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消えたベレニス

 幸い、オリヴィエが乗っていた馬を見つけて、シルヴァンはすぐに先導する隊商に追いついた。


「シルヴァン! お前! 無事だったのか!」


 戻ってきたシルヴァンを最初に見つけたブノワが声をかける。


「おい、ベルナールはどうした、一緒じゃないのか」


 シルヴァンと共に戻ると思っていたベルナールの姿が見えない事に気づいたアメデが言うと、


「ベレ、ベルナールが? どうして、皆と一緒にいたのでは?」


 さっと青ざめたシルヴァンが詰問するように尋ねると、アメデとブノワを不安そうに見て、シリルが言った。


「あんたを追って戻ったんだ、助けに行くって、一人で」


「……いや、会ってない」


 シルヴァンは、既に馬首を戻し、背後になったアメデ達に言った。


「この後、どうなるかわからん、皆は急ぎここを抜けろ、ベルナールは俺が見つけて連れ戻す」


 言うやいなや、元来た道を戻って行った。シルヴァンの騎影は、土煙ですぐに見えなくなってしまった。


--


 ベレニスは、頭の痛みで目覚めた。後頭部にたんこぶができているようで、ズキズキと痛む。こぶの具合を確かめようとして、自分が縄によって拘束されている事に気づいた。


 ベレニスは、崖の虚のようなところに縄撃たれて転がされていた。腕と体がひとつにくくりあげられ、手と足も拘束されている。


 ああ、そうだった。と、ベレニスは、今自分の置かれている状況に至るまでの出来事を思い出していた。


 シルヴァンを追って一人、切通へ戻ったところを、武装した集団に捕まったんだ。


 すぐに殺されはしなかったが、現時点で拘束されているという状況は、処刑が先に伸びただけか、と、周囲を見回してみた。


 当然ながら、剣は見当たらない。


 ベレニスは、今になって己の短慮さにあきれていた。今生きているのは偶々なのだ。最初にあの一団に遭遇した時に殺されていてもおかしくはなかった。


 だいたい、ベレニスの旅は最初からそんな調子だった。


 キュイーブルに着いた日にシルヴァンに出会わなければ、デジレの商隊への入隊だってゆるされたかわからない。


 無事にここまで旅をしてきたのを、自分の手柄のように思い始めての慢心だ。


 ベレニスは、深く息を吸って、吐いた。


 あわててたところで、現状は変わらない。今置かれている状況を把握し、できる事を探す。それをベレニスに教えてくれたのも、今思えばシルヴァンだった。


 縄はキツく結ばれているが、今自分が転がされている場所は、牢屋では無い。恐らく自然にできた虚で、雨風をしのぐ為にその場を使われているだけなのだろう。人造物は見当たらないが、露出した岩肌は、煉瓦を組んだものでは無いのだ。


 奥は外の明かりが届かず、薄暗い。芋虫のように這っていくと、手掘りの名残なのか、砕けた石がそのままで放置されている。


 ベレニスは、落ちている中で、鋭利なものをさぐり、掴んだ。


 足に結ばれた縄を、石の尖った部分でこすると、焦げ臭い匂いと共に擦りきれていくのがわかった。


 縄から逃れる方法が見えてくると、ベレニスは縄を切る事に夢中になった。結び目がほどけると、次は手。手の縄さえ解ければ、体を動かして縄目を緩める事もできた。


 見張りが居ないという事は、すぐに誰かが戻ってくるかもしれない。鉢合わせをして、相手の手に武器があったら、台無しだ。

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