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ゆうしゃよ死んでしまうとは情けない

 リハビリ投稿作品であらすじに書いてあるように連載するならという仮定のプロローグ的な話です。

 気分が乗ったり、評価してもらえたら連載しようと思ってます。

「『――勇者よ、死んでしまうとは情けない!』」


 大切な幼馴染が目の前で冷たくなっていく。その中で出てきた言葉は予想外……いや、想像もしていない言葉だった。

 まるでそう言うことが事前に決められていたかのように自分の口から出て来る他人の言葉。

 しかし、それに驚いている時間はなかった。

 幼馴染の死体に集まる光、そしてまるで天に召されることを拒絶するかのような強烈な力が働き先程までピクリとも動かなかった幼馴染が息を吹き返した。


「イーナ!」

「オ、オウワン? 私は一体……?」

「わからない。だけど、無事でよかった」

「……無事? 私、私は――死んだんじゃないの」


 イーナは生き返ったことを確信しているようだった。

 だが、今はそれどころではない。

 彼女が生き返ったとしても死の脅威は傍にある。


「とにかく逃げようっ!」

 イーナが囮になり、そのイーナが死んだと思われていることで奴の注意はこちらから逸れている。

 ならばすぐにでもここを離れて助けを呼んでこなくては……!


「ううん。それは駄目」

 だが、イーナは優しく諌める。


「何を言ってるんだ!? 早く逃げないと今度こそ殺される!」

 もう二度と目の前で誰かを失うのは嫌だ!


「……聞いてオウワン。事情は後で話すけど、私はあいつと戦う。いいえ、戦わなければならないの」

「どうしてだ! 君はただの村娘だぞ! あいつと戦う力なんてあるわけがない!」

「そう。私はただの村娘だった。だけど、今は違う。あいつと戦うのは私にしか出来ないことなの」

「ど、どういう……?」


「だって、私は勇者だから――」


 イーナは奴に向かって行った。

 手にはその辺に落ちていた枝を持ち、駆ける速度もそこら辺の女の子と大して変わらない。

 それでも背中から漂ってくる雰囲気はたしかに彼女が勇者なのだと錯覚を覚えるような頼もしさがあった。


 彼女は変わった。

 だけど、変わったのは彼女だけじゃない。


 それはイーナが続けて放った言葉にも含まれている。


『――そして、あなたは王様だから』


 意味が分からなかった。

 そうしてわけもわからないままに彼女は初陣を見事勝利し、勇者の勝ち鬨としては心許ない嗚咽を漏らしながら僕の下に戻ってきた。




 かつて、世界は滅びの時を迎えようとしていた。

 世界中のあらゆるモンスターの頂点である魔王がモンスターを率いて人類を滅ぼそうとしていたからだ。


 ただでさえ凶暴なモンスターが誰かの意思により使役される。

 それに人類が抗う術など存在しない。

 毎日を平穏に暮らす人々も国に忠誠を誓う兵士もそこには区別なく、ただ人類というだけで弱者として搾取され続ける日々を送る。


 それを見かねた神は彼らに御使いを遣わした。


 それこそが人類の救世主『勇者』であった。


 勇者はその当時、人類の先頭に立ち守っていたとある王国に現れた。

 ただし、人間である勇者は常人よりも強くても人間である。モンスターの大群に戦いを挑み、さらにはその上の魔王と戦えば命を落とす可能性が高い。


 そこで神は王国の国王にもある力を授けた。

 復活の力を。

 勇者限定ではあるが、遠く離れた地で勇者が命を落としても王の前に蘇生される。その時に王が言う言霊が『勇者よ、死んでしまうとは情けない!』というものだった。




「――っていうのが私が死んだ時に自称神様から聞いた昔話」

「そんなっ、魔王って……!」

「うんうん。わかる。私も魔王なんて子供を寝かしつけるための空想の存在だと思ってた。というか今でもそうだと信じてるもの。だけどね、それもかつて勇者が魔王を倒し、モンスターの支配が弱まったからこそなの」


