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A.I.W-story-  作者: 香芳戯 麻弥
白の国編
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39/209

39.カプセルの魔物達

 「俺の相手は、お前らか。数が多ければ良いってものではないぞ」


 4本ある腕を器用に動かしながら、魔人は文句を言った。


 「ふん、4本腕のあるやつに言われたく無い台詞ですね」


 焔の魔神クレナイが、そう言うと、焔の剣を構えた。人型の魔神だ。全身を赤の鎧が覆っている。


 「防御は任せて欲しいの」


 プルプル揺れながら、スライムのブルーが言った。体長2メートル程のスライムだ。澄んだ蒼色をしている。


 「早く終わらせましょう。レイ様が心配です」


 3メートルくらいあるだろうか。巨大なクイーンアントだった。黄金色した身体は見るものに恐怖を与える。喋りながら、凄い速さで卵を産んでいるようだ。産まれては孵化して、次第に数が増えていた。


 あっという間に、100体くらいは、いるだろうか。


 100体は、すぐさま地中に潜って行った。何をしようと言うのか。



 「クイーン、用意は良いか?」


 白狼のシルバが、皆をまとめる。体長は2メートル位だが、白い毛が銀色に輝いて、凄い威圧感だ。


 「問題ありません。いつでもいけますよ」


 彼らは、レイに名前を付けてもらったことで、異様なほどに進化していた。


 「クレナイは正面から突破。ブルーは、クレナイの盾になりつつ攻撃。クイーンは足下を壊してくれ。俺は背後から攻める」


 「了解です」


 まず、クレナイが突っ込んで行く。


 真正面から、ぶちかますのみ。


 魔人は、右腕で受ける。腕が硬化して、刀の代わりをしているようだ。


 クレナイの刀が紅に光る。


 「俺の刀をその辺の刀と一緒にしてもらっては困るぜ」


 全体から焔を噴き出して、相手ごと、燃やし尽くそうとする。


 「無駄無駄、俺の腕はお前の刀以上に燃えているのだから」


 その言葉通り、魔人の腕が発光していた。その腕は燃やされることなく、対抗していた。しかも、腕は他にも3本あるのだ。


 左腕が伸びて来る。


 クレナイに当たる直前に、透明な盾が防ぐ。


 ブルーの身体が部分的に伸びて、攻撃を防いだ。プルプルした柔らかい身体の反面、部分的に強度を上げることが出来た。同時に柔らかな状態に戻り、魔人の腕を包み動けなくする。柔らかいはずなのに、腕が抜けない。


 「どうして抜けないのだ」


 「君には抜けないよ。細胞同士が、チェーンのように繋ぎ合っているからね。君の力では、無理だね」


 そうこうしている間に、白狼のシルバが魔人の背後から音もなく忍び寄る。


 しかし、魔人の2本目の右腕が伸びる。


 シルバも右脚で対応する。生物同士だと言うのに、火花が飛ぶ。


 そのままの勢いで、咆哮を飛ばす。


 それを3本目、4本目の腕で防御する。


 「今だ」


 シルバが叫ぶと、クイーンが子供達に合図を送る。

 

