その1−4
貰っても良い、ってどういう事?どういう意味?
私だけじゃなく、その場にいたもう1人の男の人も状況が把握できていないらしい。戸惑った雰囲気で口を開く。
「…は?今、お前何て言った?」
「え?だから、この子殺す予定なんですよね?それなら、私が貰おうかなー、って」
ニコニコと白黒の男が話す内容に血の気が引く。
今サラッとわたしのこと殺す、って言ったような気がしますが。やっぱりわたし殺される予定だったんだ。
「待て待て待て、理解が追いつかん。この女は確かに今日のターゲットで、殺しの依頼が入ってる。だが、何でそれでお前が貰うことになるんだ」
「だって、可愛いじゃないですか。あなたも、ここで殺されるより私に貰って貰った方が良いでしょう?」
「……うぇっ?」
自分が置かれた状況を理解するのにいっぱいいっぱいで、完全に目の前で繰り広げられる会話の傍観者でいたら、白黒の男が振り返って思わず変な声が漏れた。
座り込んだままのわたしに視線を合わせるためにか、白黒の男もわたしに近づくとしゃが見込む。
「ね、そう思うでしょう?」
表面上はニコニコと笑顔を貼り付けて、ナイフで頰をピタピタ叩かれる。けれど、目が笑っていない。
助かるかもしれない。その僅かな希望と死にたく無い!という強い想いに突き動かされて、わたしは考える余裕もなく必死で首を小刻みに動かした。
「ほら、彼女もそう言ってますよ」
白黒の男の言葉に、群青は深い深いため息をつく。
「…ボスには何ていいわけするつもりだ」
「んー、そうですねぇ。殺したことにして報告します。どうせいつも遺体なんて確認しませんし」
「馬鹿か。そんなものバレるに決まっている。死体処理班がいるだろう」
「まぁ、適当に考えますよ」
ヘらー、っと笑って、白と黒の男の人は漸くナイフをしまってくれた。目の前からナイフが、自分の命を奪おうとしていた道具が消えたことにほっと息を吐く。
「はわっ」
突然の浮遊感に変な声が漏れた。
だって、白と黒の男の人が脇と膝裏に手をいれて…所謂お、お姫様だっこというものをするから!
白と黒の男の人の顔がすぐ近くにある。白い透けるような肌、夜色の髪と瞳。こうして近くで見ると、瞳は薄紫がかった、不思議な色合いをしているのがわかった。
端正な顔がすぐ横にあって、状況も忘れて、否応なしに顔に熱が集まる。
「私は刹那、と呼ばれています。これからよろしくお願いしますね、真優さん」
それはそれは綺麗な笑みで微笑まれ、怒涛の如く起きた出来事を受け止めきれなかったわたしは…。
「あ」
「なんだ?」
「真優さん、気絶しちゃいました」
予想外の出来事だらけの現実から目を瞑り、人生で初めて『気絶する』ということを経験した。気絶するってこんな感じなんだ。思考が無重力の宇宙の中に放り投げられた感じになって、自分が曖昧になって霧散してく感じ。
この後自分がどうなるかなんて予想もできなくて、わたしはただその感覚に身を委ねた。