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A.I.W-story-  作者: 香芳戯 麻弥
白の国編
10/102

10.ルビーとサファイア

 宿で一泊して、これから、ダンジョンに行きます。


 もう少し、この国の状況が知りたいと思ってるけど、ダンジョンとかあるみたいだし、国のことよりやはりダンジョンに興味津々なんだよね。後で、お店とかも回っておこう。食料品を買っとかないと、調味料が少ないんだよね。肉は、その辺の魔獣でもいいんだけどね。


 ちなみに、ダンジョンの魔獣は魔物と言って。区別しているそうです。


 この国の他の領都や、他の国とかも見たいけど、それはオークションが終わってかな。ガチャードさんにも、それまではいて欲しいと言われてるしね。仕方ないかな。


 「アリスは、どうする?」


 「あたしも、やっぱりダンジョンに潜りたいなのー。凄く面白そうなのー」

 

 「そうだよな、やっぱりダンジョン見たいよな。今日はダンジョンに潜ってみようか」


 「それがいいなのー」


 「遠くのダンジョンから行ってみますか。近いと人が多そうだし。嫌でしょう」


 俺たちは南門に向かった。この門から出るのが、一番近いらしい。


 門番の横を通り過ぎる。特に何も言われなかった。チラリと見られたようだが、それだけだった。でも、キチンと門番をしていることにビックリだ。物語の中だと、何かしらの問題が起こるのがここである。


 身分証は、入る時だけ必要らしい。

 ギルドでもらったから、見られても問題ないけどね。



 森を抜け、林を越え、山を迂回して。

 「着いたのー」


 ダンジョンの前の広場には、色んな店があった。


 これは、小さな街だな。


 武器や防具はもちろん、薬屋や魔道具屋に至るまで、何もかもがここで用意出来そうだ。まあ、今回はは特に用意するものは何もないけれど。


 入口には門がそびえていた。たまに出て来る魔物から、街を守るためだそうだ。


 スタンピードとか言ったかな。定期的に、魔物が溢れ出て来るらしい。とは言っても、何年に一度位のレベルらしい。その対応のために、ここにも門番や騎士の待機所があるそうだ。常に、五十人程度詰めているらしい。訓練の一環もあるみたいだ。どちらにしても、ご苦労なことだ。


 「さて、入りますか」

 


 俺たちは、ダンジョンに足を踏み入れた。


 二十メートルくらいあるだろうか。短めの洞窟を抜けると、草原に出た。暗かった洞窟から、一気に明るくなった。ここって、本当に地下なのかと言うくらい明るい。地下なのに、空が高い。本当に不思議な所だ。


 何層まであるのか、未だに終わりが見えないらしい。有名なギルドのパーティがかなり深くまで潜っているようだ。まあ、頑張って欲しい。俺達は、楽しければ、そんなことに興味はない。


