第1話 ざくろのFatherが蒸発したヨ☆ 承
「私が生贄として捧げられたものです」
僕達が着いた時には、生贄は父上に謁見していた。
「ですが」
生贄は豪華な椅子に座る父上の方を見た。
「お望みでしたら、私はあなた様の望みを叶えることができます」
「やっぱりか」
出遅れた僕達は通路から様子を伺っていた。
「にいに、やっぱりって?」
菓凜が僕を見上げる。
「多分あの人限の女子も生贄ごっこの人だね」
「いけにえごっこ?」
「捧げる人達から金をもらうだけもらって、捧げられた後は言いくるめたり隙をついたりして生還する。それの繰り返しで稼いでる人達が最近いるって、患者の人限が言ってたんだ。生贄は基本的に違法だから訴えるにも訴えられないらしいしね」
「どれいごっことおんなじ?」
「まぁ大筋はね」
そう言って奴隷の方を見ると、目が合ってから罰が悪そうに横を向いた。これは確定だな。というかさっきのお茶持ってきちゃってるし。
「待ってくださいお望みなら、何でもしますから……」
生贄が慌てている。
「これは助からないな」
「何でだよ」
奴隷がさっきのお茶を飲みそうになって慌てて止めながら尋ねてきた。
「僕達魔身依の最大の望みは種の繁栄。そのために必要なのは、人限の死体だけだからね」
僕はもう一度生贄を見た。そういえば見覚えがあるような。いや、この記憶は……。
「父上」
僕は広間に出て父上に進言した。
「この生贄は我々崇高なる魔身依種の依代に相応しくありません。今から証拠を見せるので、生贄の君、服を脱いで」
「え?」
「は!?」
奴隷が広間に飛び出てきた。
「確かに何でもするって言ってたけど、菓凜の前、あ、いや、お嬢様の前だぞ!」
「……え、何すると思ったの」
「そ、それはその……」
奴隷は黙らせた。というか僕もそこまで女子慣れしてはいない。
「腹部のあざを見せるだけでいいから」
「!」
生贄の顔が強張った。気遣いが無いのはわかっているが、仕方のないことだと僕は思った。
「……わかりました」
生贄がボロ雑巾のような服をまくると、腹部に真っ赤に光るあざがあるのが見えた。
「なにあれ……!」
菓凜が驚いている。
「彼女は恐らく長い間暴力を受けてきた。呪いにも匹敵する程の怨念とともに」
「じゃあアレって、呪いの刻印みたいなものってこと……?」
奴隷が生贄を見て驚いている。怨念と魔力さえあればできてしまうのが呪い。そのことを理解している以上、やはりこの奴隷は異世界転生者じゃない。
「この生贄の身体は、魔身依種の依代たる器ではありません」
途端に父上は興味がなくなったのか、後を僕に任せて奥に戻っていった。父上が見えなくなってから、僕は壁に掛かっていた雨合羽を生贄に渡した。確かこれは菓凜に買ってあげたが大きすぎたやつだ。これくらいあげてもいいだろう。
「君、出口はわかるよね?」
「……見逃してくれるのですか」
「生贄ごっこの組合か何かがあるのなら伝えておいて。魔身依には手を出すなって」
「……なぜこの呪いのことを?」
「僕が依代にしてる人限の記憶にあった。生前一度会ってるらしいけど」
「……覚えてはないです」
「まぁいいか。ついでに奴隷の君も、出口を案内してもらうといいよ」
「あ、あぁ……」
「にいにおなかすいたー!」
菓凜が僕の白衣の裾を引っ張っている。割と強い。
「帰ってご飯にするかな」
僕と菓凜は瞬間移動で水没病院まで戻った。それからしばらくの間、この奴隷と生贄に会うことはなかった。
咲玄「次回、ざくろはBADな生徒になるのか。……これ僕が言うのか」
菓凜「奴隷さんと生贄さんは一旦退場みたいだから一言!」
生贄「せめて名前で呼んでほしかった」
奴隷「せめてちゃんとした服が着たかった」
生贄&奴隷「実装待ってます!」