプテン。クラウンゲームを効率的に進めるためにチームを作ってる。いい奴らじゃないから綾子と気が合うと思うよ」
のり弁の海苔をわざわざ剥がして単体で食べながら勇は答える。
綾子「私はエンドに入るの?」
勇「お好きにどうぞ。あそこなら、色々情報が入ってくるからアリではある」
俺は入ってないけど、と付け加えながら黒豆をつまむ勇。さっきからマイペースすぎだね。
勇「……そういえば、聞いたことなかったけど綾子は何のためにクラウンゲームをやってんの?」
エナドリをがぶ飲みしながら勇は私に疑問を吹っ掛けてきた。
綾子「そうだねー……やっぱり生物としての限界を試したいからだね。私はサイコパスだけど、その中でも生物学が好き。だから、この【変態】の力を使って人類がどこまでやれるのか試してみたい。クラウンゲームはその手段」
今朝も、ザリガニを取ってる小学生に交じって殺した死骸を解剖したわけだが、そんなの目じゃないくらい人の体は美しい。
毎日自分の体を裂いて中身を見るのが趣味の私は、何年たってもその行為に飽きる気がしない。
綾子「逆に勇はどうなの? なにか目的があってクラウンゲームをしてる?」
勇「……そうだな。俺は……名前も居場所も知らない女の子ために今まで生きてきた」
綾子「へぇ~、面白そう! どんな話か聞かせてよ」
勇は困り顔を浮かべながら、小さく首を横に振る。
勇「わざわざ、他人に話すようなことじゃないんでね。そもそも、1度も会えないかもしれないし」
綾子「それってどういう――」
言いかけた時、電車が大きく揺れた。危うく対面に座る勇にぶつかりそうになるが、すんでのところで回避する。
勇「来たか。っていうかいい匂い。香水いくらくらいした?」
綾子「3万円くらいですよ。それよりなにか事故でもあったんですかね?」
目的のクロゴマ駅まではあと少しあるここでアクシデント。偶然ではないのかもしれない。
その時、前方の車両上からすごい勢いで迫ってくるホルダーの気配を感じた。
かと思えば、天井を破壊して長髪に覆面を被った女が出てくる。
綾子(大分ファンキーな登場だね)
ちょうど、私と勇の間に降り立ったその女は端的に言えば不気味だった。覆面を被っていることもそうだが、なぜか視線が鋭いと感じた。まるで私のことを全て見透かしているかのようだ。
綾子「喧嘩売りに来たなら、ぶっとばしてあげよう」
周りの乗客のことなど気にせずにナイフを取り出す。このあたりでようやく状況を把握したのだろう、乗客がパニックになりながら次々と逃げていく。すでに電車は停止しているので逃げるのは簡単だ。
??「なるほど。はじめまして【変態】君。それに、久しぶりだね【賭博師】ちゃん。会えてとても光栄です」
女の中でもかなり高い声でその女は口を開いた。随分と礼儀的な口調でお辞儀までしてきた。
私は、つい気を緩めてしまう。理由は彼女が私の称号を知っていたからだ。
綾子(多分【エンド】の人で、勇経由で私の称号を知ったのか。天井を突き破ってくるのはヤバいけど)
勇「アホ! 油断するな。そいつは【盗賊】の称号を持った敵だぞ」
あなたは【盗賊】のホルダーになりました。
称号取得条件
【盗賊】を倒すこと。
特殊能力
殺したホルダーの称号を奪うことができます。
専用宝具
無色のコンタクトレンズ
気づいた時には遅かった。盗賊が持っていたナイフが私の左胸に突き刺さる。
盗賊「駄目ですよ、気を緩めたら。クラウンゲームは0.1秒の油断が生死を分かつ。ギャンブラーちゃん教えてないんですか?」
勇「別に仲間じゃないしね。それに、死んでくれた方が社会の為になる人間だっている。それよりも、まさかこんな所で再開するとは思わなかったよ」
ポケットに手を突っ込み、十分な距離を取りながら勇は会話を進める。
盗賊「まあ、昔話に花を咲かせたい思春期男子の気持ちはわかるけど、私は忙しいのです。早くあなたの持ってる宝具【漆黒の布】をください。そうすれば殺しはしないですよ」
背筋をピンと伸ばし、どこぞのロードウェイを歩くかのように気品たっぷりで近づいてくる。
勇は動かなかった。ただ、じっくりと胸に穴があいた私を観察していた。
そして、決してポケットに収まらないであろう黒い物体――拳銃を取り出し発砲した。だが、当たらない。強化されたホルダーの動体視力に飛び道具など簡単に避けられてしまう。
盗賊「ホルダー同士の戦い銃は効果ないって教えなかったかい?」
綾子「私、教わってないですねー」
言いながら、私は盗賊に向かって胃酸を吹きかけるのだった。




