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6. 新しい世界での初めての出会い

 「やっと出られたのー」

 「やっと一息つけるなあ」

 俺たちは、何とか洞窟を抜けて、表の世界に出ることが出来た。

 洞窟を出た瞬間に、空間が揺らめいたと思ったら、洞窟が消えた。もう後戻り出来ない。

 「ティンク、ここが、表の世界で間違いない?」

 肩の上のティンクに問う。

 「はい、間違いないかと。四つの国の内の、白の国でしょうか?」

 「それ知ってるのなら、早く教えといてよ」

 「聞かれませんでしたので」

 困った妖精である。

 「ちなみに、先ほどまでの洞窟と言われていた所は、ダンジョンになります」

 「えー、それも、今言う?」

 本当に、困った妖精である。

 

 ダンジョンの出口だった所の後ろには、山がそびえている。

 反対側には、点々と森の塊が見える。その合間を縫うように、草原が伸びている。

 さて、何処か人の住んでいる所を目指したいのだけれど、どっちに行けば良いのやら。

 「ティンクは、どの方向に行けば良いか、道がわかるの?」

 「一度通った道を覚える機能はありますが、新規の道は無理です。通ったことのない道など、わかりようがありませんので」

 「はいはい、正論ですね」


 「アリスー、どっちに行く?」

 あれ、反応がない。何処に行ったのかな?

 「おーい、アリスー、何処だー」

 

 「ここなのー」

 森の中から、恐竜に乗って、現れた。

 「あれは、ギガントザウラーですね。体長10メートル、肉食魔獣です。でも、食べれますよ」

 「そう言われても、食欲湧かないなあ」

 元の世界で、ティラノサウルスって、呼ばれていたやつに近いかな。頭以外の色んなとこから、棘みたいなのが出てるけど。当たったら、痛そうだ。

 「何してんだよ、アリス」

 「さっき、そこで見つけたなのー。一緒に遊んでるなのー」

 違うな、それは。相手からは、敵認定されてると思うよ。

 「そちらの肉は、美味しいらしいですよ」

 知ってる情報を後から後から、小出ししてるみたいだ。段々、ティンクが狡賢くなっていくような気がする。この先、大丈夫だろうか。

 「おーい、そいつ、肉が美味しいらしいから。消滅させるなよー」

 「そんなことしないなのー」

 よく言うである。これまで、何度粉々にしたことか。食料にもならなかった事を思い出せ。

 アリスは、パチンコを取り出すと、ギガントザウラーの頭に、至近距離から弾を打ち込んだ。

 弾は、頭を突き抜けて、大地に突き刺さる。

 どれだけ威力があるんだよ。相手が可愛そうになる。

 

 ドガーン。


 倒れるギガントザウラーの巨体。

 かなりデカいから、大地が揺れる。

 跳躍して、大地に降り立つアリス。やることが派手だ。

 「あとで食べるから、取っといてなのー」

 自分もマジックバック持ってるだろう。自分で、仕舞えよ。

 

 俺はブランクカードを投げて、ギガントザウラーをゲットする。自分で解体しなくても、カードの中でしてくれるから、とても便利だ。肉や皮、牙などを分解することが可能だ。

 最初に自分で解体した時は、幾度となく、吐きそうになったからなあ。

 

 とりあえず前進するかな。

 何処かで、誰かと会ったりするでしょう。どうせ、目的地は無いのだから。

 ここまで、ドタバタだったから、ゆっくりしたいしなあ。

 「おーい、タートル、使うぞー」

 「わかったなのー」

 俺は、マジックバックからカプセルを出した。

 空き地に投げる。

 ログハウスの載っている大きな亀が出現した。これは、亀型の乗り物である。ログハウスに、住むことも出来る乗り物だ。通常速度は、それほど早くはないけれど、ゆっくり進むにはちょうど良い。

 後ろ側に、入口の扉がある。前側は、大きな窓だ。前方の様子を見るためのものだ。中の運転室から外を見ることが出来る。

 入口の扉を開けると、リビングルームだ。空間を拡張しているので、外からの見た目以上に、室内は広い。中央にテーブルと、その周りにソファが並んでいる。十人くらいは入っても大丈夫な作りだ。

