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3-21【探索】

気が付いたら一月経っていた件……

「目が覚めたようだな?」


 状況が摑めないのか、隊長がしきりに周りを見渡している。


「ここは……私は一体……」


「まぁ、言いたいことも聞きたいこともあるだろうが、まずはこちらの質問に答えて欲しい。そうすれば悪い様にはしない…………俺達が何者か分かるか?」


 まるっきり犯罪者の様な質問だな。もう少し言い方があったかも知れない。


「お前たちは……いや、わからん。何者だ?」


 どうやらとぼけている様子はなく、隊長は本当にわからないらしい。となればやはり俺達を襲って来たのは何らか操られての事か。


「俺達を襲った事も覚えて無いのか?」


「お前たちを? 確かに他の兵達も倒れているが……サッパリだ。彼等は無事なのか?」


「ああ、眠っているだけだ。しかし覚えていないか……」


 取り敢えず再度襲いかかって来る事も無さそうだし、ティナに頼んで他の兵士も起こしてもらう。その間にこっちは事情を説明しておくことにした。




「そんな事が……」


 隊長に城で起こっている事、俺達の事を知った隊長はにわかに信じられないといった様子で首を振っている。


「そんな訳で、俺達を襲う前に何か変な事は無かったか? 誰かに会ったとか」


「今日は……済まない、誰かに会ったのは確かなんだが上手く思い出せない……何か靄がかかったような……」


 ふむ、どうやら何かされたのは確実そうだ。ちらりと魔王を見ると、やれやれといった様子で溜息をついていた。


「しょうがないのう。ちょっと強引な手を使うとするかの」


 そう言うと隊長の頭にその小さな手をポンとのせる魔王。なんか小さい子が背伸びして頭を撫でてるみたいだな。


「ほれ、その会ったという誰かの事を思い出すのじゃ」


「あ、ああ……」


 隊長が目を閉じ必死に思い出そうとしている。それを探るように、魔王も目を閉じる。一分か二分か、そうやってじっとしていた二人だが、調べ終わったのかスッと魔王が手を離す。



「会っておったのはカストールじゃの。やはり奴の裏切りじゃな」


「問題は、何処に居るかか……」


 信じられないといった気持ちが大きいが、ここに来て魔王が嘘をつく理由もない。


「お主が会っていた場所……アレはどこぞの部屋かの? 妙に広い部屋じゃったが」


 隊長に向かって場所を確認する魔王。広い部屋? そんな所この城にあったか?


「広い部屋……? 済まない、もう少し詳しくわかるか?」


「そうじゃの……見えた感じじゃと、おそらく地下かの。窓は無いようじゃったが。どちらかというと訓練所か何かかのぅ」


「訓練所? いや、私の知る限り地下にそんな施設は無いはずだが……」


 隊長ですら知らない施設がこの城にあるのか、それとも全く別の場所か……いや、流石に後者の線は無いか。となれば、隊長でも入れないような場所か?


「普段立ち入りが禁止されてる場所は無いのか?」


「これでもそれなりの権限は持っていてな。入れない場所といえば、賢人達の個室か会議が行われる部屋くらいだ」


 ふむ……少なくともカストールの部屋であるココは外すとして、怪しいのは――


「……会議所か?」


「コソコソするのにはうってつけじゃが……一度調べたじゃろう?」


 カストールを探して城内を回った際、あそこは最初に見に行った。死体は片付けられ、綺麗なものだったが。


「詳しく調べた訳じゃないからな。何か秘密があるのかもな」


 他の賢人達も知っているのか、カストールだけが知っているのかは分からないが、どのみち怪しい場所は調べるに限るだろう。


 さて、今度こそ見つかるといいが――。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 会議所は嫌な臭いも消え、すっかり綺麗な部屋になっていた。ココに賢人達の亡骸があったとは、誰も思わないだろう。


