4 高校入学
私、この春高校生になります!
という笑顔を張り付け、新しい教室に入る。
先ほど入学式を終え、新しいクラスメイトと会話に花を咲かせる。変態の力で肌のケアや胸に力を入れているので先ほどから男子どもの視線が刺さる。
美紀(ま、私が3年間相手にしてきたおじ様たちに比べればかわいいものよ)
「はいはい。皆さんはしゃいじゃうのは分かりますが、全員席についてください」
担任の桜沢先生が手を叩き、全員を席に着かせる。
「はい、皆さんとても行動が早いですね。じゃあ、早速点呼を……あら、一人欠席かしら?」
桜沢先生の視線が私の隣に向けられる。確かにそこは空席だ。
美紀(私の隣を逃すなんて、もったいないねー)
と、少し尊大な考えをしていた―――その瞬間。
今まで感じたことのない感覚が私を襲った。
思わず、左前方を見る。そこには校門があった。
その近くに確実に何かがいる。根拠はないがそれは絶対にあると断言できた。
むこうも、私に気づいたのか近づいてくる気配が止まった。だが、少しして何事もなかったかのように歩き出す。
そして、その男と視線が合った。
校門を抜けたところで、私の視線に気づいたのかこちらをしっかりと見てきた。思わず目をそらす。だが、相手は何も気にしていないのか歩みを止めない。
美紀(この学校の制服を着てたけど……まさかここの生徒?)
先ほどは少しパニックになってしまったが、おそらく彼はホルダーだろう。本能的な部分でそれを察した。
そして、これはサイコパスの特殊能力なのか先ほどから彼の居場所がよくわかる。今靴を脱いでいることも、廊下を歩いていることも、この教室に向かってきていることも。
美紀(……ん? この教室に向かっている?)
「すいませんおくれましたー」
桜沢「ちょっと五十嵐君!? 初日から遅刻なんていい度胸ね~」
五十嵐「俺もそう思います。で、席は――よりによってそこか」
私を少し見てため息をつきながら【五十嵐 勇】は席に座る。
美紀「私も同じ感想だよ」
五十嵐「ほ~ん。おっぱいでかくね」
後ろにいた男子が吹き出した。
五十嵐「なあ、そう思わないか?」
挙句、彼は後ろの人に声をかけ始めた。
桜沢「はいはい! 五十嵐君はあとで反省文ね。さて、これから新入生のオリエンテーションがあるから、忘れないように――」
―――
波乱の入学式とオリエンテーションが終わった後、私は誰もいない学校の屋上にいた。しばらくして、壁を登って五十嵐 勇が現れる。
五十嵐「さて、こんな遅い時間に一人でいるってことは、俺に話があるってことでいいの?」
美紀「いや、君が反省文書いてるから無駄に待たされただけだよ」
いつでも武器を取り出せるように身構えながら、彼と十分な距離を取る。
五十嵐「はぁ……。待て待て、俺は戦いたくないんだ。お前もだろ」
美紀「いや? ライバルは少ない方がいいしね。あと、一回ホルダーを殺してみても面白いよ」
五十嵐「はは、初めて本気で殺すって言われたね。君、教室とキャラが全然違う」
美紀「ありがと、じゃあ、死んでくれる?」
五十嵐「おっかない笑顔だな。まあ、待ちなよ。せっかく同じ学校、同じクラスにホルダーがいるんだ。情報はあげる。そのかわり、休戦といこうぜ」
美紀「むり! て言いたいとこだけど……いいよ五十嵐。さすがに人殺しはリスクが高いからね」
既に経験済みのような発言で、勇は少し苦笑いをする。
―――
美紀「じゃあ、早速情報交換しようか。まずは五十嵐からどうぞ」
五十嵐「へいへい。俺は五十嵐 勇。
称号は【賭博師】。
能力は運がよくなる。
取得条件はなし。
専用宝具は【漆黒の布】」
美紀「え、よわ」
思わず声に出してしまう。
美紀「運がよくなるだけ? 嘘つくなら協力の意味ないんだけど」
そんなこと言うのは分かっていたのか、彼はポケットから新品のトランプを取り出す。
勇「このトランプを適当にシャッフルしてくれ」
私は何の変哲もないカードであることを確認し、開封する。そして、自分でもわからないくらいシャッフルした。
勇「じゃあ、予想してやろう。いま、トップにあるカードの数字は……キングだな」
私は半信半疑になりながらも一番上のカードを引く。
美紀 (キング……か)
美紀「13分の1ねー。でも、偶然の可能性もあるよね?」
勇「それを言ったらお終いだろ」
美紀「まあ、それはそんなんだけど……」
なんか納得いかない。
勇「じゃあ言っちゃうけど、多分お前、いくつか肉体改造してるでしょ。それに、平気で人殺す変態の匂いもする」
美紀(……私の本性にも気づいてる。あと偶然にも変態って……)
おもしろい。
美紀「いいよ勇。君は仲間の方が都合がいいね。私は【倉田 美紀】。
称号は【変態】。能力は体の変形。取得条件はサイコパスであること。専用宝具は黄金の粘土。秘密も分け合ったことだし、どう? このあと暇なら私の家に来ない? いいことしてあげるよ」
勇「いや……なんとなくだけど嫌な感じするから。遠慮しとく」
美紀「え……マジ?」
美紀(断られるなんて初めてなんだけど……)
勇「ああ。それと胸の中に凶器を隠してる人と一緒にいなくないよね」
カルシウムでコーティングしたナイフとピストルも看破される。
美紀「へぇすごいね。……まあ、別にいいよ。それよりも私、勇がホルダーだって感覚で分かったんだけどなんでか知ってる?」
勇「……? これまでホルダーにあったことないの?」
私はうなずく。情報は逐一入ってくるのだが、なんせ人数が少ないのだ。人が一生で出会うのは3万人。世界の総人口は75億人なのだ。会えるはずもない。
それこそ、驚異的な運でもなければ。
勇「ホルダーは自身を中心として半径50メートルの球の中に、別のホルダーが入ると分かるようになるんだよ。そうじゃないと、まずホルダー同士のエンカウントが発生しないからね」
美紀「じゃあ、勇はあったことあるの?」
勇「何人かね。いきなり戦闘吹っ掛けるヤバい人とか、情報くれる人もいたけど、結局丸く収まってるんでね。【賭博師】のおかげだ」
美紀「ふーん。うらやましい」
勇「とりあえず、今週の土曜にその一人に会う予定だから。その日暇?」
美紀「暇だね」
勇「じゃあ、キュウリ駅に8時集合で」
それだけ言って、勇は屋上から飛び降りてどこかへ行ってしまう。
私は明日のコーディネートを考えて体を弄り始めるのだった。




