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48.大好きです、秘密基地

 俺は、メガミフォンを取り出すと、ゴーレム作成アプリを立ち上げた。

 裏山に、秘密基地を造ろうと思う。

 アリスとティンクが俺の行動を怪しんでいるので、それを誤魔化すためだ。バトルスーツの在り処を秘密裏に探しているようだ。あそこだけは、まだ知られるわけにはいかない。あいつらに滅茶苦茶にされそうだ。

 

 スワイプを繰り返すと、

 「有った」

 

 【土竜ゴーレム】・・・地中を自由自在に移動できる。穴掘りの達人である。穴を掘った箇所の補強も可能である。秘密基地作りには持って来いのスペシャリストだ。土魔法と風魔法を得意とする。


 《【土竜ゴーレム】を作成しますか》 はい / いいえ

 はい、をタップする。

 目の前の床に、光の魔法陣が描かれる。

 魔法陣から小さな花火が上がった。その後で、1体のゴーレムが浮き出て来る。

 所謂、2本足で立つ土竜である。手がスコップのような形状をしている。

 〈マスター、お呼びにより、参上いたしました〉

 「今日から、お前は、モールだ。秘密基地を作る手伝いをして欲しい。裏山の中に、こんな感じにスペースを作って欲しい」

 俺は、手描きのイメージ図を渡した。

 モールは、少し眺めた後、口に入れて、モグモグと食べてしまった。

 「おいおい」

 〈御心配ありません。食べる事で、記憶するのです〉

 土竜の習性は、不明である。そう言うのだから、そうなのだろう。

 〈どの辺りから掘り進めましょうか〉

 腕を組んで、考える。

 「そこの蜂達の小屋の裏から、掘り進んで欲しい。今は、入口を塞いどいて欲しいかな。みんあには、内緒にしときたいからね」

 蜂小屋を指差す。

 モールは軽く頷くと、作業を開始した。

 俺は暫く様子を見て、穴が塞がるのを確認すると、屋敷に戻った。


 子供達には、何をしてもらおうかな。みんなで一緒に出来ることがいいよな。

 院長達にも手伝ってもらうとして、何がいいだろうか。

 昔、お祭りの時、子供達で何かをした様な記憶はあるのだが。焼きそば、綿菓子、金魚すくい、他には何かあったかな。でも、どれも、子ども達だけでは難しいかな。

 あとは、唐揚げ、おでん、ホットドッグやアメリカンドッグなんか、どうだろうか。

 おでんは、切ったものを入れて煮るだけで何とかなりそうだし、他は魔道具を作ったら、どうかな。結構、良いアイデアだと思うのだが。

 養護施設の脇にこじんまりとしたお店を作ろうか。表半分は売り場とイートインを兼ねたらどうかな。購入したものをその場で食べれる飲食スペースがあれば、ちょっとした憩いの場にならないかな。裏半分は調理スペースにすれば、子供達でも何とかいける気がする。

 本当は、エイト・フィフティーンの傍に作れば、大人達も手伝えるんだけど、今回は子供達だけで、なんとか出来るお店にしたいんだよね。儲けが出れば、養護施設の運営も楽になるはずだ。

 「うん、そうしよう。魔道具は後で作るとして、先にお店だけでも作っておこうかな」

 そう言って、俺は、また外に出て行くのだった。


 翌日。

 様子を知りたくて、俺は屋敷から出て、蜂小屋に向かった。

 「しまった。連絡方法を確認するのを忘れてしまった。どうしよう」

 

 トントン。


 ん、何処かで音がする。


 トントン。


 どうやら、山の中から、聞こえて来るようだ。

 「モール、そこに居るのか」

 音が止んだ。

 〈そこに居られるのは、マスターでしょうか〉

 間違いなく、モールの声だった。

 山肌の一部が崩れて、モールが現れた。

 〈マスターのご要望通りに出来ているか、ご確認願います〉

 「確認しよう。案内してくれるか」

 モールは頷くと、山の中に戻って行った。俺は後を付いて行く。

 煉瓦で補強された洞窟が出来上がっていた、人が余裕で、二人は並んで通れるだろうか。足元は石畳になっていて、とても歩き易い。

 そんな洞窟を暫く行くと、広い部屋に出た。部屋は50メートルくらいあるだろうか。高さは10メートルくらいある。予定通りだ。ここを中心に秘密基地を作ったのだ。

 中央に2メートルくらいの丸い円盤が見えた。そこだけ色が違う。

 「あれは、何?」

 俺はモールに疑問を投げかける。

 〈あれば地下に繋がる通路です。マスターの世界では、エレベータと呼ばれていたものです〉

 「よく知ってるな。どこから得た知識だい」

 〈おそらくマスターの知識が何らかの影響で我に流れ込んだかと推測されます。他にもエスカレータやテレビ、ラジオ等、いろんな知識があるようです。今後、マスターの為にお立てたいと思います〉

