第2話 かりんのSchool lifeスタートに候☆ 転
「祭神……?!」
「菊真教団は、オレの父ちゃんと母ちゃんが創ったんだ。そん時はまだ、母ちゃんが祭神だった」
菊真教団、か。確か人限界を裏で支配している宗教団体だ、なんて都市伝説があった気がする。
「でも母ちゃんはもう死んだ。だからオレが母ちゃんの生まれ変わりとして、木崎菊として、金持ち達をこらしめてるってわけだ」
菊というのは母親の名前だったわけか。しかし、母親の生まれ変わりとかいくらなんでも無理があるだろう。まあその無理を通せるのが、菊真教団という宗教団体なのだろうが。
「キクさま、神様なの!?」
菓凜が目を輝かせている。順応が早いな。……キクさま、ねぇ。確か本名は木崎縁梨だったよな。
「縁梨と呼んじゃダメなのか」
「……みんなの前じゃなかったらいいけどさ、そんなにイヤかよ」
「人限に敬称をつけるってのがなぁ……。人限なんかが名字持ってるのも生意気」
「露骨だな」
「うん生理的に無理」
「まぁじゃあ……オレ達だけの時なら」
しばらく歩いて到着したのは、いわゆる体育館裏のようなところだった。その建物の外壁には、木製の掲示板のようなものが設置してある。そしてその掲示板には、またも何かが書かれたたくさんの紙が貼られている。そしてその前には、教室にあったのと同じ机と椅子が一つずつ、置いてあった。
「何だこれ?」
「旦那に聞きたいことは山ほどあるが、ひとまずチュートリアルといこうか」
縁梨は置いてあった机に腰かけた。
「……ちゅーとりある?」
菓凜が置いてあった椅子に座る。僕は壁にもたれかかるしかない。
「確か異世界語で使用方法、とかだったか」
「異世界語わかんの?! 後で、いやテスト前教えてくれよ! この学校の座学難しくってさ」
「あ、あぁ……」
コイツ、僕達が魔身依であることを忘れてるのか……? いや、これも演技の可能性がある。まだ油断はできない。
「で、僕達はこれからどうすれば?」
「じゃあまず、今日の授業から説明するな?」
縁梨はいつのまにか伊達眼鏡をかけていた。そういえば菓凜って眼鏡似合うのだろうか。いや、菓凜なら何でも似合うだろうな。
「今日の授業は国護。国民から寄せられた依頼をこなすだけの簡単な授業だ」
縁梨は掲示板に貼られていた一枚の紙を取り外した。
「それでさっきも言ったけど、授業で出されるクエストは基本四人一組で受ける。今回はあと一人を、この中から選ぶ。まぁもう選んじゃったけど」
掲示板に貼られている紙をよく見ると、どれも履歴書のような感じだった。
「ここにプロフィールを貼ってる人は様々だ。戦門学校に入学したくてもできなかった人、金を稼ぎたい傭兵、戦いたいだけの暇人。いずれにしてもこの学校の人限じゃない。四人一組を作れなかったところが金を払って、その時だけパーティーに入ってもらうってわけだ。まぁ無償で受けてくれる人もいるし、そもそも四人一組なんてせずに一人でクエストをこなせる猛者もいるけどな」
縁梨はさっき選んだ紙にクエストの内容などを書き込んでいる。名前の欄には蕾夢と書かれていた。
「そいつは知り合い?」
「まぁそんなとこ。それより待ち合わせ場所はどうする?」
「あのコーヒーカップのとこ!」
菓凜がすぐさま、さっきのお茶碗を指名した。さっきは何だかんだで乗り損ねたからな。……乗るで合ってるのか?
「あぁ、あの足湯か」
「足湯?!」
あれ足湯だったのか。医者的には興味深い。
「あ、ちなみにオレたちはこのシステムのことをフレンドって呼んでる」
縁梨が書き終えた紙を紙飛行機の形にして飛ばすと、空中を一周回ってから学校の敷地外に消えた。おそらく、その蕾夢とかいう人限のところへ飛んでいく魔術でもかけられているのだろう。
「じゃあ足湯にでも入りながら待つとすっかな」
「やったぁ!」
僕達はお茶碗のところへ移動した。巨大なお茶碗の中を覗いてみると、通常の足湯を円形にしたような形になっており、確かに底にお湯が溜まっていた。しかしそれよりも今重要なのは。
「君は……」
いつかの生贄が既に、足湯に浸かっていた。
「これはもう、運命かもしれせません。良い意味でも、悪い意味でも」
彼女が蕾夢なのか。……生贄ごっこの次はフレンド業ってわけか。
「……では、『お花畑の監視』に行きましょう」
彼女はいわゆる、金を稼ぎたい傭兵だった。
朱桃「一旦退場からの再登場早すぎない?」
菓凜「だって……一旦退場って言ってって台本に書いてあって……」
縁梨「朱桃が菓凜泣かした!」
咲玄「今すぐクランクアップにしてやろうか」
朱桃「早すぎない?!」