表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/21

5.アリスの実力

 「アリス、行くなのー」

 アリスは、背負っている剣を抜くと、石像に突進していった。速い。いきなりのトップスピードだ。

 石像は、三メートルくらいあるだろうか。横幅も、それなりにある。大岩の塊に、手足が生えたような見た目だ。

 立ち上がると、腕を大きく広げる。巨大な身体に比べて、異常に腕が長かった。五メートルを越えるだろうか。手のひらも大きいせいか、握ったこぶしは、巨大なハンマーのようだ。

 石像は、アリスを捕まえようと腕を伸ばす。

 腕が届くか届かないかの距離で、アリスは飛び上がった。

 剣を振りかぶって、勢いそのままに大上段から斬り付ける。


 「直滑降地獄落としなのー」

 何ちゅう命名だ。絶対適当だろう。

 石像は、腕をクロスして、防ごうとする。

 振り下ろす剣。

 刹那、闇が残像を残す。

 腕に闇が走る。腕が切断され、時間差でずれる。

 斬り飛ばされて、真っ二つとなる石像。轟音と共に、左右に倒れる。

 返す剣で、もう一閃。

 あっという間に、二体とも倒れた。

 相変わらずの一撃だな。

 もう、俺より強いのではないだろうか。

 ちなみに、アリスも勿論女神様の加護を持っている。


 【女神の矛盾】

 どんな防御をも打ち破る鉾の力と、どんな攻撃も防御する盾の力。ただし、一日に一度、どちらか、一方の力しか使用出来ない。


 この力を使わなくても充分強いのだが。そのため、滅多に使うことはない。必殺技である。

 アリスは、他にも、スリングショットを使う。Y字型の棹を持って、ゴム紐を張って弾を飛ばすあれだ。玩具で言うところのパチンコだ。色んな弾を使い分けるので、結構な脅威になる。


 俺は、ブランクカードを取り出して、倒れた石像に投げ付ける。

 石像だったものが、光になって、カードに取り込まれる。空白だったカードに石像の絵が浮かんで来る。同時に、カードが僕の手元に戻って来た。

 これは、僕のスキルのひとつだ。


 【女神のカード】

 物体をカード化する能力。カード同士の合成も可能。ただし、何になるかはレベル次第。

 カード化することで、腐ることはない。どんなものでもカード化可能。カード化中は、治癒力が働く。

 取出し時、肉や部品に仕分けすることも可能。


 こんな力だ。マジックバックがあるから、あまり役立つとは言えないけれど、カード合成は、思いのほか役に立っている。ファンタジーでは有名な霊薬ポーション同士を合成すると、ひとつ上位のハイポーションになるなど、ランクをあげることが出来るからだ。

 まあ、ふたつ以上ないとあまり役に立たないけれど。

 他にも色々とあるのだが、その都度説明しよう。


 「あんまり、強くないのー。こう胸躍る戦いがしたいなのー」

 相変わらすの戦闘狂である。

 「大丈夫だよ。この先に大冒険が待ってるよ」

 俺は戦わないで済むものなら、スルーしたい派なんだけどな。

 「本当に、ここに、入口があるのー?」

 「長老が言うには、ね」

 この空間の何処かに、外の世界に行ける入口があるらしいのだ。ドラゴン達は興味ないから、行ったことはないみたい。

 さっきの門番達もいるから、面倒くさいんだと。倒しても、すぐに復活するらしい。

 「とりあえず、ぶらぶらと探すしかないでしょ」

 

 洞窟の中だと言うのに、空気が澄んでいる。ここも、一種のダンジョンになるのだろうか。

 不思議な空間だ。


 「レイー、あっちに何かあるのー」

 森の合間に、小高い丘が見える。何だろう。

 周囲に気を配りながら、僕たちは前に進んだ。

 「何だか、ブンブン飛んでるのー」

 どうやら、大きな蜂のようだ。まるで、猫が飛んでいるようだ。大き過ぎるだろー。

 あの小高い丘に見えたのは、どうやら巨大な巣だった。沢山の蜂が出たり入ったりを繰り返している。

 そんな巣が、至る所にあった。見つかったら、面倒くさいやつですね。

 「アリス、後退するよー」

 「えー、パチンコ弾飛ばしたいのー」

 「1対1ならともかく、あれは多過ぎるよ。無理とは言わないけれど、面倒くさいから、パスしたい」

 「仕方ないのー」

 僕たちはゆっくりと後退した。音をたてないように、ゆっくりと。


 ボキッ。


 アリスが枝を踏んでしまった。テレビや映画でよくあるやつだ。そして、当たり前のように見つかるのだ。

 結構離れたから、大丈夫のような気もするが。

 

