所長 閻魔大王
死役所の所長さんは、閻魔大王様でした。
レレレは、2人の死役所の役人に腕を掴まれて、死役所内の廊下や階段を通り過ぎていく。2人の役人はよほど急いでいるのか、小走りで、レレレのペラペラの身体は、足が床についていない。
多分ここは最上階かなぁ、と思えるところで、大きな扉の前で足を止めた。見上げると扉の上には「所長 閻魔大王」と書いてある。おおっ、すごいって思っていると扉が開いて、部屋の中に連れ込まれた。
部屋の中は、現代風で、会社の社長室ってこんな感じだろうなぁ、と思っていると、大きな机の向こうに閻魔大王が座ってこちらを睨んでいた。
まさしく絵に描いたような閻魔大王。プロレスラーのような強大な身体、いかつい顔、鋭い眼光、怖気付くほどの威圧感、って、あれ、おかしいなぁ、あまり怖くないよ、この人。むしろ、前にも会ったことがあるかも、などとレレレは考えていた。
「そのお方をここに残して、お前達は職務に戻りなさい」役人達が報告しようとする前に、閻魔大王は静かな声でそう告げて、役人を返してしまった。部屋の中は、レレレと閻魔大王の二人だけになってしまった。
「さて、レムトよ、お前が今生、何をしてきたか、少し見せてもらおうかな」とレレレのおでこのところに手を当てて、閻魔大王は目を閉じた。
「なんて事だ、何にも悪行がない。殺人、傷害、盗み、詐欺、薬物や贅沢な暮らしとかはおろか、ウソを言ったことすらない。しかも、善行の数値はモノすごく高い、人間のレベルを超えている。これ、どうすればいいんだ、レムト。」
レレレは、それを聞いた途端に、目の前の閻魔大王が誰であるか閃いた。飛びついて抱きしめて、「にいちゃん、にいちゃん、会いたかったよう」と涙を流していた。
そう、僕をレムトと呼ぶこの人は、僕のお兄ちゃん、シッダルタ様の所に連れて行ってくれた人、ブッダの弟子の中でも、頭が一番良くて、僕よりずっと早くに悟りを開いた人、名前は、・・あレレレレレ、忘れてしまった。
ちなみにマハー・パンダカかなぁ。
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