14 聖女のご予定
重苦しい空気が車の中に流れていた。そんな車内で最初に口を開いたのは小島だった。
小島「分かっていると思うが、由美殿。君は今から我が国で抗体を作るために保護されるわけではない」
由美「……はい」
小島「君の嘘を見破る力と、その力を子へと継がせられるのは素晴らしい能力だ」
女の子さえ生まれれば、圧倒的な身体能力をもつ子供を確保し続けることができるのだ。国にとっては逃したくない存在だろう。
小島「心配しなくていい。ちゃんとあっちに行っても教育も受けさせるし、衣食住のも完備している。模範的にしていれば家族と会うこともできる」
由美「ほ、本当ですか!?」
小島「ただ、反抗的な態度をとれば、どうなるかわかるな?」
迫力ある大人の睨みに、由美は顔をうつ向かせる。わかればいいと、小島はフンっと息を吐く。
小島「まあ、安心しなさい。君が大学を卒業するまでは、無理やり子作りを強要されることはない。模範的な態度なら相手も選ばせられる。まあ、女の子が産まれるまで何度でも子供ガチャを回すことになるがな」
由美は、全身に鳥肌が立ち震えが止まらなくなった。目の前の軍人―――いや国家は私のことなどただの道具としか思っていない。
昨日まで、政明との結婚生活や名字が変わった時に自然に言えるように練習していたのが遠い昔のような感覚がしてくる。
小島「そして、これが君の相手で我がレリオス王国の王子だ。現在高校生になる」
胸ポケットから出された写真を私はまじまじと見る。政明ほどではないが、けっこういい顔をしていた。
小島「こいつは【菅原 拓斗】。いい顔だろう? なんせこいつの母親は先代の聖女だからな。なかなか子供ができない体質でようやく産まれた子供も男だった。
しかも高齢出産だったせいでそのまま他界。まったく、いくらあの女に金を費やしてきたと」
憎々しげに小島はつぶやく。その言葉に嘘はない。
小島「お前には、リスク分散のためにも最低で3人は産んでもらう」
由美「…………」
それだけ説明し終え、小島はタクト王子の写真をしまう。
小島「さて、あとは金だけか」
ぶつぶつと独り言を呟きながら、スマホを操作し始める。
すると、思い出したように小島は私を見た。
小島「そういえば貴様、ホルダーになって私以外のホルダーを感知したことはあるか?」
由美「えっと……近くに小島さんがいることが分かるこの力ですか?」
小島「そうだ、全てのホルダーに備わっている。ホルダーになって私以外に気配を感じたことはあるか?」
由美は首を思い切り振った。
由美「ありません」
小島「本当だろうな。嘘だった場合、ただではすまんぞ」
胸倉を掴みながら、小島は鋭い視線を投げる。
由美「ほ、本当です」
小島「……っ!」
舌打ちして、私を座席へと降ろす。
小島(ならば誰がどうやってホルダーだと見抜いた? あの村の大人の素性は全員調べたし、事前に車で当たりを捜索した。間違いなく、地上にホルダーはいなかった。まさか子供の中に……そんなわけないか)
とりあえず、報告書に書いて後で考えよう。そろそろ城に着くころだ。
城門をくぐりぬけ、中庭の駐車場で車を停める。
そこで、違和感に気づいた。城があわただしいのだ。
近くを走っていた議員を捕まる。
小島「おい、なにがあった?」
「こ、小島陸軍総司令殿!?」
議員は頭を下げる。
小島「前置きはいい。なにがあったのか話せ」
「た、端的に申しますと、実はタクト王子がもう子供を望めない体になってしまわれました」
小島「はぁ?」




