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1-2:【働きたくない魔王】

「うーん……むにゃむにゃ……後50年……」


 15年、全てを失ってからひたすらに探し続けた。当時は解ききらなかった古文書も、全てを解き明かした。


 後は魔王さえ復活すれば俺の知識と魔王の力、これさえあればアイツらに復讐出来る……筈だったんだ。


「おい!起きろって!頼む、起きてくれよ!」


 二度寝に入った魔王は俺の言葉に反応する事も無く、スヤスヤと夢の中を満喫しているようだ。時折、「もう食べられないのじゃ……」とか、「働きたくないのじゃー……」などと寝言が聞こえてくる。


 俺はあの旅で魔王を直接見てはいない。世界の敵だと言うからには、人類を憎み、暴れまわる。そんな存在だと思っていた。

 実際、魔王の配下や魔物達はそういうタイプが多かった。



「……仕方ない。最初の印象は良くしておきたかったがやむを得ないか」


 俺は古文書から学んだ呪文を唱える。何でも触れた対象に強力な電流を流す呪文らしい。射程距離を犠牲に、威力を高めた魔法だ。まぁ、仮にも魔王だし、死にはしないだろ……。


「起きてくれよ……」


 眠りこけている魔王の額に手が触れた瞬間、激しい音と共に電流が駆け抜ける。魔王の身体は、まるで陸上に上がってしまった魚のようにビタンビタンと飛び跳ねている。


「あばばばばば! な、なんじゃあ!?」


 急激な衝撃に流石の魔王も飛び起きる。電流が強かったのか、髪は少し焦げ、身体から白い煙が上がっている。


「目が覚めたか魔王」

「開口一番がそれかえ!?お主、謝る事も出来んのか!」


 何を言う、目覚めないお前が悪いんだろう。むしろ起こし方としてはまだ優しい方だぞ。


「そんな事より魔王よ、俺と共に人間達を滅ぼそう。俺達は共に恨みを持つ復讐者の筈だ」


「嫌じゃ!ワシはもう働きとうないのじゃ! このままずっと寝続けるのじゃ!」


 なんだと……。まて、復讐より寝る方が大事だと言うのか?魔王が?そんなのおかしいだろう!


「ワシは何もせず家にこもっていただけじゃ。なのにアイツラは好き勝手戦争をするわ良からぬ事を企むわ!

 見ろ、そのせいで勇者共がズカズカと人の家に入ってきおった!ワシが何をしたと言うのじゃ!」


「いやいや、待て待て!お前が居るから魔物が暴れるんだろう!だから俺達はお前を封印しようと――」


「お主!あの時の勇者共の仲間か! 頼む!ワシをもう一度封印しておくれ!」


 あいつらの仲間扱いを受け、俺の中にある暗い気持ちが込み上がってくる。あいつらは仲間なんかじゃない……敵だ。


「わかった……お前を封印してやろう」

「ホントか!はよう封印するのじゃ!」

「ただし、条件がある――」


 このまま封印しても俺一人ではアイツラには勝てない。一人ずつなら余裕でも数の暴力の前にやられるだろう。それが出来れば魔王の封印なんて解いていない。


「俺の復讐に付き合ってくれ。それが終わればお前を封印する。約束しよう」


 そう宣言して魔王の前に右手を差し出す。後は魔王がこの手を取れば契約成立だ。


「嫌じゃ! ワシはもう働かん!働かんと決めたのじゃ!」


 そうして魔王は俺の右手を叩き、地面に丸まってしまった。


「ここで寝てたらまた勇者共が封印しに来るじゃろ。ワシはそれを待つ。じゃあお休みじゃ……」


 再び眠り始めてしまった魔王。どうやら俺の復讐は、容易に始まらないらしい……。


 辺りには、魔王の寝息だけが木霊していた……。

ここまでお読みいただきありがとうございますm(_ _)m

ゆるーい感じて進めていこうと思います。

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