2-9【VSドラゴン】
目の前に立ちはだかるドラゴン。その真紅の見た目からレッド・ドラゴンと呼ばれる種だ。
過去、魔王封印の旅でも出会うことの無かった存在に、俺は今、挑もうとしている。
ドラゴンは爆剣隊とやらを軽くあしらった後、何をするでも無く佇んでいる。強者の余裕だろうか。
俺は出し惜しみせず、魔法を両手にセットしていく。軽く試しに……なんて事はしない。最初から大技だ。
魔法の反応に気が付いたのか、ドラゴンがこちらを見下ろしてくるが、特に迎撃するつもりはないらしい。さっきの爆剣とやらもそうだったが、先に撃たせる主義何だろうか。まぁ、好都合だ。
今回セット下のは貫通力重視の魔法。生半可な威力ではドラゴンの鱗を突破出来ない。それもまた爆剣が証明してくれた。
ちなみに、火を吹くからと水に弱いとかそういうことは無い。あれは単にそういう器官があるだけだ。
狙うは奴の頭。大体の生物は頭を破壊すればそれで終わる。凝縮された魔力が一本の紅い線となりドラゴンに向かう。
空気を切り裂くように放たれたその魔法は、吸い込まれるように奴の頭に突き進む!
所詮人間、などと舐めているのだろう。避ける素振りも見せず、ただ迫り来る紅い光を見つめている。
直撃したか、そう思った瞬間、光はドラゴンの眼前で弾け、霧散して消えていった。
「魔法障壁!?」
貫通力を高めた魔法ですら、突き破る事の出来ない障壁。まさに魔王級であった。
そのままドラゴンがブレスを吹こうとゆらりと動く。まずい、この位置だとティナが巻き込まれる!
咄嗟に横へ走り、ドラゴンの側面へでる。頭が駄目なら身体はどうだ?
走りながらもう一つセットした魔法を放っていく。さっきと同じ魔法だ。
ブレスが放たれるその刹那、一足先に俺の魔法がその太い脚に着弾する!
光は弾かれることなく、ドラゴンの脚を突き抜け、グラリとその巨躯を揺らす。
どうやら頭以外は強力な障壁はないのか、通るらしい。ドラゴンは俺を敵だと認識したのか、グルルと唸りこちらを見ている。
そのまま身体全体を低く構えた。
暴力的な脚力から繰り出される突進。
ドラゴンの巨躯を利用した、単純だがけして侮れない攻撃だ。それに巻き込まれれば、人の身など逆らうことも出来ず潰れるだろう。
「うぉぉぉ!」
全力で進路から身をかわし、すれ違いざまに再度魔法を放っていく。若干貫通力を落とし、手数を増やす。
散弾の如く襲う魔法は、ドラゴンの鱗を貫き、肉を抉り取っていく。
目標を見失ったドラゴンは、そのまま建物を破壊し、白煙の中に消えていった。
「ハァッハァッ……」
乱れた息を整え、倒壊した建物を注視する。こんな簡単に終わるなんて思っちゃいない。
煙が晴れるその刹那、炎が俺を呑み込まんと襲い来る!
「つっ!」
ギリギリ間に合った障壁が、炎を左右に逃がす。
あの野郎……煙を目隠しに撃ってくるとか、セコい手を使いやがって。
もう少し強者の余裕とやらがあると思ったんだが、どうやら傷つけられた事に怒り心頭のようだ。
続けざまに放たれる炎弾を左右にかわし、お返しとばかりに魔法を放っていくが、学習したのか障壁に阻まれる。
そのまま再度突進してくるドラゴン。ブレスを吐きながら突進しないだけマシか。
ふと思いついて別の魔法をセットする。目標はドラゴンではなく、その下……地面だ。
そのあまりにも重い体重を受け止める地面――次の一歩がそこを踏みしめる瞬間、セットした魔法を発動する!
目論見どおり、地に脚を取られ轟音と共に盛大に倒れこむ。
「よし、上手く行った!」
なんのことは無い、ただ地面を少し凹ませただけだ。急に左右の脚がバランスを崩した結果、倒れこんだ訳だな。
「悪いが遠慮はしないぞ」
倒れているドラゴン目掛け、魔法を連射する。一方からだと障壁に阻まれる恐れがあったから、全方位からだ。
頭部や重要な部分は障壁に阻まれたが、いくつかの魔法が肉を抉り、貫きドラゴンを血に染めていく。
このまま終わればいいと、絶えず撃ち続けていくが、我慢の限界も来たのか、ドラゴンはその自慢の翼を持って身体を空へと解き放つ。
その重さをどういう原理で浮かせているのか、翼を羽ばたかせ見下ろしてくるドラゴン。
俺は魔法をセットし、油断なく奴を見据える。
第二ラウンドが始まる――




