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8.ギルドで揉め事

 色んな人に聞いて、やっと辿り着いた所は、煉瓦造りの立派な建物だった。

 剣と盾のマークの下のある重い扉を押し開けた。重過ぎだろう。これが開けられないなら、能力が足りて無いから、来るなってことかな。それくらい重いのだ。


 ギルドの扉の向こう側には、初めて見る世界があった。まあ、何見ても、初めてではあるのだが。

 右には食堂、左には買取りや販売のための窓口があった。

 中央には役所のような受付があって、ここで色々と行うようだ。


 5箇所の受付の空いてる受付を狙って、声を掛けた。

 「すいません、登録をしてもらいたいのですが」

 ティンクには、ポケットに入ってもらっている。妖精の姿に、大騒ぎされても困るからな。まずは、俺とアリスで様子見だ。

 「初めまして、ここで受付をしています、マリナと言います。冒険者登録で合ってますか?」

 「ええ、その通りです」

 「それでは、この書類を書いてください。文字は、書けますか?代筆も可能ですが」

 「大丈夫です。俺もこの子も、文字は書けますから」

 「はい、それでは、あちらの机でお願いします。書かれましたら、こちらにお持ちください」


 名前と年齢、出身地を書く欄があるけど、とりあえず無視だな。使える魔法は無いから、空欄にしとこう。て、言うか、それだけしか記入欄はなかった。ほぼ名前だけじゃん。こんなので良いのか、ギルドさん。

