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81-間奏曲

 ティンクが居なくなって、1ヶ月が過ぎた。


 その間、何をしていたかと言うと、笑えるくらい、何もしていない。何も手に付かないのだ。


 最初は王都の屋敷にいたのだが、みんなが心配してくれて、御客の来訪が絶えなかった。ガッチャードさんなんか、毎日の様に、来てくれて、ただ、たわいない話をしては帰って行った。


 もちろん、俺のゴーレム達も心配して、何度もやって来た。新しい作物や果実が出来たと、報告に来てくれるんだが、どう見てもそれを理由に、俺の様子を見に来てくれているようだ。


 みんな、心配し過ぎだ。


 とは言え、俺がしっかりすれば良いだけなのだが、どうしてもやる気が出ないんだ。こんな調子だと、ティンクに怒られそうだ。化けて出てくるかもしれんしな。


 手のひらには、まだティンクの重みが残っていた。知らないうちに、手のひらを見てしまう。駄目だ、駄目だ。そこで、俺は秘密基地の作業場に来ている。物作りに集中すれば、少しは変化する様な気がする。




 で、1ヶ月だ。


 色んな物を作り過ぎてしまった。


 一番に考えたのは、どんな攻撃も、絶対に守ってくれる指輪だ。これが難しかった。どんな攻撃からも守りたいので、貯めている魔力が一度で無くなるのだ。二度目は通用しない。と言うか、守るべき力が、発生しない。


 ただ、これはすぐにバトルスーツを転送して装着すれば、解決する。だから、一度守れれば、それで問題ない。


 その代わり、皆に転送システムが必要になる。天空城のことを話すか、誤魔化すか、それが問題だったのだが。やめた。秘密にするのをやめて、皆に天空城のことを話す事にした。それで、解決するのだから。

 皆に秘密を作るのをやめたのだ。ティンクのような悲劇は起こしたくは無いから。


 二番目に考えたのは、もちろんバトルスーツだ。

 

 アリス用とマリア用を考えている。スノウ用は、現状のパワーアップで問題ないはずだ。


 他は悩んでいる。

 例えば、ジェームズ侯爵や白の女王の分だ。忽ちは不要だろうが、魔人が増えてくるようなら、考えないといけないかもしれない。

 

 そう言う理由で、今は考えない事にした。


 まず、アリス用だが、元が最強なのだから、俺のに近いものにしようと思う。俺は光、アリスは闇と言う違いはあるけれど、根本的な所は同じ作りにしたい。アリスとなら、合体技なんかも考えた方が良いかな、なんて事も考えている。


 マリア用は、実は2種類を用意する予定だ。タイガという相棒もいる事だから、そこまでの力は必要ないかと思っていたのだけれど、それでも、どうにもならなくなった時のことも考えておかないといけないかな。全滅だけは、避けたいからね。


 と言う訳で出来たのが、これだ。


 アリス用は、金色の鎧だ。背中には蜻蛉のような羽を付けた。勿論、収納可能だ。


 転送コードは、《山吹》である。アリスの転送コードにより、装着される。


 マリア用は、紅い鎧だ。靴に細工がしてあって、タイガの上に立っても落ちない仕掛けを仕込んでいる。タイガの上からの攻撃が可能になるはずだ。


 転送コードは、《灼熱》だ。マリアの声に反応する。


 そして、それでも駄目だと思ったら、これだ。

 

 薄らと紅い銀色の鎧だ。背中には勿論羽だ。仕様はアリスと同じだ。高くは飛べないが、滑空して、羽で切断できる。

 

 転送コードは、《烈火》だ。今の鎧に、バージョンアップ部品が転送、装着される。取り替えるタイムロスが惜しいので、こう言う形にした。

 これで、アリス級の鎧に変換されるのだ。


 三番目は、武器だが、これは今使っているもので問題ないだろうから。転送装着後の武器を考える事にした。


 アリスは、勿論、大剣だ。エクスカリバーと言う剣に似せて作製したので、《アリスカリバー》と命名した。アリスが魔素を流すと、剣の周囲を闇が纏付き、その剣で斬ると、闇が喰っていくのだ。斬るのではない。喰らうのだ。だから、どんな防具や魔法も防ぐことが出来ない。全てを喰らうのだか。


