1-8:【復讐への道】
だからほのぼの分を……ほのぼの分を……(ヽ´ω`)
復讐には力を貸せん。目の前の魔王は、ハッキリとそう口にした。
俺は、俺の復讐は、ここで終わるのか?あの日受けた屈辱をこんな所で終わらせて良いのか?
「今のお主には力がある。それをどう使うかはお主次第じゃ。じゃが、復讐以外にも使い道はあるのではないか?」
「うるさい……俺は、俺は!」
気が付けば俺は、ロクに反論も出来ず隠れ家を飛び出していた。それは、危うく諭されそうになっていた事からの逃げだったのかも知れない。
「お、おいお主!……行ってもうた。最近の若いモンはせっかちじゃのう」
そう言って近くの菓子を咥える魔王。
「とは言えそのまま捨て置くのも後味が悪いのぅ……どれ……」
何やら呪文を唱え、手のひらに黒い球体を一つ創り出す魔王。
「ヤケになって無謀なことをせんか見守ってやるとするかの。……あれじゃ、菓子の礼もあるしの」
◇◆◇◆◇◆◇◆
何処まで走ったのか、気が付けば街を抜け、森の中にいた。先程から魔王の言葉が頭を離れない。
「復讐以外の使い道だって……?あるわけ無いだろう!その為に手にした力だ!」
溢れ出す魔力は、辺りの木々を根こそぎ薙ぎ払っていく。無差別な破壊に鳥や獣達が慌てて逃げ去っていく。
「はぁっはぁっ……クソ!クソ!」
しゃがみ込み地面を強く叩く。己の拳が傷付くのも構わず、何度も何度も叩いていく。
完全に予定が狂っていた。なんだかんだと言いながら、魔王は二つ返事で協力してくれると思いこんでいた。
「復讐も、世界も望んでいないだって……。じゃあ俺はどうすれば良いんだよ……」
もとよりそれしか見ていない人生だった。全てが狂ったあの日から、それ以外の事は二の次だった。その道が閉ざされようとしている今、アレウスにとって進むべき道は何も見えなかった。
「いっそ、独りで逝くのも悪くないな……。玉砕覚悟で行けばアイツ一人くらい……」
アレウスが自暴自棄になろうとしていたその時、不意に遠くから恫喝の様な声と、悲痛な叫び声が響いてきた。
「なんだ……?」
重い腰を上げ、声の聞こえた方へと足を進める。
森の奥、人が滅多に入らないその場所に居たのは一組の男女。森の中でのお楽しみかと思ったが、良く見るとその感じでもなさそうだ。
「大人しくしろや!獣風情が逆らってんじゃねえよ!」
女を組み伏せるのは、屈強な男。見た目といい、言動といい、粗暴さを隠そうともしない、世の中全て自分の思い通りになると信じている。そういう男だった。
「いや!やめてぇ!誰かっ!助けて!」
組み伏せられている女は抵抗しているが、如何せん体格が違う。女は耳を伏せ、尻尾を丸め、必死に己の身を守ろうとしている。
「亜人か……」
獣人や蛇鱗族に代表される、亜人族。人と獣が交わった結果だと、この世界では忌み嫌われている存在である。中には魔族だとして、討伐された種族もあると言う。
「俺には関係無いな……好きにしてくれ」
見捨て、立ち去ろうとするアレウス。しかしフッと頭の片隅に何かがよぎった。
「いや、まてよ……。亜人共なら人間に恨みを持ってる奴等も多いんじゃないか?」
種族的には人間族より優れた面もある亜人族。それを戦力に出来れば、奴等に届くんじゃないか?
「ふふ……良いな。そうだ、戦力が足りないなら数で補えばいい。何も魔王だけが戦力じゃない」
亜人族を救い、集め、人間への恨みを煽る。そうして戦力を整え国を攻めさせる。大半の亜人族は死ぬだろうが、道を拓いてくれればそれで良い。
まずはその一歩だ。目の前の亜人を助ける。全ては、俺の復讐の為に……。
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