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その2−3

き、気まずい…。


 暫く、お互い無言のままコーヒーを飲む。さっきの経験から、警戒してちびちびと、少しずつカフェラテを飲みつつ向かいに座っている『刹那』さんを盗み見る。

 白い肌に切れ長の瞳。長い黒髪は艶やかでサラリと音がしそう。わたしよりも髪も肌も綺麗で、昨晩も思ったけど滅多にお目にかかれない、美人さんと言うに相応しい顔立ちの人だ。

 こんな綺麗な人が、わたしのことを殺そうとした、なんて信じられない。


「あの、聞いてもいいですか?」


コップを両手で持ちながら、そっと『刹那』さんを伺う。


「何ですか?」


「あの…ここって何処ですか?これからの事を話すって、どういうことですか?それに、わたし、何で…殺されそうだったんですか?」


 温かい飲み物のおかげで身体が温まり、気持ち的に余裕が出てきたのか、次々と疑問が浮かんでくる。気絶する前、わたしは港にいた筈なのに、今はどこかの部屋の中にいる。ホテルの部屋っぽく無いし、恐らく目の前にいる人の部屋なのだと思うけれど、それもはっきりしていない。だから、わたしは本当に『知らない場所』にいるんだ。

 自覚するとゾッとした。そんな『知らない場所』でわたしを『殺そうとした人』とコーヒーを飲んでいる異常な状況。

 起きた直後はあまり深く考えられなかったけれど、わたし置かれている状況って、もしかしてやばいんじゃ…⁉︎カフェオレで暖まったはずの身体も心も一気に冷え込む気がした。


「頼まれたからですよ」


「頼まれた…?わたしを殺すように、って事ですか…?何で…」


 唇が知らず震えて声もゆがんでしまう。


 わたしだって全ての人に好かれている、なんて思っていない。良いところ、悪いところだってあるし、嫌いな人だっている。

けれど、誰かに殺されそうになる程恨みを買った覚えはない。そう、思いたいけれど。


「さぁ、知りません」


「え…」


  軽く言われて目を瞬く。

 人の命を、わたしを命を奪おうとした、その当事者がその理由を知らない。


「知る必要がないですから。殺せと言われたら誰であっても殺す。ただそれだけです」


 それが私の仕事ですから、そう言って『刹那』さんはコーヒーを口にする。

 茫然と、言われた言葉の意味を咀嚼する。誰かは知らないけれど、誰かがわたしを殺すよう『刹那』さんに頼んだ。そして、仕事だから『刹那』さんはわたしを殺そうとした。

 殺されるほど誰かに恨まれている事にも、頼まれたから殺そうとした『刹那』さんも、理解の範囲を超えていて呆然としてしまう。まるでテレビドラマのような話で、現実味がなかった。


 頼まれたから、仕事だから、殺す。わたしの命は『刹那』さんにとって軽いものなんだろう。


「でも、わたしを殺さなかったのは、なんで何ですか?」


昨晩、確かに大きなナイフで殺されそうになった事は覚えている。けど、実際には殺されずにわたしは生きている。薄らと、可愛い、とか貰っていいですか?とか言われたような気はするけど、疲労困憊の上まさに極限状態だったから幻聴だった可能性もある。どちらかというとその可能性の方が大きい。私はごくごく平凡な顔立ちだ。


「え、言いませんでしたっけ。可愛いなーって思ったからですよ」


「ふぇっ⁉︎」

 

 気のせいじゃなかった⁈

 冷え込んだ身体が、言われ慣れない言葉のせいで一気に熱くなる。

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