1-1:【プロローグ】
妹と恋人、どちらも回復担当にしてしまったので、修正しました。すいません。
妹=回復、恋人=攻撃魔法です。
「あ、お前明日から来なくていいから」
目の前にいる優男が、何を言っているのかワカラナイ。
「え?」
「だーかーらー、明日から来なくていいって言ったの!」
コイツは急に何を言い出してるんだろう。ここまで一緒に頑張ってきた、俺達は『仲間』じゃなかったのか?
「実際さぁ、考えても見ろよ。俺達はさ、勇者パーティなんだよ?みんな特別な訳。選ばれし者なの」
そう、俺達は今、勇者として魔王封印の旅を続けている。国から授かった伝説級の武具。それに選ばれた4人だったはずだ。
「お前はさ、たまたま古代文字が読めるってだけで特別じゃあ無いだろう?便利だったからここまで連れてきただけだっての」
「だったら、これからも――」
「いやもう実際、魔王の住処は目の前だし?魔王を封印する為の手段は解った訳だし、お前もう要らないじゃん」
俺が選ばれたのは古代文字で書かれた一冊の本。そこには魔王を封印する呪文が書かれており、俺は唯一、その解読が出来た。今までもその本を頼りに力になってきた……つもりだった。
「そうそう、その呪文も貴方が嬉しそうに教えて下さいましたし」
優男を援護するように、女が出てくる。このパーティの攻撃魔法の要――そして、俺の恋人だった女だ。
「お前……そいつに話したのか!」
「ええ、封印の事だけでは無く、貴方が話してくれた事は余すことなく全てお話ししましたわ」
「お前、ホントにコイツと付き合ってると思ってたのか?バァーカ、こいつは最初っから俺の女だっつーの」
「本当、あの人の相手は苦痛でしたわ。退屈ですし、何も満たされませんの」
「そりゃそうだよな!タダの文字オタクだし?後はもう、普通の中の普通だしな!」
目の前が真っ暗になる。耳は一切の音を拒絶するように、ゴウゴウと音を立てている。
「そういう訳だから。ここでお別れな。お前が勇者パーティとか言って手柄立てるのなんて誰も納得しねぇよ。呪文さえ解れば、それだって古いだけのただの本だろ?」
「さようなら、普通の人。貴方の教えてくれた呪文は代わりに私が使いますわ。貴方は平凡な人生を送って下さいませ」
そう言い残して二人は宿へ帰っていく。一人取り残された俺に、小さな足音が駆け寄ってくる。
「お兄〜ちゃん。あれれ〜勇者様は?」
まだあどけない年頃のコイツは、俺の唯一の家族――妹だ。小さいながらも武具に選ばれ、共に旅をしていてる。
「あ、お兄ちゃん全部聞いちゃったんだね。残念だったね〜。でも仕方ないよね、勇者様の決めたことだし。じゃあねお兄ちゃん。世界は私達が平和にするからね!」
そう言って優男を追い、宿へ駆けていく。そうか、お前も俺を見捨てるのか……。
こうして、俺は、目的も、家族も、名誉を得る機会も、全て失ったのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
勇者が魔王を無事封印してから15年。世界には平和が戻り、皆が幸せに暮らしていた。
勇者パーティは帰還後、盛大に迎えられ今では国王の位を受け継ぎ、王と、その側に付き従う妃として、国を納めている。
魔王が封印された事により魔物は消え、世界は人の手によりメキメキと広がっていた。
「ようやく……見つけた……」
魔王は十字を模した鍵にその身を封印され、人がけして触れることの無い様、秘密裏に隠されていた。
「アイツらに復讐を……全てを奪ったアイツだけは……」
15年前、全てを奪われた男が今、魔王の封印をとく。
鍵は砕け、暗い光となり一人の姿へと集まっていく。
「ははは、目覚めろ魔王よ!そして俺と共に復讐を!」
そして魔王は目を覚ます。眼前の男を見据え、その小さな口をゆっくりと開いた――
「うーん……むにゃむにゃ……後、50年……」
そう言うと、魔王はそのままバタンと横になり、スヤスヤと眠り始めてしまった……。
「えっ?」
ここまでお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m