3-9【アストラでの異変】
決算期にGWなんて無かったんや……。
少し開きましたが『二度寝魔王』58話目の投稿です!
レヴィアタンの襲撃やシロウの失踪などあったが、俺達はなんとかアストラへ到着していた。
送ってくれた人魚に別れを告げ、港へと船を向かわせる。
確かにアストラは大陸とは違う、独自の発展を遂げた国。何か理由があるのか、建物は基本的に一階建てのものしかない。そしてその屋根はここから見る限りは、全てオレンジ一色で統一されている様だった。
人魚の話通り、今は祭りが行われているらしく、活気に満ち溢れ、大通りは人でごった返していた。
大人たちは思い思いに出店で飯や酒を楽しんでいる。その隙間を縫うように、子供たちが走り回る。手に持っているのは魚を模した旗の様なもの。
だが、俺達の目を引いたのはそこでは無かった。
「これは……確かに大陸では考えられない眺めだな」
道行く者、立ち止まっている者。その殆どが亜人族だった。
「こんな……こんな事って……」
ティナ達も、この光景に言葉が出ないようだ。無理もない。
「ふむ……勇者達が何かを企んでいるとは思えん光景じゃのう」
魔王がそう呟く。確かに、こう言っては何だが平和過ぎる。
「てっきり祭りをぶち壊すくらいするかと思ったが……逆に不気味だな」
しいて言えばシロウやレヴィアタンが怪しい線だが……。
「お兄ちゃんは私達を何だと思ってるのかな……」
「何だと言われたら、迷惑極まりない存在――!?」
違和感なく会話に参加してきた声。そこには、祭りを満喫している様子のアリシアが立っていた――。
目の前でパクパクと串刺しにされた焼き魚を食べているアリシア。紙で出来たお面の様なものを頭の横に付けていたり、布袋を持っていたり、どう見ても祭りを満喫しているただの少女だった。
「アリシア、お前っ!」
「あーあー、ストップストップ! 今日はお祭りの日だよ〜。暴れるのは無し無し」
「ふざけた事を……」
「それに、この国で人間が暴れてるとこなんて見せたら、大変な事になるよ〜」
アリシアはそう言うが、だからといってこいつを野放しにしていても被害が増えるばかりだ。ならば問題が起ころうが、ここでコイツを抑える方が得策だろう。
そう思い行動に移そうとした時、不意に視線を感じる。それも一人二人じゃない。
――周りの亜人族、その全てがこちらを見ていた。
「なっ……」
「あはっ! お兄ちゃん、注目のマトだね〜」
「ふむ……妙な感じじゃが、ワシには関係ないの」
周りの眼など知ったことかと、魔王がアリシアを抑えようと、魔法を放とうとするが、
「リリィちゃん、駄目ですよ」
その腕を抑え、邪魔をしたのは他ならぬティナであった。
「ティナ!?」
「こんなところで暴れちゃ駄目ですよ。みんなに迷惑がかかりますよ」
言っていることは正論なのだが、何かがおかしいのは一目瞭然だ。
「これ、離さぬかティナよ」
「暴れないと言うなら離しますよ? ほら、貴女も早く何処かに行って下さい」
ティナが、アリシアに何処かへ行けと催促する。
「何を言ってるティナ! 自分が何をしてるのかわかってるのか!?」
「あーもう、アンタはちょっと黙ってなさい! こんな所で暴れて良いわけないでしょ」
「落ち着けアレウス……」
ティナを援護する様に、フィーナが俺を責め、ウォルナックが俺を抑える。何だ、何が起こっている。
「この人達もこう言ってるし、私帰るね〜。じゃあねお兄ちゃん」
そう言って人混みの中に消えるアリシア。暫くすると、周りの住人の視線も無くなり、通りは賑やかさを取り戻して来た。
「お前達……どういうつもりだ?」
ティナとフィーナ、そしてウォルナックに問い詰める。何かをされた素振りは無かったが、三人に何かが起こったのは確かだった。
「だって、アレウスさんもリリィちゃんも暴れそうだったじゃないですか」
「そうよ! こんな所で暴れるなんて!」
「……お前が暴れると言うなら、止めるまでだ」
三人揃って、俺が暴れようとした。それだけで止めようとしたらしい。
「ふーむ……これはしてやられたかもしれんの」
正直腸は煮えくり返りそうだが、今この三人を責めても仕方ない。
「ふー……分かった。そうだな、暴れるのは良くないな」
「ええ。平和が一番ですよ」
にこやかにそう返してくるティナ。
「とりあえず宿を探すか。お前たちはどうするんだ?」
フィーナとウォルナックはアストラに来るのが目的で、俺達とは目的が異なる。
「アンタを見てないと何しでかすか分からないから、一緒に居るわ!」
「……ならば俺も行こう」
そう言って同行する二人。普段なら仲間が増えたと喜ぶ所だが、この国に限って言うと、一緒じゃない方が良いかもしれない。
そんな、モヤモヤした気持ちを持ちながら、俺達は宿を探し歩き始めた――。
ここまでお読みいただき、ありがとうございましたm(_ _)m