 「アリス、書けたか。わからないこと無いか、大丈夫か」

 「レイはうるさいなの。これくらい、自分で書けるなのー」

 はいはい、わかりました。どうせ順番待ちだろうから、先に出しとくかな。

 「お姉さん、書けました」

 「あらあら、早いわねえ。うん、ちゃんと書けてるみたいだから、今度はこの水晶に触ってね。それが出来たら、ギルドのライセンスがすぐ出来るから、すこし待っててね」

 目の前の水晶玉に、右手を載せる。

 水晶が微妙に光ったような気がする。これって、大丈夫だよね。変な事、調べてないよね。心配だなあ。


 「はい、出来たわよ。これを持っておけば、入国料が免除になるから、無くさないようにね。後、お金の管理も出来るからね」

 銀行のカードシステムと同じようだ。この世界、結構なんでもありだな。

 「ありがとうございます」

 そこに、アリスもやって来た。

 「あたしも書けたのー」

 アリスでは、カウンターまで背が届かないので、持ち上げてやる。

 「仲のいい兄妹ね。貴方も、ここに手を置いてくれる?」

 「はーいなのー」

 俺と同じように、水晶の中心がほんのりと光った。

 「はい、出来たわよ。無くさないようにね」

 「ありがとうなのー」

 無くさないように、マジックバックに入れておく。

 「あのー、買取は、こちらでしてくれるのでしょうか?」

 「買取なら、あちらだけど、売れる物、何か持ってるの?」

 「はい、ギガントザウラーを少し持っているのですが」

 「えっ、何でそんな物、持ってるのかな?」

 受付のお姉さんが、前のめりになって聞いて来た。

 「アタシ達が、やっつけたのー」

 「うそ。本当に、貴方達が倒したのかな」

 どんどん前のめりになるお姉さん。

 「当たり前なのー。そんな冗談、言わないなのー」

 これは、ダメなやつかも。今日は、売るのやめた方がいいかも。でも、お金持ってないし、困ったなあ。

 「何処かで盗んだりしてないわよね?」

 ああ、それを言っちゃあ、お終いだよ。

 「アリス、またにしようや」

 「えーなのー」

 「今日は、やめときます。行くよ、アリス」

 「ちょ、ちょっと、待ちなさい」

 俺達は、サッサとギルドを後にした。

 登録は出来たから、問題無し。違う国に行ってみるのも、手だよね。タートル君で寝てもいいし、街から出ようかな。


 ついてない日は、何をしてもダメなようだ。

 悪い顔した人達に絡まれているおじさんと、遭遇してしまった。

 放って置くには、忍びない。


 「少し都合をつけてくれるだけで、いいんだよ。何かあれば、力になってやるし、悪い話じゃないだろう」

 人相の悪い人は、だいたい悪人なのか。悪い事をするから、人相が悪くなるのか、どちらなのだろうか。

 「そうだぞ。とても良い話だぞ」

 「出すもん、出しなよ」

 悪い顔が3人寄るから、さらに悪人になる。困ったものだ。

 「そう言われましても、持ち合わせもありませんし。申し訳ございません」

 おじさんは、丁寧に頭を下げた。

 「ふざけんなよ。人が下手に出てれば、好き勝手言いやがって。早く出すものだしやがれ」

 好き勝手言ってるのは、お前達だろうに。おじさん、大ピンチだなあ。ギルドで、少しムッとしてるし、怒りを解放しかな。

 「そんな顔で言われたら、誰も相手にしないなのー」

 あー、アリスに先を越されちゃったなあ。

 「誰が悪人顔じゃ、こりゃー」

 「あたしは、そこまで言ってないなのー」

 「子供だからって、容赦しないぞお」

 悪人1が、いきなり殴りかかって来た。

 悪人顔の割には、いいパンチだ。アリスには、効果ないけど。

 そんな遅いパンチじゃ、当たらないよ。

 右に左に、ぴょんぴょん跳ねて、アリスはかわしていく。

 悪人2と3も、仕掛けていくが、全く当たらない。

 「悪いおじさん、少し我慢するなのー」

 アリスは、相手のお腹に手を当てて、気を飛ばす。続けて、残りのふたりのも。一緒に、悪人達は飛んで行った。壁に当たって、そのまま倒れた。動きがないので、よく見ると3人とも、失神していた。

 「まだ、する?なのー」

 仁王立ちで、悪人に言う。

 失神してるから、聞こえてないぞ。

 仕方なく、俺はデコピンして、無理矢理目を覚まさせる。


 「あれー、誰かと勘違い、したかなー。間違えました、ごめんなさいー」

 それだけ言うと、男達は、逃げて行った。

 逃げるの早過ぎないか?


