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閑話 「俺はガキが嫌いだ」

俺はガキが嫌いだ。

汚ねえし、手間かかるし、無知だし……まあ色々と理由はある。特に面倒なのは会話だ。町なんかを歩いてると子供を背負った母親達がよく歩いてたりする。そんなアシストなしの重労働良くできるなと彼女達には驚きを覚えるもんだが、まあんなことはよくて、問題はその背中のガキである。道ゆくものに視線を向け、向けられ、目が合えばニコニコ笑って「あー」「うー」とか何やらよく分からん言語のようなものを喋っているのだ。


一説によれば、ガキというのは天からやって来たものが母親に宿って生まれてくるらしい。俺はそういうのは信じる気たちじゃねえが、こればっかりは否定する気にもならねえ。確かにあいつはら未知の言語を話しているし、よく分からん場所をじっと眺めていたりもする。俺はどちらかというと天というよりもっと上の天玄から来るんじゃねえかと思ってる。それこそ《全なる存在》に連なるものがガキになってんじゃねえかとか。


そうすれば色々説明がつく気がする。よく分からん言語ってものはもしかしたら詠唱魔法のスペルの一つかもしれんし、奴らが幼稚に壁や地面に書いたりする図形ってのは幾何魔導に使われる原始の言語という可能性もある。


いやはや、馬鹿らしい想像には違いねえが、老後を楽しむ暇な老人にはちょうどいい暇潰しになる。


ところで、俺の家には一匹ガキがいる。


ランゲルというガキだ。


あいつは普通のガキと何か違う。生まれてから一年ばかりで随分と言葉を話すようになったし、頭もいい。俺が昔働いてた時の使えねえ部下よりはよっぽどマシだ。だからこそ異様。一年ばかしでそんなことになってるやつは見たことがねえ。あいつは随分と小さい時から変な刺青が入ってたし、それは目の前で消えて、それからというもの見たことがない。


分からん奴だ。


そういえば一度、何かぶつぶつと知らねえ言葉を話していたところに遭遇した。こんな賢い奴だから、もしかしたら俺の仮説が証明できるかもしれないと思って、その言葉について聞いてみた。するとなんて答えたと思う?


「物心付いた時から知っていた言葉」


だとよ。


いや、正直年甲斐もなく興奮したとも。


生まれた時から幾何学模様を体に刻まれ、未知の言葉も知っていたとも言いやがる。こりゃあ、俺の仮説が合ってるに違いないと思ったぜ。あいつはきっと《全なる存在》、《神》に最も近かった存在の生まれ変わりだ。是非とも母親と父親の顔を見てみたいところだ。まあ、あいつだったらそもそも人じゃねえものから生まれてきた可能性もあるがな!


んで、そんなランゲルも明日で五歳になる。数え年だと四歳だな。


老いちまうと随分時間の流れが早くなる。悲しいもんだ。いつかはあいつが大人になって、女を作って、家庭を持って、子供が産まれて。是非あいつの人生を見届けたい。絶対にあいつは面白い人生を歩むに決まっている……長生きしたいもんだ。


「さて、こんなところか」


手に持っていたペンをインク壺の中に戻す。机の上には文字の書かれた紙が一枚置いてあった。それを折りたたみ、レターケースに入れて封をする。


「あいつのことだ、絶対このプレゼントに喜ぶに決まってる」


明日はランゲルの五歳の誕生日。風習に則り、豪華なお祝いをしてやろうじゃねえか。


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