13 お別れ
小島「率直に言いましょう、娘さんは特別な抗体を持っています」
小島さんは、私の家に着いたと同時にそんなことを言っていた。
母「えっと……どういうことでしょうか?」
小島「はい。まずはこちらの検査結果をご覧ください。
由美さんは去年の夏、事故にあい病院に入院した経験がありますね。これはその時の血液検査のデータです。見てください、この数値。今流行っている光泣病にとてつもない耐性を示しているのです。
ですので、我が国の医療の発展のため、由美さんを我々に預けていただくことはできないでしょうか?」
なんかそれっぽいことをいっているが、私にはそれが全て嘘だと分かってしまった。もちろん、保護という言葉に嘘はなかったので痛いことはされないと思うけど、それでも怖い。
父「あの、具体的にどのくらいの期間でしょうか? 一週間ほどですか?」
小島「それはなんとも、まだまだ新種のウイルスでして。我々も手探り状態なのです」
由美「私、行きたくない!」
母「由美……」
言うしかないと思った。目の前の人の言ってることはよくわからないが、このままでは私は皆と離れ離れになることは分かった。
それに、この人はホルダーだ。クラウンゲームのルールはよく理解できてないが、この人は私の称号が欲しくてきたんだ。きっと、私の称号の取得条件のせいで。
小島「そうだね由美ちゃん。いきなりこんなこといわれて、戸惑うよね。
でもね、君が協力してくれたらたくさんの人が助かるんだ。例えばこの村の人とか。君が来てくれないなら村の人は死んじゃうかもしれないね」
優しい口調だが、私には冷や汗が止まらなかった。なぜなら、今の発言には嘘がなかったから。もし、私が協力してくれなかったら村の皆を殺すと、そう言ってるのだ。
つまりそれは、家族や政明が殺されてしまうこと。政明の姿を思い出したら、反射的に口が動いた。
父「すみませんが、由美はまだ中学生なんです。友達と離れてしまいますし、この件はなかったことに―――」
由美「行きます!」
お父さんが断りを入れる前に、私はすぐに声を上げた。精一杯の笑顔を作り、元気な風を装う。
由美「だって、国の皆を救えるんでしょ。だったら、私やりたい」
母「由美、あなたが頑張ることないのよ!? それに、学校はどうするの?」
小島「ご安心を。由美さんにはわが国の王都にある学校で勉強できます。もちろん、最大限の配慮はいたします。ただ、なにぶん新種のウイルスですので家族の付き添いは出来かねますが……」
母「それって、もう由美には会えないってことですか!!」
お母さんのここまで絶望した顔を私は初めて見た。
小島「ご安心ください。月に一度、面会の機会を設けますし、ウイルスのワクチンができればすぐに村に戻ってこれます」
父「そんなの、いつになるっていうんですか! それに、月に一度なんて少なすぎる!」
お母さんとお父さんは今にも殴りかかりそうなほど前のめりになりながら、小島に対して怒鳴る。
由美「私、大丈夫だよ!」
二人の腕を掴みながら、そんなことを言う。
母「駄目よ! あなたは私たちの子供なの! 勝手に行くなんてダメ!!」
悲痛な顔でお母さんは私を見る。
父「部屋に閉じ込めてでも、絶対に行かせないからな!」
小島「それはいけませんよ」
小島は指を鳴らす。その音を合図に何人もの兵士が家に入り込んできた。
小島「申し訳ありませんが、これは決定事項なのです」
銃を持った現役の兵隊に勝てるはずもなく、両親は簡単に組み伏せられる。
小島「では、王都に参りましょう」
ついて来いと言わんばかりに私を先導する。
後ろから、この世のものではないほどの両親の叫び声が聞こえた。だが、それも数分も歩けば聞こえなくなってしまう。
道すがら、騒ぎを聞きつけた村の皆が私と小島さんを見ていた。
裕太先輩なんて私に近づこうとして兵隊さんに止められている。学校の友達はなにが起こったのかわからずに、ただ見つめるだけだ。
私は無意識に政明を探してしまう。この称号を持って、初めて信頼できた友達。
いや、好きな人を。
毎日嘘ばかり吐く友達や家族とは違い、ありのままで私に接してくれて、クラウンゲームのことも信じてくれた男の子。だが、ついぞ見つけることはかなわず、私は車に乗り込むのだった。
称号
あなたは【聖女】のホルダーになりました。
称号取得条件
女性であること。
なお聖女が娘を生んだ場合その子への称号の譲渡を可能とする。
特殊能力
人の吐く嘘を感知することができます。
また、自信の女性としての魅力が上がります。
専用宝具
純白の杯