 敬礼をするモール。その知識もか。

 「まあ。いい。役に立つのなら、それに越したことは無い」

 〈マスターの構想では、山中に隠れる程度ということで、3階建ての部屋を造るようになっておりましたが、【我は簡易ダンジョン創造】というスキルを女神様より戴いておりますので、地下に部屋を設けました。駄目でしたでしょうか〉

 この世界にも、スキルはあるのか。初めて聞いたが。

 「問題ないよ」

 〈マスターの構想では3階建てでしたが、地下ですと余裕がありますので、地下5階まで作成いたしました〉

 モールは、とても満足そうだ。

 もしかして、それってダンジョンになってたりしないのか。王都にダンジョン作って、問題ないのかな。

 俺は腕を組んで悩んだ。

 だが、モールはそれを納得したと勘違いしたようだ。

 〈地下1階から4階までは、今は何もないスペースになっております。ここは、逆ピラミッド型になっておりますので、地下に行くほど狭くなります。それでも。最深部の地下5階は10メートルほどの広さになっております〉

 「そこには誰でも行けるのかな?」

 〈地下5階のみ合言葉が必要になります〉

 「合言葉?」

 〈合言葉です〉

 それ必要かなあ。でも、間違って子供たちが入って来ても駄目だから、しかたないかな。

 「その合言葉は?」 

 〈女神様大好きです〉

 「えっ?」

 〈女神様大好きです、が合言葉です。4階に止まった時点で、言ってもらえれば反応します〉

 うん、俺は言葉が無い。

 女神様とモールがグルか?メガミフォンから造られたゴーレムだから、ありえるかな。まあ、でも、女神も悪いようにはしないだろうからね。大丈夫だろう。そう考えることにした。

 「地下5階に行ってみようか」

 モールはエレベータまで先導してくれた。一緒に乗り込むと、モールが5階と指示を出す。すると、エレベータは下に動き始めた。

 どうやらエレベータは透明な円形の筒の中を移動しているようだ。乗っている円盤には風魔法が掛けられていて、その力で上下するらしい。良く出来ている。

 一度4階で止まった。

 〈マスター、合言葉をどうぞ〉

 「女神様大好き」

 再び動き出すエレベータ。

 5階までは少し距離があるのか、さっきより時間がかかった。

 〈地下5階のみ、マスターを守るために別棟にしてあります〉

 そこまで必要かなあ。モールに何か考えがあるのかもしれないから、任せよう。

 〈こちらが地下5階のマスタールームになります〉

 うん、まだ何もない部屋だ。でも、これで秘密基地感満載だ。

 モールが何処からか、タブレットパソコンを取り出した。

 俺に手渡す。

 〈マスターは、この簡易ダンジョンのダンジョンマスターになられましたので、そのタブレットが授与されます〉

 「ダンジョンマスター?」

 〈ええ、ダンジョンマスターです〉

 「えー、マジすか。モールがダンジョンマスターでいいじゃん」

 〈決まりですから〉

 なんだ、この展開。ただの秘密基地作りが、とんでもないことになってしまった。どーしよー。

 「仕方ない、諦めるか。そこで相談なんだけど、やっぱり上にも部屋を造ってくれない。山の上から外に出れるようにして欲しいな。そして、山の上には、こんな感じで」

 魔素を使って、空中に絵を描く。魔素がキラキラ光って、綺麗だ。

 モールは、じっと睨みつけるように見ると、やはりパクっと食べてしまった。食べて記憶するのは、本当のようだ。

 〈〇ンダーバードの基地のような感じですかな。ヴイラ風建築物ですかな。隣に展望台のようなラウンドハウスも必要ですかな。これは作る手としても楽しみですなあ〉

 なんだか、モールの変なスイッチを入れちゃったかな。

 〈我は上の階作りに参ります〉

 それだけ言うと、軽くお辞儀して、エレベータに乗っていってしまった。

 俺は、このフロア作りに専念しようかな。


 壁は一面液晶パネルだ。屋敷を中心にした周囲が見えるようにした。これで防犯には問題ないだろう。

 まあ、エメラが周囲の警戒をしてくれているから、二重の処置だ。安全面にやり過ぎはないだろう。

 中央のエレベータ周りにソファをぐるりと設置した。

 基本的にここで寝ることはないだろうから、これでいいだろう。最悪はソファでも寝ることが出来るしね。

 屋敷で寝起きがメインだけれど、この秘密基地でも寝ることは考えている。今、モールが作っている建物がそうだ。あそこなら、別荘気分で眠れそうだ。何だか、屋敷ばかり作っているようで、ムダが多いかな。ダンジョン内のシラサギ城に、ここの屋敷や、天空城。住むところばかりだなあ。