 キュキュキュキュ。


 蟻達の会話のようだ。


 突然、魔人の足元が窪む。穴が開いたと言う方が、分かり良いだろうか。


 当然、その穴に落ちる魔人。


 下半身が落ちると同時に、土が下半身を抱え込んだ。さらに、土が硬化する。


 蟻達の吐く唾液に、その効果があるようだ。


 かなりの強度があるのか、魔人は身動きが取れない。上半身だけで、対応している。


 が、対応が間に合わなくなっていく。


 腕が1本、また1本と斬られ、最後には達磨のようになっていた。


 魔物達は、交互に斬りかかる。


 だが、斬られる度に、腕が生えてきた。斬られる速度と、生える速度が変わらない。どちらが速い訳でも無く、どちらが遅い訳でも無い。


 だが、それも、いつまでも続かない。


 「畜生。再生速度が追い付かない」

 魔人が達磨のまま嘆く。


 「四対一だからなあ、仕方ないよ。ひとりで、よく勝てると思ったなあ」

 クレナイは、生えかけた右腕を再度斬り飛ばす。


 「俺は最強なんだ。お前らなんかに、負けるわけがねえ」


 「そんなことを言ってるうちは、勝てねえよ。それに、再生速度も少し遅くなって来たようだぜ」


 「くそ、くそ、何で足が抜けないんだよ。自由に動ければ、お前らなんか、まとめて握り潰してやるのに。何でだよ、いったい」

 魔人は抜け出そうと足掻く。


 達磨状態だから、足掻き用も無いが。


 「まあ、それが作戦てもんだからな」

 それからは、簡単だった。


 ひたすら、腕を斬るだけだ。


 間違っても胴体を斬ってはいけない。復活する可能性があるからだ。今のままなら動くにも動きようが無いから、反撃しようがないのだ。


 達磨では、何も出来ない。


 

 どれくらい経っただろうか。


 とうとう、腕が再生しなくなった。どんなに待っても、腕は生えて来なかった。


 「そろそろ限界みたいだな」


 魔人は力無く、口も開かなくなった。これが演技ならば、最優秀俳優賞だ。


 「クレナイよー、とどめを刺してくれるかな」


 シルバの言葉に、皆がうなづく。

 

 シュン。


 クレナイの刀が、魔人の首辺りを通過する。


 同時に、魔人が溶けていった。


 後には、デカい魔石だけが残った。


 「ブルー、この魔石、主人に渡しといて」

 ブルーは、了解と言わんばかりに、プルプルと震えていた。


 「よし、主人の所に急ぐぞ。万が一という事もあるから、そばにいた方が良いだろう」


 「それが良かろう」


 「主人に万が一など無かろうが、主人のそばが落ち着くからな」


 「プルルル」

 


 「あなた達は、このダンジョンを守りなさい。おそらく、新しいマスターが現れる筈だから。マスターの居ないダンジョンなど存在しません。それが、この世界の理ですから」


 〈わかったよ、ママ〉


 〈ママに負けないように、僕たち、頑張るからね〉


 〈うん、頑張る〉


 子供蟻たちは、一斉に地中に潜っていった。



 「主人の元に、戻るとしよう」


 話がまとまると、瞬間、魔物達はカプセルに戻る。そのまま、主人であるレイ目指して、飛んで行った。


 四つのカプセルが螺旋を描くように、飛んで行く。


 まるで、虹の螺旋である。



 「何だ、あれは」

 ジェームズ侯爵は、驚いてばかりだ。


 「あれは、反則だろう」


 「あれは、相手にしちゃ、ダメな奴なの」

 それは、全員一緒だった


 誰も何も答えない。


 答えを知らないからだ。


 「レイ様と会議ですね、これは」


 ティンクは、自分がレイのことを放っておいたことなど、忘れているかの様に言う。


 「おそらく、アイツら1体ずつでのタイマン勝負でも、勝てたんじゃないか。あの4体は、それくらい強いと思うぞ」


 「侯爵様の言う通りですね。いつの間に、あのようなモノ達を従えたのでしょうか」


 「ティンク殿も知らないのかい。全く、秘密が多すぎるぞ、レイ殿は」


 ジェームズ侯爵の言う事ももっともだった。だが、ティンク自体、何も知らなのだから、どうしようもなかった。


 「レイ殿は、とんでもないやつだなあ。女王に報告せんと、何を言われるかわからんな。おかげで、救われたのだがな」


 「侯爵様、あまり言いふらさない様にお願いします」


 「わかっているよ、ティンク殿」



 「とりあえず、追いかけて、レイの所に行くなの」


 アリスは大剣をマジックバックに入れて、走り出していた。


 「我らも、置いて行かれないように追いかけましょう」


 「そうだな。あとひとりまで来たと言って、油断しないようにせんとな。このままだと、足手纏いだ。一から鍛え直す必要があるな」


 どうやら、ジェームズ侯爵は戦闘狂のようだ。


 「あとひとりとは言え、きっととんでもなく強いのでしょうね。今までの敵とは比較にならないくらい。それでも、レイ様が何とかしてくださるのでしょうが」



 「行くぞ、ティンク殿」


 「ええ、参りましょう」


 ティンクは、侯爵の肩に乗った。


 それを合図に、侯爵は走り始める。


 ティンクは振り落とされないように、しっかりと捕まっていた。



 

 

 

 遂にその時はやって来た。

 最後の魔人に、本当に勝てるのか。ー 

 次回、〔再会の記憶〕、乞うご期待。

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