2-8【ドラゴンの脅威】
「ドラゴン……だと?」
災厄――ドラゴン。
大空を自由に飛び、戯れに人や獣を襲う。翼竜などとは比べ物にならないサイズと被害をもたらす存在。
中には言語を介する個体も居ると噂されているが、どちらにせよあまり意味は無い事だ。
人が蟻を気にしないように、竜種と人間では次元が違う。奴らの気まぐれ一つで人間など一瞬で命を終える。
眼前に見えるそれは、城の中庭に悠々と立ち辺りを見渡している。
「さっきのは降り立った衝撃か」
ただ、降りるだけで城を揺らす巨体。質量はそれだけで武器になる。慌ただしく兵士達が中庭に出てくるが、その威圧感だけで皆尻込みしてしまっている。
「ティナ、物陰から出るなよ!」
「は、はい!」
ドラゴンの周りを囲むように例の爆剣隊とやらが姿を表す。そのまま剣を構え、翼竜退治と同じ様に次々と剣を投げていく。
総勢五十人は居ただろうか、投げられた剣はドラゴンに着弾すると、轟音と衝撃を伴いながら次々と爆発していく。
爆発の煙に包まれ、ドラゴンの姿が消える。翼竜ならこれで爆散していたが、ドラゴンにどこまで効くのか……。
兵士達が効果があったかとざわめき出す頃、煙の向こうに光が見えた気がした。とっさに物陰に隠れ、ついでに障壁を貼る。
光の正体、それはドラゴンの口から吐き出される、高温の炎。
夜を照らすその炎は、辺り一面を燃やし尽くし、兵士達を次々に呑み込んでいく。
「馬鹿な! 爆剣が効かな……」
「あ……ああ……」
「た、助けて……」
「ドラゴンでも倒せるんじゃなかったのか!」
抗うことも出来ず、呑み込まれていく兵士達。爆剣とやらもドラゴンの鱗の前には効果が無いようだ。
夜という事もあり常駐している兵士が少ないのも災いした。このままではドラゴンは城どころか、街まで焼き尽くしてしまうだろう。
生き残った兵士達は蜘蛛の子を散らす様に我先にと逃げ出している。
「アレウスさん! 私達も逃げないと!」
ティナの叫びが聞こえるが、俺は眼前のドラゴンから逃げ出すことが出来なかった。
城に居る鍛冶屋を助けると言った手前もある。
まだ見つからない魔王の安否もある。
だがそれ以上に、これがアリシア達の仕業だと思えてならなかった。
竜種を使役出来たのか、勝手に暴れているのかは分からない。ただ、余りにもタイミングが良すぎる。俺達が来た途端にドラゴンが城を攻める? 出来過ぎている。
そんな近くにドラゴンが居るなら、この国は他国をどうこうより、まずはコイツを何とかする方が先だろう。
だからこれはきっと、アリシア達のメッセージだ。倒してみろと、あるいはドラゴンに殺されろと。
ジルベルトの時は魔王がカタをつけてくれた。だがその魔王は今ここに居ない。
「やるしか……ないか」
「アレウスさん!?」
別にこの国に親しい奴がいる訳でもない。街を救う義理もない。それでも、理不尽に蹂躙されるのを黙って見ているつもりはない。
災厄だろうが何だろうが知った事か。あいつらが仕掛けてくるなら全て叩き潰す。それだけだ。
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