 今でもモンスターはいるにはいる。

 だが、熟練の兵士が何人かいれば倒せるような存在がたまに現れる程度でそれ以上の脅威は聞いたことがない。

 それもすべて大昔の話のせいなのだろうか。


「っていうか、その話の流れだと僕王様になっちゃうんだけど!?」

 取り乱しながら叫ぶと、イーナは何をいまさらという顔をしていた。


「さっき言ったじゃない。あなたは王様だって」

「聞いてたけど、それで納得できるわけないでしょ!?」

 イーナと違って自称神にも会っていないのだから、はいそうですかとなるわけがない。


「そもそもこんな田舎の集落に住んでいる人間が王様ってどういうこと!?」

 両親もそのまた両親も皆畑を耕してのんびり暮らしているような人だった。

 どこにも王様感のない家系図に何を間違えたら、王様という単語が結びつくのか。


「それもまた話せば長くなるんだけど、重要なところだけ割愛して話すわね」




 魔王を倒し、世界に平和が訪れた。

 それでもまだモンスターの脅威は残っているので、勇者は王国と協力してモンスターを退治し他の国も彼らに協力を惜しまなかった。


 だが、やがて勇者が年を取って引退しその子供や教え子たちが役目を引き継ぎ魔王との戦いがもはや空想の域にまで忘却された頃、かつて勇者とともに人類の希望であった国は他国から忘れ去られようとしていた。


 ただ歴史があるだけの国。

 それなのに、国土が大きく資源が豊富なその国を嫉む国が現れ、戦争を仕掛けた。

 かつて、世界のため人類のためにモンスターという脅威と戦ってきた国の兵士も長く続き過ぎた平和によってその質は落ち、個々の力で戦況を打破することは出来なくなっていた。

 そうして勇者の国は滅んだ。


「で、その生き残りがオウワンよ」

「信じられない!」

「正確に言うと当時の王族は皆殺し、正確には国民も含めて殺され尽くしたらしいけど……」

「あんまりだっ! じゃなくて、それだったら、僕が生き残りっておかしいでしょ!?」

「どこの世界にも物好きはいたのよ。王族でも平民と恋をして駆け落ちをするような輩がいてもおかしくないでしょ?」

 そんなのはそれこそ物語の中だけにしてほしい!


「ここからが重要なんだけど、最近になって魔王が復活……というかかつての魔王並みに力を付けた存在が現れたらしくってね。神様はかつての勇者と王国に戦ってもらおうと思ったそうなんだけど」

「王国は滅びて、勇者もとっくに死んでいたと?」

「そういうこと。神様もいい加減よね~。何百年も放置してんだから」

 そういう問題じゃない。


「で、探したら王様の子孫は生きてるみたいっていうのはわかったのよ。ただし、王様にしか使えないようにしていた復活の呪文をどうするかってなったの」

「どうするかって?」

「だって、国がなければ王も何もないでしょ? だから、オウワンは王族の血を引いているけどただの人。しかも王国もないから王様と名乗らせるのも違う。そうなった時に面倒だからあんたの近くに新たに勇者を作り出そうってことになって選ばれたのが私」

「……神様」


 適当過ぎる神様に天を仰ぎたくなる。


「ということで私はモンスターを斃し続け、魔王を斃しに行きます」

「いやいや、待って!」

 そこに話がいくのはおかしいでしょ。


「だって、しょうがないのよ。今でも王国を滅ぼした国はあるけど、彼らは勇者の力も復活の力も使えないからね。このままだと世界が滅んじゃうんだって」

「……自業自得じゃない?」

「そうはいっても、その国には当然老人や子供もいるの。さすがに全人類に過去の過ちの清算をさせるわけにはいかないでしょ?」


「それはそうだけど……」


「ということで、オウワンも一緒に行くわよ!」

「なんで!?」

 寝耳に水どころか寝ていたら滝つぼに放り込まれたぐらいの衝撃があった。


「だって、私は死んでも復活できるけどオウワンは復活できないし」

「あっ、もしかして心配を――」

「それに、いちいちここまで戻って来るの面倒じゃない? 私は昔の勇者と違って国のバックアップもないし、お金もない! それなのに、田舎まで戻ってまた冒険を再開しますじゃいつまで経っても世界を救えない!」

「感動したのがバカだったよ」


「それにこんな田舎にまでモンスターが出現した。それはもう世界中どこにいても安全じゃないってことよ。だから、オウワンも一緒に世界を救おう?」


「しょうがないな。わかったよ」


「それでこそよ!」


「まあ、こんなところで渋ってたらそれこそ情けない」


「そうね。あっさり死んじゃう人類の希望よりも情けないわ!」


 色々急展開だけど、僕とイーナはこうして誰にも知られることなく世界を救うために旅立った。

(仮)連載版の設定


主人公オウワン

王族の末裔。旅の途中で復活の呪文以外の魔法を覚えてサポートに回る予定。


勇者イーナ

新時代の勇者。オウワンとは幼馴染で正義感が強いが行き当たりばったり。オウワンを守り抜く予定。


二人以外の末裔と勇者のコンビも続々登場させたいと思ってます。

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