 「さて、下に降りる階段を見つけますか」


 階下に行くには、階段を探すしか無い。しかも、どこにあるか、わからないときた。


 「あたしは、あっちだと思うなのー。なんか、いっぱいいるし、絶対にあっちなのー」


 「任せるよ。ついて行くから、先行、よろしくー」


 あー、魔物の群れに、もう突っ込んでいた。俺のも残しといてくれよ。



 いい加減、魔物の相手は疲れたよ。

 「少し、休憩にしようよ」


 「仕方ないなのー」


 地下なのに、日が照って、暑い。木陰で、休憩だ。魔物も、数えられないくらい倒したし。一階なので、まだまだ弱いのだけどね。


 「何か、甘いものがほしいなのー」

 「そう言えば、蜂蜜があったよな」


 アイテムボックスから、蜂蜜の固まりを取り出す。


 早速、アリスは摘んでは食べている。


 ティンクも摘まんでは、舐めている。


 「美味しいなのー。頬っぺたが、落ちそうなのー」


 「あー、生き返りますね」


 「うん、美味いな。ん?」


 蜂蜜の中から、何かが出て来た。丸い卵のような形だ。何だろう?」


 「それは、魔物の卵ですね」

 ティンクが忘れた頃に、そう呟いた。


 「蜂の卵です。とは言え、魔物の蜂ですが」


 卵はふたつあった。


 赤と青の卵がふたつ。僕の手の中にあった。


 「どうしようか、この卵」


 「飼えばいいなのー」


 魔物を飼うのか。ちゃんと言うことを聞いてくれるのかな。


 「どうすれば、孵化させることが出来るんだ。ティンク、わかる?」


 「流石に魔物のことまでは。でも、レイ様が、所持しておけば、いつか孵りますよ」


 いつまで所持しとけばいいんだか。とりあえず、マジックバックにでも入れとこうか。


 でも、マジックバックの中って、生き物は駄目なんじゃないかな。それなら、何故今まで無事に入っていたのかな。卵だからかな。


 とりあえず、ブランクカードに収納しておこうかな。


 「悩んでも仕方ない。前に進もうか」


 「進むなのー」



 結局下層では、相手になる魔物がいないので、一気に十層まで来てしまった。


 アリスが張り切っているから仕方ないのだけど。


 今も、ゴーレムを相手に蹂躙している。


 俺はその後を辿って、魔石や使えそうな素材を拾っている状態だ。もしかして、一度も戦っていない気がするなあ。


 おー、一段とデカいゴーレムが現れた。身体の表面が赤いのは、気のせいだろうか。


 「あれは、ファイヤーゴーレムですね。普通のゴーレムの数倍強い魔物です。アリス様は、大丈夫でしょうか?」


 「どうだろう。多分、大丈夫だと思うよ。まだ、飛び道具を隠しているから」


 アリスは、大剣を背負いなおして、アイテムボックスから、何かを取り出した。


 パチンコだ。Y字形の木にゴム紐を張って、石を飛ばすあれだ。ただし、アリスの持っているのは、俺の試作品だけど、性能は凄いよ。


 Y字形の木には樹木の精のトレント材を使っているし、ゴムはジャイアントスパイダーの糸を織って作ったものだ。弾も、ドラゴンの鱗を丸くして使っているから、止めれる盾なんて、無いんじゃないかな。見てて、楽しみだと思うよ。