 それでも、必要な施設ばかりだから、問題はないと思う。

 暫くは、ここがメインになるだろう。


 地下2階から4階までは、まだ未定だ。簡易ダンジョンだから、魔物が出る階層を作っても面白いかもしれない。

 それに、アリスたちに見つかることを想定しておかなければいけない。イヒヒヒ。

 悪い顔である。

 

 俺は、久しぶりに、自分のステータスを見ることにした。

 「ステータス・オープン」

 目の前の空中にパネルが出現して、俺のステータスを写す。

  

ミライ・レイ

 【種族】 人間

 【称号】 女神の使徒 ドラゴンスレイヤー ダンジョン・オーナー ダンジョン。マスター

 【レベル】 100(MAX)

 【魔法】 使用不可

 【女神の加護】 女神のバングル(鞄が進化してバングルになった)

         女神の光使い 

         女神のカード 

         メガミフォン 

         女神の鍛冶錬金術師(統合) 

         女神のゴーレム魔造型師(統合)

         女神の不死鳥

         女神の魔物たらし

         その他


 何だか、変わっている。

 統合とか、どういう事?

 魔物たらしって、何?

 もう、何でも有りだなあ。


 よく考えれば、この秘密基地への入り口を何とかしとかないといけないな。

 許可したものしか入場出来ないように細工が必要だ。許可した者しか入れないような門を作ろう。

 俺は、エレベータで1階に上がって、出口に向かった。

 岩肌が見えるが、これはフェイクのはずだ。

 そこに道があるかのように、岩肌を抜けた。

 外に出た。蜂小屋の裏である。


 振り返って、俺はメガミフォンで、そこに鳥居を建てた。3メートルくらいの鳥居だ。

 鳥居を抜けると、秘密基地に通ずる洞穴に出るように改造する。

 通れるのは、俺とモール、それとエメラだ。あとで増やせるから、今は問題ない。

 俺は、鳥居の前で、柏手を3度打つ。

 それを合図にして、俺は鳥居に吸い込まれるようにして、消えていった。予定通りだ。

 歩いて洞窟を抜けると、中央付近でモールが待ち受けていた。

 〈マスター、完成しました〉

 相変わらず、仕事が早い。

 俺は、モールに付いて行った。

 中央のエレベータに乗ると、上昇を始めた。

 着いたのは、部屋の中だ。

 前面は窓だ。1枚1枚が大きい窓だ。周囲が良く見えた。窓の近くにソファを置こう。

 自分の屋敷を見下ろす感じだ。屋敷の前に、スリラックがいた。お店の方に行くらしい。紙の束を小脇に抱えて、歩いていた。向こうから、こちらが見えるのだろうか。

 〈外からはただの森にしか見えません。そういう作りにしております〉

 何の魔法だろうか。それとも魔道具か。あとで、聞いておこう。

 〈後ろの扉を出ますと、通路があります。そこを進んで通じる建物は、この山の中央に位置しております。ドーナツ型のコテージになります。住居空間となりますので、バス、トイレ付きです。露天風呂もご用意しております。中央からはロケットが飛び出せるようになっております〉

 本当に〇ンダーバードかよ。先々、何かが飛び出せるように出来るといいな。

 〈以上が、このコテージのご説明になります。何かお気づきの点などはありませんか、マスター〉

 「いえいえ、設計図通りです。凄いね、モールは」

 〈ありがとうございます〉

 モールの丁寧で迅速な仕事には、恐れ入る。

 あとは、子供たちが来てから、色々と詰めて行こうかな。

 おお、そうだ。

 「モール、地下4階は、お前の好きなようにして良いよ。自分用の部屋とか作ったりするといいよ。お前は、ここに住んでもらって、この秘密基地をもっと住みよいように改良してくれると助かるよ。期待しているよ」

 〈我のようなものに、勿体ないお言葉、痛み入ります。今後精進いたします〉

 とてもも人間味のあるゴーレムだった。

 ん?これが、ゴーレムたらし、か。

 教えて、女神様。

 もう少しこの話は続きます。

 楽しみにしてもらえると嬉しいです。

 それでは、次回で、お会いいたしましょう。

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