 おっと、忘れてはいけない。入口の左右には、トイレとお風呂がちゃんとある。この世界は、すぐに汚れるから、お風呂は必需品だ。

 寝室は、二階にふた部屋ある。僕とアリスの部屋だ。もちろん、別々だ。だから、ふた部屋用意した。


 「運転は、どうする?」

 「あたし、したいなのー」

 「それなら頼むよ。俺は疲れたから、少し寝るよ。何かあれば、必ず起こせよ」

 「任せてなのー」

 「一応、ティンクも待機させとくから、よろしくな。何度も言うけど、何かあれば、すぐ起こしていいからね」

 「お任せください」

 俺はそれだけ言うと、二階に上がった。


 「とりあえず、前進なのー」

 タートル型馬車は、ゆっくりと歩みを進めた。一歩一歩進んで行く。まるで、亀のように。

 「タートル号は、もう少し、頑張るのー」

 「アリス様、これはこういう作りですので、諦めてください」

 「もっとスピードが出るように、レイは改造するなのー」

 「レイ様の初号機ですから、今はどうもなりません。これから、試行錯誤するそうですよ」

 そうこうしていると、前から、さっきよりひと回り小さいギガントザウラーが、襲って来た。彼らにしてみれば、タートル号はエサにしか見えないのかもしれない。見た目は、まんま亀だ。

 「タートル号、ビーム発射なのー」

 「そういうのは、付いておりません」

 「レイに武器を付けさせるなのー」

 「部屋を拡張し過ぎて、そういったものは付けられないそうです。その代わり、防御シールドは常時発動しているので、余程の相手でない限り、キズひとつ付かないそうです」

 「それなら、このまま体当たりするのー」

 

 ドガーン。


 ギガントザウラーは跳ね飛ばされて、前方の木をなぎ倒して、気絶しているようだ。大口を開けて、お腹をだして、大の字に転がっていた。

 「これ、どうするなのー」

 「放っておきましょう。レイ様がいらっしゃらない以上、いちいち処理出来ません。それとも、アリス様が確保するために行かれますか?」

 「面倒くさいなのー。前進するのー」

 「それが良いと思われますので、このまま参りましょう」


 それから、何回か、同じことを繰り返しながら、前に進んだ。

 何とか森を抜けて、道らしい場所に辿り着いた。

 「やっと着いたのー。でも、どっちに行くなのー」

 「それでは、レイ様を起こして来ましょうか。少しは眠れたはずですし」

 ティンクは、二階にレイを呼びに行った。

 ほどなく、ティンクを肩に載せて、レイが下りて来た。

 

 「どっちに行くか、悩んでるんだって?」

 「そうなのー」

 「ティンクは、どっちだと思う?」

 「私は、右かと・・・」 

 「それなら、右だね。まあ、どっちでもいいんだけどね」

 「右に曲がって行くのー」

 タートル号は、右に進路を取った。相変わらず、一歩一歩歩んでいく。

 「お腹空いたし、ティンク、何か作ってよ」

 「わかりました。サンドイッチでも、作ることにいたします」

 「よろしくなのー」


 魔獣の肉を使ったサンドイッチだが、結構いけてるようだ。

 お腹も膨れた頃、前方右手から、3台の馬車の一団と、それを追っているのか、5頭のギガントザウラーがほぼ同時に、森から飛び出して来た。

 倒れる木々。折れた枝が、宙を舞う。


 跳ねては走る馬車。外装が重装備のせいか、速度はあまり出ないようだ。防御力は強いようだが、そのせいで、速度が出せないようだと、本末転倒だな。防御する間があるなら、逃げた方がいい。攻撃力があれば、話は変わるが、まあ、無いから、逃げているのだろう。

 「どうする?助けちゃう?」

 そのまま、知らない振りをしても良いのだが、折角こちらの人間と接触出来るチャンスをみすみす失うのも、勿体無いかな。

 「仕方ない、助けちゃうかなあ」

 「あたしに、任せるのー」

 それだけ言うと、アリスは飛び出して行った。

 「ティンク、後を頼むよ。とりあえず、俺も出るから」

 「わかりました、レイ様」

 後はティンクに任せておけば、良いだろう。運転装置など無いのだから。ただ、タートル君に伝えるだけで、運転できるのだ。簡単だ。

 続いて、外に飛び出る。


 逃げ続ける馬車の上に飛び乗る。もちろん、一番豪華そうな馬車だ。

 覗き込んで、窓を叩く。

 中の人が、こちらを向いた。

 「手を出すけど、良いかな」

 聞こえたのだろうか。中の人が、うなづいている。

 これで、まずは安心かな。わざと逃げてるかもしれないと思っていたけれど、さすがにそれは無いようだ。


 「アリス、もう遠慮はいらないよ。話は通して来たから」

 「了解なのー」

 背負ったままの大剣を抜いた。

 跳躍。

 アリスは、いつも真っ向勝負だ。

 右から左に、大剣を振り回す。その度に、ギガントザウラーが倒れていく。


 残るは、ひと際大きいギガントザウラー、一体となった。

 咆哮が、凄まじい。耳が、やられそうだ。

 「おまえは、うるさいなのー」

 アリスは、大剣を背負いながら、突撃していく。

 ギガントは、前脚の爪で、大剣に対抗する。魔獣のくせに、うまく捌いていく。

 「うーん、こいつ、強いなのー」 

 とんぼ返りをして、アリスは一度距離を取った。

 ギガントは、尻尾を振り回して、アリスとの距離をゼロにする。

 アリスは、さらに跳躍して、尻尾をかわす。

 「手伝おうかー?」

 「いらないなのー」

 まだ全然余裕そうだし、大丈夫だろう。遊んでる感じだもんなあ。

  