 「無理だよなー」

 僕たちは、巨大な蜂に追いかけられることとなった。

 「翼竜ゴーレム、出すのー。あたしは、隠れとくのー」

 「それ、ずるい奴だ」

 「気にしたら、負けなのー。レイも気を付けてなのー」

 それだけ言うと、アリスは、僕の影に沈んでいった。

 文句を言ってても、どうにもならなので、アイテムボックスから翼竜ゴーレムを出そうとして思い出した。壊れているんだ。

 いきなりの大ピンチだ。

 木々の間を抜けるように、走る。

 蜂達は、群れになって、追いかけて来る。群れが、巨大な矢のようだ。群れになることで、速度が上がったりするのだろうか、少しずつ詰められているような気がする。追いつかれるのは、時間の問題か。

 「不味いかも」

 何処かに、逃げ込む所はないかな。逃げながら、周りを見る。

 同じような所ばかりだ。隠れる所も無さそうだけど。困った。

 

 すぐ後ろまで来ている。本当に、ヤバい。

 ん?何かが目に入ったような。

 大きくUターンする。

 見つけた。

 小さいけど、洞窟だ。何処まで行けるかわからない。賭けだな。

 意を決して、洞窟に飛び込む。


 ん?着いてこない。何でだ。

 とっ、足下の床が抜けた。グニャリと床が柔らかくなって、身体が床に沈んで、飲み込まれる。

 そして、筒状の中を滑り落ちて行く。辺り一面ツルツルして、掴まるところがない。

 どんどん落ちて行く。ウオータースライダーみたいだ。

 何処まで行くんだ。

 何処に辿り着くんだ。

 グルグル、スクリューのように、滑って行く。

 「でも、これ、甘いな。まさか、蜂の巣かな」


 滑っていく先に壁が現れた。正六角形の壁だ。あー、やはり、蜂の巣なんだ。

 壁に突っ込む。ねとねとのゼリーだ。呼吸出来なくなりそうなので、回りの部分を少しだけアイテムボックスに収納した。同時に、穴を抜けた。

 そこは、広い空洞だった。中央に、空洞の半分を占めるくらいの蜂の巣があった。巣の割に、蜂達は小さめだ。それでも、小指くらいのサイズだ。壁にいくつもある穴を出たり入ったりしている。あそこを通って、花の蜜を取りに行くのだろうか。それとも、何らかのエサだろうか。

 ただ、俺たちを見ても、全くの無視だ。敵と思われていないのかな。

 巣の下は、池だ。もしかして、蜜かもと思ったけれど、水でした。これで、ネトネトの蜜を洗い落とせる。


 大きい音を出して、水中に突っ込み、浮かび上がる。

 蜂達は寄って来なかった。

 仕事に熱心だこと。


 酷い目にあったなあ。

 「ここから、どうやって出るかなあ」

 見渡しても、出口らしい所は無かった。

 壁にある無数の穴だけだ。蜂の巣だからな。まるで、駄菓子屋にある穴を開けて、おもちゃが出て来るあれに似ている。

 何処かに、当たりがあると良いんだけれど。

 

 「レイは、自分だけ、ズルいのー」

 いつの間にか、影から出て来たアリスが、蜂の巣を舐めている。

 アリスの周りを飛ぶ蜂達。攻撃する気はないようだ。自分たちの巣を食べられそうなので、威嚇しているように見える。

 早く、どこかに行けと、言っているようだ。

 言葉がわかるわけではないが、そんなことを言っているように見える。

 「出口知ってたら、教えてくれないかな」

 何となく、蜂達に聞いてみる。

 蜂達は、言葉を発せられないからか、何匹かで、矢印の形を示す。

 「おー、あっちに行けってことか?」

 どうせ当てもないのだからと、その方向に進んでみる。

 あー、また、穴があった。出口に繋がっているのかな。

 「行ってみるのー」

 アリスが飛び込んで行った。

 おいおい、躊躇しろよ。

 蜂達に、礼を言って、俺も穴に飛び込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