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第1話 ざくろのFatherが蒸発したヨ☆ 結




「父上がいなくなったのは、母上の葬式が終わってすぐでした。母上の遺産すべてと共に」

土砂降りの雨の日、僕は水没病院の診察室で、これまでのことを人限(にんげん)の常連、羅宗(らむね)に語り終えた。

「た、大変な時に、すみません……」

「いえ、僕も何かしてる方が気が楽なので」

「そう、ですか……? あ、あとで一緒に木蹴りしましょう!」

だが僕には確信があった。父上は蒸発なんかしない。何かやむを得ない事情があったに違いないと思っていた。

「連絡を取る手段は無いのですか?」

「どこにいるかもわからないので……。せめて何をしているのかだけでもわかれば……」

「信頼してるんですね」

「……」

「……あの」

羅宗は一瞬ためらってから椅子に座り直して、ひどく真剣な顔をした。

戦門学校(せんもんがっこう)って、知ってますか?」

「あぁ、確か……」

「人限が非人限に対抗するために最近設営した、いわば勇者育成学校です」

前に患者から聞いたことがある気がする。僕としては、まだそこまで人限側が追い詰められているようには思えないのだが。

「ボクも一度体験入学して授業を受けたことがあるんですけど、実際に遠征に行くことも結構あって……」

「え?」

「あ、貴族が体験できる授業があるんです」

「いや、そうじゃなくて、ボク?」

「……やっぱり、おかしいでしょうか? ボクは気に入ってるんです、けど……」

羅宗はさみしそうな目をした。

「いやいや、い、いいと思うよ?」

羅宗がボクっ娘だったとは。知らなんだ。

「それで、その学校が?」

「その……入学、してみてはどうでしょうか」

「……へ?」

「多分、情報はたくさん入ってくるかと……」

確かに魔身依(まみい)である僕なら、バレずに何とかなるかもしれない。非人限である父上の情報も、非人限に対抗するための学校なら、もしかしたら。

「細かい手続きは、お父様に頼めば何とかしてくれると思います」

さすがは王家に仕える貴族だ。

「なるほど……」

安直かもしれないが、他に父上を探す方法が思い当たる訳でもない。やるしかないか。

「協力、感謝します」

「はい! ボクも、先生の力になれて良かったです!」

今後についての相談をしながら、玄関まで見送りに出た。

「雨は……やんだのか」

「雨はやみます! 必ず!」

羅宗は意気揚々と帰っていった。僕も準備に取りかからなければ。羅宗が見えなくなってから病院内へ戻ろうとすると、菓凜(かりん)がいた。

「さっきの話、聞いてたのか」

「うん……」

「なら話が早い。父上はにいにが、ちゃんと見つけてくるからな!」

「……にいにも、どっか行っちゃうの?」

菓凜の反応は、予想外のものだった。

「毎日ちゃんと、帰ってくるから」

「じゃあ、かりんも一緒に行く!」

菓凜は既に泣きそうな顔をしていた。

「言うこと聞くから! いい子にするから! 連れてって、お願い……」

余りにも危険すぎる。もし正体がバレてしまったら、全校生徒に加えて全教員と一度に戦うことになる。どう考えても菓凜を連れていくわけにはいかない。……でも。

「何かしてる方が、気が楽か……」

実の母親を目の前で失い、仲の良かった義父にまで会えなくなったのだ。菓凜も、いや菓凜の方が苦しいに決まっている。

「わかった。何があっても、にいにが守るからな」

守るしか、ない。

「いいの……? やったぁ!」

菓凜は、それは嬉しそうに泣いていた。僕が菓凜を守るしかない。僕が菓凜を幸せにするしかない。例え命に変えてでも。どんな手を、使ってでも。




朱桃「先輩責任重大ね」

咲玄「君誰」

朱桃「火野朱桃(ひのすもも)よ」

咲玄「誰」

朱桃「次回、かりんのSchool lifeスタートに候☆ さぁ、生き残るのはどっちかしら」

咲玄「決め台詞……!?」

朱桃「わ、悪い?!」

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