「ふーむ……綺麗さっぱり何もないのう」


「誰かが片付けたか……その割には城内には話が広まってなかったな」


 こうなると見たものが真実だったか、それすら怪しく思えてくる。


「取り敢えず何かあるか調べてみよう」


………………

…………

……



 部屋の中を探し始めてどれくらい経ったか、何も見つからず見当違いかと思い始めた矢先、ティナが小さく声を出した。


「あれ?」


「どうしたティナ。何か見つかったか?」


 ティナが気にしているのは何の変哲も無い本棚。後ろに隠し扉でもあるかと見たが、そういった類のものも無さそうで、早々に見切りをつけた本棚だった。


「あ、いえ……大したことじゃないんです。すみません」


「いや、気になった事は何でも言ってみてくれ。ひょっとすると何かあるかもしれないしな」


「ほんとに大したことじゃないんです。ただ、本がなくて……」


 本がない? 本棚にはぎっしりと本が並べられているが……。


「えと、この本なんですけど続き物みたいですけど、三冊目だけがないのが気になって……それだけなんですけど……」


「何じゃ? 探してる振りをして本を読んでおったのか? ティナもこの男にこき使われて、遂にサボる様になってしもうたか」


「ち、違いますよぅ!」


 魔王がそう言ってティナをからかうが、お前こそは早々に調べ飽きて、探してる振りをしてたのは知ってるからな……。


「単に持ち出してるとかじゃないのか?」


「きっとそうですよね。すみません変な事言って……」


「気にするな。何が手がかりになるかもわからないしな。ちなみにどの本なんだ?」


「これです。五巻まであるみたいなんですが、丁度真ん中だけが抜けてて」


 ティナの示す本は、確かに真ん中――三巻目だけが抜けていた。あたりを見渡すが、他の場所に置いてあるわけでも無いようだ。


「確かに……しかし妙だな。抜けてる割に、本棚にはちゃんと本が収まってるんだよな。これじゃあ、三巻目が入らないぞ」


 本棚は上から下までぎっしりと綺麗に収まっている。気付かず並べていったのか?


 何となく気になって表紙を見る。タイトルは『魔王記』一巻目を手に取りパラパラとめくる。が、豪華な表紙とは裏腹に、中身は白紙であった。


「なんだこれ? てっきり魔王について書いてるのかと思いきや白紙じゃないか」


 残りの本も見てみるが、全て白紙。これじゃあ本の形をしたメモ用紙だ。


「何じゃ、わしに黙って書き連ねようとしたは良いが、あまりに素晴らしすぎて何も書けんかったんじゃろう」


「あまりに酷すぎて書けなかったの間違いだろう……」


「ん? なんか言ったかの?」


「いーや、何も言ってませんよ魔王様」


 俺が魔王について書こうと思ったら何だろうか……起こし方とか、機嫌のとり方とかか。


「しょうがないのぅ。わしが直々に書いておいてやろう。ほれ、本となんぞ書くものをよこすのじゃ」


「自分で自分の事を良いように書くって、なんか虚しくないか? 書くものならその辺に置いてあるだろ」


 会議所だけあってペンとインクは常備されている。魔王が適当な椅子に座り、本を開いた次の瞬間、俺達の眼前に広がったのはさっきまでの部屋ではなく、だだっ広い空間だった。


「……何が起こった? いや、何をしたんだお前」


「わしゃあ、本を開いただけじゃ! 何でもかんでもわしのせいにするでないわ!」


 周りを見渡しても奥まで見通せない、広い空間。地面も先程までの硬質な床と違い、土で埋められている。


「ふむ……わしが見た景色はここの様じゃのう」


 カストールが隊長と会っていた訓練所の様な空間。なぜだかわからないが、俺達はそこに来たようだ。



「やっときましたか。随分待ちましたよ」



 突然聞こえてくる、聞き覚えのある声。暗がりから姿を表したのは、さっきまで探していた当の本人、カストールだった――。


ここまでお読みいただきありがとうございますm(_ _)m

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