10 裏切者と聖女
?「はー……、まともな情報は出てこないか」
そこは小さな村だった。総人口は1000人にも満たないほどの小さな集落で、最寄りの町までは車を使って1時間以上かかる。そのせいか村全体の結束力は高く、休みの日はよく1つの家で鍋を囲んでいる。
そんな村で生を受けたのが俺、【神村 政明】12歳児だ。
ちょうどこの前中学生になった。
?『クフ、ネットところにクラウンゲームのことなんて書いてあるわけがないでしょう』
政明「俺はなんでも人の言う通りには動かない性分なんでな」
そういいながら、無断で侵入した大槻家から脱出する。
?「あー、政明いたー!」
まともな情報がなく、まだ明るい土手でうなだれていると、元気な声が耳にとんできた。見れば、幼馴染の面倒な女が接近している。
政明「由美。どうしたの?」
由美「みんなでかくれんぼするから、政明探してたの!」
かわいらしい顔の頬を赤く染めながら、俺の体を公園の方へと引っ張って行こうとする。
政明「行くからその手を離せ」
由美「いいじゃん、手をつなぐくらい」
そういって、由美は俺を背中におぶると、中学生とは思えないほどの脚力で走り出した。
さすがにおんぶは想定外だよ。
政明「由美は力持ちで心強いな」
?『お前も、頑張ればいけるだろ』
政明「黙っとけ」
由美「……? 何か言った?」
脳内にいる奴に悪態をつきながら、なんでもないと頭を振る。
1分ほど背中で揺られていれば、みんながいる公園についた。年齢は12、13で全員中学生だ。
由美「お待たせ~」
「全然まってないぞー」
政明「そりゃよかった」
「お前がいうなよ。てか、ちゃっかり由美におんぶされてさ」
政明「なにか問題が?」
別に! とそっぽを向く裕太先輩。
?『中学生の恋ってのは可愛いねぇ』
政明「へいへい」
こんな生物に煽られてむかつくことこの上ない。しかし、こういう時は無視するのが一番なので適当に返事しておく。
どうやら鬼は裕太先輩に決まったようだ。10人がこの広場に隠れるので数分で全員見つけるだろう。
?『どこに隠れるつもりだ?』
政明「とりあえず、公園の遊具の中――」
由美「政明! 一緒に隠れよ!」
そういって、由美の怪力により俺は無理やりトイレの裏へと運ばれる。
由美「ドキドキするね」
政明「ソウダナ~」
まったく心にもないことをいいながら辺りを見渡す。
由美「ねえ、政明。もしかして私、迷惑だった?」
政明「ぜんぜん、一緒に隠れられてうれしすぎて涙が出そうだわ」
由美「えっ、じゃあ由美のこと好き?」
政明「そうだな~」
由美「じゃあ、将来お嫁さんにしてくれる?」
政明「そうだな~」
由美「やったー。約束ね!」
政明「そうだな~」
気のない返事ばかりしているのに、由美はなぜか指切りまで強要してくる。
?『やはり、中学生は子供だな』
政明「そうかい。なら黙ってろ」
由美「…………」
政明「…………」
少しの沈黙をおいて、由美が口を開いた。
由美「ねえ、政明。私、政明に相談したいことがあって。私ね、一か月くらい前から頭と体が変なの」
政明「へーどんな風に」
聞いておきながら、俺はまたかと心の中でため息をつく。
いつの時代でも、子供というのは自分の話をしたがるものだ。しかも、それをちゃんと聞いてくれる人間がいれば、同じ内容でもリピート再生してくる。
由美「えっとね、なんか変なゲームに参加させられてるの」
政明「ほーん」
由美「それでね、今もずっと頭の中にルールとか『ホルダー』っていうのがあって、それが私のことを【聖女】って言ってくるの」
政明「それってどんな特殊能力……いやどんなやつだ?」
由美「それがね。私ほかの人の嘘が分かるようになったの! でも、なぜか皆、毎日嘘言っててすごい嫌な気持ちになった」
とても辛そうな表情で自分の苦悩を吐露する由美。そんな彼女の肩に手を置いて、笑顔で語りかける。
政明「そっか。それは辛かったな」
由美「信じてくれるの?」
政明「もちろんさ!」(このやり取りも5回目だけど)
由美「ありがとう!!」
とびきりの笑顔で俺の胸の中に飛び込んでくる由美。その勢いでトイレの陰から体がでてしまう。
裕太「お前ら、何してんの?」
そこを運悪く裕太先輩が通りかかる。
由美「あー見つかっちゃった。でも楽しかったよ。ありがと政明」
裕太「そうですか」
由美「裕太君は楽しくないの?」
裕太「も、もちろん楽しいよ!」
由美の笑顔が少し曇った…ということはあれは嘘か。
?『変なことを気にしていますね。はっきり、『お前と仲良くしてるのが気に食わない』っていえばいいのに』
乙女心も男心も理解していない理外の生物がなんか言ってるが、俺はそれでもいいと思ってしまう。
政明「あー! そういえばこの後、畑の手伝いしろって言われてたんだったわ。皆と遊べないのはすーごく残念だが、まあ、二人で頑張れ」
由美は「え~。じゃあ、私も手伝うよ」
政明「えっ……ああいや。その気持ちは嬉しいんだが、親から俺にしか頼めない仕事って言われてる。これは俺1人でやらなきゃいけない仕事だ」
由美「そっか~。残念、じゃあ、また明日学校で!」
政明「ああ、またな」
ちょっと裕太先輩が面白くなさそうな顔をしているが、俺は気にせずに家路につく。
?『ククク、これで【聖女】との接触も20回目だな、【裏切者】君』
政明「はいはい。jは少し黙ってろ」
みなれた家につき、頼まれてもいない畑の仕事をしながら俺はjとの会話を進める。
俺は、脳内のクラウンゲームと【聖女】についての情報を吟味しながら肥料を運ぶ。
ゲーム名【クラウンゲーム】
9の規約
1 称号の恩恵を受けた者は【ホルダー】としてゲームに絶対参加すること
2 ホルダーはある一定の条件を持つ者全てから完全公正なランダムで決定する
3 ホルダーにはそれぞれに特殊能力と高い身体能力を与える
4 ホルダー、または【宝具】によるゲームへの介入は全て正当行為と判断する
5 1人のホルダーが世界各地に存在する13の宝具を全て集めることによりゲームの終了とする
6 このゲームの勝者は【?】になることが可能となる
7 ゲームには原則として死亡以外に脱落を認めない(なお、宝具・ホルダーの特殊能力により脱退する場合、その限りではない)
8 ゲームとしての公平性、存続性を著しく脅かした場合、ペナルティを与える
9 以上を持って【クラウンゲーム】のルールの全てとする
称号
あなたは【裏切者】のホルダーになりました。
称号取得条件
ジョーカーと会話を行うこと。
特殊能力
自身と直接触れているホルダーを他のホルダーの能力から守ります。また、脳内にジョーカーが住みつきます。
専用宝具
虹のルーレット
政明(で、由美の能力はこんな感じか)
称号
あなたは【聖女】のホルダーになりました。
称号取得条件
女性であること。
特殊能力
人の吐く嘘を感知することができます。また、自信の女性としての魅力が上がります。
専用宝具
純白の杯
j『すごいねえ。女性としての魅力が上がるなんて』
政明「別に。ただ、由美がそう言ってたからな。お前が否定しないなら、その通りなんだろ」
実際、一月前よりも周りの男子の視線を集めている気がする。
だが、そんなことを気にしている暇はない。
政明(とっとと、あのヤンデレ女を国に売らねぇとな)