 「どうも、ありがとうございました」

 深くお辞儀して、感謝の言葉を言ってくれた。

 感謝される程の事はしてないのだが。

 「わたくし、この先で商いをしております、ガチャード・キャロルと申します。御礼をしたいので、一度、わたくしの商会にお越し願えませんか」

 「大した事してないので、御礼は不要ですよ。気をつけて、帰ってください」

 「いえいえ、ぜひお越しください。わたくしの顔を立てると思って、よろしくお願いいたします」

 アリスは、ガッチャードさんの前に顔を出して、喋る。

 「何か、美味しいもの、食べれるかなの」

 「はい、色んなものを用意させますので、お越しください」

 初めての街だし、ここは話に載りますか。

 「そこまで言われるのでしたら、お邪魔しましょう」


 辿り着いた先には、大きなお店があった。五階建てのマンションのような建物だ。馬車の駐車場らしき広場もあった。もちろん、何台も馬車が停まっている。

 建物は、辺りの景色から、完全に浮いて見えた。こんな大きな店の人が、一人でフラフラしちゃあ、ダメだろ。

 「どうぞ、どうぞ、お入りください。誰か、わたくしの部屋に、飲み物をお願い」

 建物の一階は、生活用品売場のようだ。食料品から、衣料品に至るまで、取り揃えているようだ。まるで、デパートだな。

 二階は、武器や防具を売っているようだ。ギルド向けだろうか。

 三階に会議室のような場所があった。社員用のレストランもあるらしい。よく出来た商会だ。

 僕たちが足を踏み入れたのは、五階にある店長室のようだ。豪華な置物が、所狭しと置いてある。


 「そちらの椅子に、お座りください」

 それは、ふかふかなソファだった。

 「いつもであれば、店の者に行かせるのですが、ちょうど手空きの者がいなかったものですから。急ぎの用事でしたので、自分で出掛けて、帰って来るところでした」

 それは、災難だったなあ。

 「この辺りは、治安が悪いのですか?」

 「そんなことはありません。子供がお使いに来れるような場所ですから。単に、運が悪かったということでしょう」

 「ともあれ、気をつけてください」

 ノックの後、扉が開いた。飲み物を持って来てくれたようだ。 

 「どうぞ、お飲みください。最近、流行っている飲み物でございます。コルヒーいう飲み物です。好きな人は、ハマるようです」

 見た目は、元の世界のコーヒーだ。こんな日常の記憶はあるのだが。

 「あー、これは美味い。こちらで売ってるのですか?」

 「はい、一階の方でご購入いただけます」

 「癖になりそうですね」

 これは、どう見ても、コーヒーだな。久しぶりに飲むなあ。

 「お売りいたしましょうか?」

 「残念。お金ないなのー」

 ガッチャードさんは、不思議そうな顔をしている。一銭もないなんて、不思議に違いない。

 「どういう事でございますか?」

 「あー、ギルドで買い取ってもらう予定だったのですが、泥棒して来たんだろうとか言われて。面倒くさくなって、出て来ちゃいました」

 「ちなみに、どういったものをお売りになろうとしていたのでしょうか?」

 「見てみますか?」

 上手くいけば、買ってくれそうである。

 「地下に倉庫がありますので、そこで見せてもらいましょうか?」

 「ああ、構いませんよ。でも、あまり期待しないでくださいね」

 俺たちは地下室に行くべく立ち上がった。


 「この辺りに出せば、よろしいですか?」

 「ええ、お願いします」

 マジックバックから、ギガントザウラーを取り出した。

 「これは、素晴らしい。私共に、売っていただけませんか?」

 「買ってもらえるのでしたら、喜んで」

 「それでは、これで、いかがでしょうか」

 がチャードさんから金貨十枚を渡された。相場はわからないけど。

 「申し訳ないのですが、金貨の価値を教えてもらえませんか?初めてなことばかりで、わからないのです」

 「えっ、本当ですか?お金には、銅貨、銀貨、金貨、そして白金貨の四種類があります。それぞれ百枚で、交換出来ますので、銅貨百枚で銀貨一枚の価値となります。金貨が三枚あれば、月の暮らしが可能かと」

 これで、百万円相当ってことかな。ギガントザウラーって、そんなに高価なんだ。ん、まだ何頭か、アイテムボックスに入っていたような。あらら、大金持ちじゃん。

 「もらい過ぎでは、ないですか?」

 「いえいえ、皮や骨、肉に至る迄売れますので、得にはなっても、損はしませんよ。他にもあれば、売って頂きたいくらいですよ」

 「ドラゴンの鱗とかでも、売れたりします?」

 がチャードさんの笑顔が凍りついてしまった。口が、カクカクしている。

 「本当にお持ちなのですか?」

 「ええ、持ってますよ」

 これは、枚数は言わない方がよさそうだ。腐るほどあるなんてこと、口が裂けても言わない方がいい絶対に。

 「使い道がないので、お売りしましょうか?」

 「ぜ、ぜひ、売ってください。競売に掛ければ、すごい値段で売れると思いますよ。手数料等で二割程いただきますが、八割はお客様の取り分となります」

 「これも何かの縁でしょうから、お任せいたします」

 ドラゴンの鱗を取り出して、手渡した。一メートルくらいの大きさの割に、軽いのだ。

 「えっ、このサイズは滅多に見ることの出来ないサイズですよ。いったい、これを何処で」

 「それは、企業秘密という事で」

 ガッチャードさんは、驚いて、汗が止まらないようだ。それ程のものなのか。これからは、注意しないと。

 「それは、そうですな。余計なこと聞いてしまい、申し訳ありません」

 「大丈夫ですよ、気にしていませんから」

 「ちょうど一月後に、オークションが御座いますので、そこに出品しようかと思います」

 「よろしくお願いします」

 ガッチャードさんは、とても嬉しそうだ。

 「今後も、何かあれば、売って戴けると嬉しいですな。ギガントザウラーなど、ギルドから買いますと、倍額くらいになりまして、殆ど儲けがございませんから」

 汗を拭きながら、ガッチャードさんは言った。

 そう言うことなら、こっちで売った方が得だな。変な詮索もされないしな。

 「何か手に入れば、またこちらに持って来たいと思います。欲しい物があれば、獲っても来ますよ」

 「嬉しいことを言ってくださいますね。今後とも、御贔屓にお願いします」

 嬉しそうで何よりです。

 そこに、番頭さんみたいな人がやって来た。

 「お食事が、ご用意出来ましたので、食堂の方にお越しください」

 それを聞いて、一番喜んだのは、言うまでも無く、アリスだった。


 「美味しかったなの」

 アリスは、ご満悦である。

 美味しいものも食べさせて貰ったり、懐中も暖かくなったので、遅くなってしまいました。早目に、今日の宿を探しますか。

 あー、お薦めの宿を聞いとけば良かったですね。


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