 「少しだけ、実力を発揮するなのー」 

 アリスは、自分の影に沈んでいった。

 ギガントは、逃がさぬとばかりに、後ろ脚で踏みつける。

 影に沈むと同時に、巨大な足が踏みつけた。地響きがした。

 ギガントが、少しにやりとしたように見える。足を戻して、吠える。

 が、そこには何もなかった。

 辺りを見回すが、何もない。誰もいない。

 刹那、ギガントの影から、大剣が飛び出して来た。肉の塊のような腹に、突き刺さる。

 足元を見るギガントだが、腹に刺さった大剣しか見えない。しかも、大剣はもう一度影に戻った。自分の血が噴き出しているだけだった。

 恐怖の咆哮を上げる。

 同時に、首筋の影から、再び大剣を持ったアリスが現れた。縦回転して、首を断ち切る。転げる頭。驚いて、目を剥いているようだが、理解できないうちに、目を閉じた。

 「終わったなのー」

 俺は、ブランクカードを投げて、それぞれをカード化していく。

 こいつら、本当に食べれるのだろうか?それが気になる。


 何事もなかったように静まり返った平原に、逃げていた馬車が戻って来た。

 俺たちの前で止まると、中から、護衛らしい人に挟まれて、ボスみたいな人が下りて来た。鉄の鎧で隠れているが、かなり体格の良い人だ。マッチョの部類だろうか。眼光も鋭い。こちらが、逃げ出したくなる。魔獣より怖い。


 「ありがとう。ギガントザウラーが五体も出て来た時は、生きた心地がしなかったぞ。助かったよ」

 手を伸ばして来た。俺は手を握り返す。強い握手だ。力を抜いて欲しいな。

 「通りかかったら、凄い音が聞こえたものですから。つい、手を出してしまいました。申し訳ありませんでした」

 「いやいや、助かったよ。我々は、白の王国の者だ。他の領の視察を終えて、白の城へ戻る所だ。本当に助かったよ。途中、至る所に魔獣の死骸が転がっていて、どうやら、それを食べるために、集まって来ていたようだ。死骸を放っておくわけにもいかず、魔法で焼き尽くしていたのが、仇になったようだ」

 「それは大変でしたね」

 ティンクが手招きしている。

 「どうした?ティンク」

 耳元まで飛んでくると、爆弾発言をした。

 「それって、アリス様が原因かと。実は・・・」


 「それ、黙っとこうな。絶対、ヤバいやつだ」

 俺は、正面を向き直した。

 「どなたか、お怪我とかありませんか?」

 ここは、目一杯下手に出よう。

 「大丈夫です。襲われる前に、倒していただきましたので」

 それは、良かった。何も無いのが一番だ。

 「何か、御礼をしたいのですが、我らが白の城にお立ち寄り願えませんか?」

 逆に下手に出られた。

 「お気になさらず。当たり前のことをしただけですから」

 「そういうわけにはまいりません。何もしなかったと、女王の耳に入ったら、何を言われるか、わかりませんから。ぜひ、よろしくお願いします」

 「道もわかりませんし、お言葉に甘えて、町まで、よろしくお願いいたします」

 「それでは、後について来てください」

 先行する2台と、後方の1台の間を俺たちは続いた。後方を守ってくれるそうだが、逃がさないためのように見える。確保されたかな。


 「もう少し早く出来ませんか?何なら、こちらの馬車に乗ってもらっても構わないのですが」

 まあ、そう来るよね。こっちは、亀の歩みだもんね。仕方ないなあ、取って置きを見せますか。

 「早ければ、良いのですか?」

 「はい、出来るだけ、早く、お願いします。また、魔獣の群れが出て来るかもしれませんので」

 ああ、あれは、こっちのせいだから、もう大丈夫だと思うのだが。

 「それでは、速度を上げますね。遅れないように」

 僕は、コンソールの左端のカバーを上げて、そこにあるスイッチを押した。

 タートルの真下から、大量のエアーを噴き出し始めた。地上50センチくらいまで、浮かび上がる。

 周りの馬車は驚いて、左右に散った。

 俺はハンドルを引く。

 タートルの後ろ脚部分から、エアーが噴き出した。そうなると、タートルは前方に加速する。馬車を置いてけ堀にして。

 「待ってください。極端過ぎます」

 馬車は、急加速した。もちろん、追い付けるわけもなく。


 


 

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