 Y字形の木を左手に持って、ゴム紐を引っ張る。


 狙いを定めて、ゴム紐を放す。発射だ。糸を引くように跳んでいく。


 弾がファイヤーゴーレムの額を打抜いた。


 いきなり動きを止めて、ファイヤーゴーレムは後ろに倒れた。身体の火は消えて、燻っていた。


 「レイ、このパチンコは凄いなのー」


 脚を大きく開き、腰に手をやって、パチンコを掲げていた。


 「ちょっとやり過ぎでは」


 ティンクもそう思うか。うん、俺もそう思う。


 「悩まない、悩まない、前進、前進」

 俺は、アリスと一緒に歩きだしていた。



 結局、二十層まで、あっという間だった。


 グルグル、グルー。


 忘れてた、あれはアリスのお腹の虫だ。そう言えば、昼を食べるのも忘れて、ここまで来てしまった。

 「今日は、この辺に泊まるとするか。晩御飯にしよう」


 「それが、いいなのー。お腹が空いたなのー」




 「おはよーなのー」


 「おはよう。何気に早いんだ」


 「日が上ると、目が覚めるなのー」


 テントの外には、魔物の山が出来ていた。朝早くから、何やってんだか。


 外に出るために、テントを片付けた。


 「ん?」 


 ブランクカードの中で、何かが暴れている。何だろう。


 カードを取り出すと、中から何かが飛び出して来た。


 俺の周りをグルグル回り始めた。赤と青の線が、渦を巻いている。僕に何かをするわけでもなく、様子を見るかのように、旋回しているようだ。


 よく見ると、蜂だ。マジックバックに入ってた卵から、あの蜂達が孵ったようだ。


 どうやら、カードの中で、孵化してしまったようだ。


 「言葉は、さすがに通じないかな。うーん、どうしよう。それなら、こっちの言葉がわかるのなら、はい、なら、円を描くように飛べるかい?」


 蜂達は、大きく円を描いて飛んだ。どうやら、話が通じるらしい。


 「無理やり連れて来たみたいで、悪かったね。もう自由にしてもらって、いいよ。好きな所に行きなさい」


 蜂が八の字に旋回を始めた。


 「もしかして、✖️ってことかな。行く所が無いのかい?」


 今度は円を描いて飛んでいる。行くとこないのなら、どうするかな。


 考えていると、蜂達は、カードの中に飛び込んで行った。


 「そこがいいの?」


 飛び出して来ると、円を描いて、旋回した。


 「まあ、いいか。その代わり、言うことは、ちゃんと聞くんだよ」


 もちろん、蜂は旋回を始めた。


 「この子達に、名前がいるなのー」


 アリスは、たまに良い事を言ってくれる。


 名付けかあ、どうしようかな。二匹分だからなあ。うん、赤と青だから、ルビーとサファイアにしよう。


 「ルビーとサファイアに命名します」


 「レイは、センスないなのー」


 「赤と青だし、抜群でしょう」


 「まあ、レイにセンスを求めてもダメなのー。だから、あたしが、鍛えて来るのー」


 そう言うと、アリスは二匹を連れて、森の中に入って行った。



 偶には、レベル上げとかないと、アリスに置いていかれそうな、勢いだ。


 マジックバッグから、刀を取り出す。光波の輪を広げて、周囲の様子を窺う。一種のレーダーの役目をしてくれる。光波の輪をどんどん広げて行く。居た。


 右手奥、百メートルくらいだろうか。魔物の集団だ。何かまでは不明だが、大きさとサイズくらいはわかるから、かなり使える魔術だ。


 「さて、行きますか」


 足元が悪いので、地面から十センチくらいの所に、シールドを並べて行き、その上を走る。俺のシールドは一度衝撃を与えると割れるため、何度も、何枚も出しては、踏んで走る。これなら、足元を気にしなくてもいいから、かなり楽だ。


 そんなことを考えているそばから、現場に到着した。


 あれは、ミノタウロスだ。牛頭人身の怪物だ。それが、群れを成していた。十頭はいるだろうか。


 まずは、刀で勝負してみよう。アリスが獲物を全部攫ってしまうから、出番がなかったんだよね。



 「シールド」

 階段のように、シールドを積み上げて行く。


 一段一段、駆け上がる。


 ミノタウロスの上空、五メートルくらいまで上がる。


 そして、そのまま、一気に駆け降りる。


 勢いを付けて、一閃。連続で、斬りつける。


 しかも、相手が気が付かないうちにだ。


 訳もわからないうちに、半分が頭を飛ばして、倒れていた。


 それをもう一度繰り返す。


 駆け上がって、一気に駆け降りて、一閃。


 気がつくと、ミノタウロスは全て倒れていた。


 「まあまあだな。一度で全部を倒せるくらいでないとなあ。一対一で負ける気はしないけど、いつもそうなるとは限らないから、一度で何百も何千も倒れるくらいでないと、そのうち高い壁にぶつかりそうなんだよな」


 

 光波レーダーを、発動する。


 前方百メートルに、また魔物の固まりを発見する。


 今度は草原のようだ。足元は、それほど悪くないので、普通に走ることにした。



 見えて来た。


 魔物は、巨大な蛇のようだ。体長二十メートルくらいはあるだろうか。胴体の太さは、僕の身長を越えているかな。S字を書くように、移動している。身体の大きさの割に、素早そうだ。


 俺は数枚の銀紙を魔物に向けて、投げ付けた。


 キラキラ輝いて、魔物の廻りを舞っている。


 俺は、その内の一枚に飛び込む。


 実は、光る物なら何でも良いのだ。


 俺は、光る物の中に潜むことが出来る能力を持っている。


 そして。

 光を媒体にして、移動が可能だ。


 僕は魔物の死角から飛び出ると、斬りつけた。


 再び、銀紙の光に紛れ込んでは、違う光から出現を繰り返す。


 魔物はなす術もなく、僕に斬り刻まれた。

 


 僕は巨大な蛇を回収すると、光波レーダーを再度発動した。


 まだまだ行きますよ。



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