35.何処かの小さな会議
「あの人を自由にさせてはいけません」
「貴方が強くなれって言うから」
「そうですよ、強くならないと手助け出来ないなんて、仰るから」
一瞬言葉に詰まる。
「そう言うな。強くならないといけないのは、間違いないのだから。ただ、あの人があんなに自由な人だとは思わなったよ」
「したいことをしてるって感じだもの。しかも、全力で」
「ちょっと目を離した隙に、あんな美味しいものを作ってしまって、止めてくださいなんて、言えません。・・・もっと作って欲しいです」
「美味しい、美味しいって、こっちにも送ってよ。絶対に食べてみたいもの」
みんな、涎が出ているようだが、誰も気づかない。
「まだ黙って、何かをしているみたいなの」
「何をしているのでしょうか」
「・・・秘密基地を造っているみたいよ」
「よくご存じですね」
「ああ、いつも見てるからね」
「暇なのですか」
「だって、あの人の事、気になるじゃない」
「それはそうですが」
「貴方、あの人に張り付いてなくちゃ、ダメよ。そのために送ったんだから」
「わかっております」
「あたしも一緒に行くわ。ひとりで戦える相手では、なくなってきてるから」
「私だって、付いて行きます。金魚の糞のように、付いて行きます」
「貴方、汚いわね、その言葉」
「そんなことは、ありませんわ。今のは、言葉の綾でございます」
「まあ、いいわ。ふたりとも、かなり強くなったみたいだから、これからは必ずあの人に同行すること。頼んだわよ」
「任せてください」
「お任せください」
「でも、そんなに美味しいの?」
「ええ、無茶苦茶美味しいです」
「そうだ、マジックバックに、ケーキが入っていたはず」
マジックバックの中から、イチゴのホールケーキを取り出す。
「何で、そんなもの持っているの」
「あとで、一人で食べようかと・・・」
「ズルいな・・・です」
「まあ、良いではないか。頂いても良いのか?」
三等分にカットすると、ひとつを差し出した。
指ですくって、一口食べる。
「美味」
「でしょう。美味しいんですよ、これが」
すでに、口の横にクリームが付いている。
「クリームの甘さと、イチゴの甘酸っぱさが、口の中で、夢の国のハーモニーとなります。中のスポンジケーキも、ふんわりとして、最高ですね。美味し過ぎて、他のケーキが食べられなくなるかも」
「あっちの世界にも、ここまで美味しいものはなかったぞ。頼む、定期的に美味しいものを送って欲しい」
「そうなりますよね。本当に美味しいですものね」
「何で、こんなに美味しいんじゃ」
「恐らく、魔素の影響かと。ダンジョンで育てておりますので、その結果かと。まだ他にも何か考えているようです」
「そうであるか。期待してるぞ」
黙々と、ケーキを食べる、3人だった。
魔人が見つかったぞ。
どうすれば、倒せるのか、作戦は?
次回、〔作戦会議〕、いよいよ佳境かな!