 だが、剣がお腹を満たすと、その力は消え、ただの大剣に戻ってしまう。それさえ注意すれば、限りなくなく無敵になる事が出来るはずだ。


 そう。まるで、生き物みたいな大剣なのである。


 マリアは、槍にした。単なる槍ではない。伸び縮みするのだ。如意棒の先に刃を付けた。これなら、タイガの背中からでも攻撃が可能になるはずだ。

 もちろん、魔力を通せば、魔法の槍に変化させることも出来る優れものだ。


 俺の武器も改造しておいた。


 レイガンと刀を合体させてみた。拳銃の上に、刀を取り付けたような形だ。これなら、レイガンと刀を入れ替える必要がない。ただし、刀の扱いが難しくなってしまったのが、誤算だ。仕方なく、刀を少し短くして、柄を長くしておいた。《レイガン・ソード》とでも呼べば良いかな。


 これで、レイガンは普段の時から、腰に取り付ける事にした。


 でも、刀を持たない訳では無い。右腕に刀の鞘を取り付けた。肘くらいまでの短いやつだが、マジックバックの仕組みを応用しているから、普通サイズの刀も取り出すとこが可能だ。しかも、通常は盾のように腕で攻撃を受け止めることが出来るようになった。


 その他には、妖精武装をバージョンアップさせて、エメラを筆頭に妖精達に持たせている。手首のバングルに収納させている。

 妖精達のは、俺達ほど強力にしていない。基本は守備力のアップなのだ。

 

 《妖精武装》の合図とともに、バングルから粒子を出して、全身を覆い、鎧に変換する。其々の個性に合わせたので、武装変換のタイプが少しずつ違うのだ。


 エメラは、無茶苦茶喜んでいた。基本は、戦って欲しくはないのだが。それでは済まない時が必ずやって来る。そのための保険みたいな物だ。


 回復薬の改良にも取り組んだ。大々的に、瓶に印を入れた。シバ犬の模様である。これからは、シバ犬印の回復薬として売っていく予定だ。我がエイト・フィフティーンと、ガッチャードさんの商会と、ギルドである。それ以外で売られているものは偽物である。これで、偽物が出難くなると思いたい。


 魔法ギルドや、医療ギルドの物は、今まで通りポーションにしてもらう予定だ。性能は低いが、安価で売られているので、こちらの売れ行きも問題ない。


 お互いを邪魔せず、仲良くやるのが一番だ。


 実は、その上の《超回復薬》を作ったのは秘密だ。死んでさえいなければ、元に戻る特殊な回復薬だ。こちらの世界では、ハイポーションやエリクサー辺りが該当するようだ。


 他にも、要領の大きいマジックバックを沢山作ったり、俺のマジックバックをバングルと一体化させて、荷物を減らす事にした。これで、バックを身体に付ける必要が無くなった。以前より、動きやすくなるはずだ。

 

 そんなこんなと、真面目に考えて、作製したから、結構な時間がかかってしまった。


 こうして見ると、1ヶ月間なんて、あっという間だった。


 そう言えば、青の国のアンデ王女は、無事に国に帰ったようだ。先日、スノウが伝えて来た。


 着いて行こうかと思ったらしいのだが、俺のことが気になって、辞めたらしい。今もちょくちょく顔を見せに来る。


 アルデ王女が気になるから、落ち着いたら訪問したいと言っていた。その時には、一緒に行って欲しいそうだ。


 蘇芳会も放っているので、様子を見る必要はあるだろうな。


 そんな事もあって、最近は、女王とお茶会を何度もしては、今後の事を話し合っているらしい。蘇芳会のこと、魔人のこと、俺の事、などなどらしい。俺の事は、話し合うなと言いたい。


 どうせ碌なことを話し合っている理由がないのだから。


 ちなみに、ルイーズ領の蘇芳会は取り潰しにあったらしい。伯爵がかなり怒っていたのだから、仕方ないだろう。回復薬は、ギルドの方で、きちんとした物を提供しているらしい。


 王都にある蘇芳会は、国から監査が入り、これまた潰れそうだと言う噂だ。噂の出所はスノウだから、間違いないようだ。そうなると、尚更、青の国のアルデのことが気になる。何ともなければ良いが。そう言えば、テレフォンからの連絡も来ない。こちらから、連絡してみてもいいかもしれないな。


 身体が鈍っているだろうから、ダンジョンにでも入って、鍛え直しが必要かもしれないな。アリスを誘ってみようかな。

 



 

 キリが悪く、少し短めです。

 次回に乞うご期待!

 

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