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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第4章 忍び寄る敵
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神無月剛毅

 部屋に入ると初めに目に入ったのは、どっしりと椅子に座っている大柄の男――神無月剛毅その人であった。


 「ふむ、なかなか時間がかかったようだが、無事にここまで来れたようだな。そこの娘はアルベルトの娘か」


 剛毅は立派な髭を撫でながら告げる。


 「間違いではないですけど、どうしてこのようなことをしたのですか? 警備員に伝えてくれていれば、安全に来られたものを。おかげでリーゼロッテに危害が及ぶところでした。正当な理由がなければ納得できません。もし、気軽な気持ちで仕組んだのならば――」


 言い終えると同時にアリスは殺気を放つ。しかし、剛毅は冷静を保っている。流石、王というだけあって肝が据わっているようであった。


 「それは悪かったと思っている。元々は君だけを試すために、あえて侵入させるように仕組んだのだがな。あの場で君が”エルフリーデ”と言っても確信はなかった。ただ実力があるだけの人間、もしくは暗殺者の可能性もあったからな。まあ、楓と同等の暗殺者など早々いないとは思うがな。そして、”エルフリーデ”ぐらいの実力であれば、ここまで来れると仕組んだ。そこまでは、よかったが……まさか、サウスの王女まで来るとは思わないだろう? サウスの王女はなかなかのお転婆娘のようだ」


 剛毅は部屋に響くほどの大笑いをする。お転婆娘と言われ、リーゼロッテは顔を赤くする。


 考えてみれば、いくら剛毅が仕組んだとはいえ、こちらが王宮に侵入した立場だ。それで怪我をさせられたといっても、非があるのは明らかにアリスたちだ。


 (確かにこちらが悪いのもあるが……)


 そもそも剛毅がまどろっこしい真似をしなければ、こんなことにはならなかった。


 「結果的には無事だったことだ。今回のことは水に流そうではないか。君たちは侵入していない。俺がこの場に呼んだと。それに、帰りの安全は保証する。それでいいだろう?」


 「……わかりました。今回は何もありませんでしたね」


 腑に落ちないが、相手の条件を飲むしかないだろう。いくらイーストがサウスと友好的であっても、侵入したことがばれれば、立場が悪くなるのはアリスたちの方だ。


 アリスは渋々納得する。呼んでおきながら、脅しの材料を手に入れるとは。これがイーストの王か……


 「ふむ。それはよかった……それでだ。早速だが今回、君を呼んだわけだが、これを見てくれ」


 剛毅がアリスに数枚の資料を手渡す。


 「これは?」


 「それは、イーストで起きた事件がまとめられたものだ。それの最後の項目を見てくれ」


 アリスは言われるがままにページをめくる。そして、書かれていたのは――


 「……器物破損?」


 これが重要な案件? とアリスは首をかしげる。


 「確かに器物破損とは書かれているが、明らかに不審な点がある。詳しく目を通してくれ」


 剛毅の言葉が気になり、アリスは資料を読み進める。リーゼロッテも内容が気になって横から覗き込んでくる。


 (器物破損……件数は6件。それも場所はバラバラ。共通点は見当たらない。唯一挙げるとすれば、破壊の目的がわからない、か……)


 読み進めるほどに疑問がわいてくる。


 器物破損は他人のものを奪う――盗み目的で行われるが、明らかに盗み目的ではないと思われるものばかりだ。


 (破壊の目的がわからない。そこに何かがあったのか?)


 「器物破損と書かれていますが、何が破壊されたのですか?」


 「報告によるとな、祠が破壊されたそうだ」


 (祠――?)


 アリスには聞き覚えがある。それはどこであったか。


 ――あれはなんですか?――


 ――ん? どれ?――


 ――祠じゃない?――


 (……ッ! あの時か!?)


 アリスの中で何かがつながる。この意味がないように思われたことがなんなのかを。その話をするためには――


 「……リーゼロッテ。この場から席を外してくれないか?」


 「――えっ?」


 突然のアリスの言葉にリーゼロッテは驚く。


 「これからのことは話せない。それだけ重要なことなんだ。信用していないわけではないが、多くの人間に話せば、情報が漏れる可能性がある。だから、この話は聞かないでくれたらありがたい」


 いつになく真剣なアリス。それほど秘匿なものだと、リーゼロッテは悟る。


 「わかった。聞かないことにするよ……その代わり剛毅様、あなたの娘さんとお話ししたいのだけれど、いいかしら?」


 「ああ、問題ない。こちらが案内させよう。しばらく待って――」


 「――待たなくても、そこにいる方が案内してくれれば、よいのでは?」


 アリスは剛毅から少し視線を外す。


 「むしろ、そちらの方も席を外してくれたら嬉しいのですが。例え、専属の護衛であったとしても」


 アリスの言葉に姿は見えないが、剛毅の隣でいるであろう人物が殺気を出すが、剛毅が片手で制する。


 「……ッ!? 陛下!」


 「よい。心配しなくとも大丈夫だ。それに、お前も気づいているだろう? 彼が一切の魔力を出さずにここまで来たことを。本気で殺しに来れば殺せると。だが、まだ殺されていない。だから安心しろ。彼は味方だ。それに、お前であっても、彼を相手するのは楽ではないであろう?」


 「……わかりました。陛下の仰せのままに……」


 声だけの人物は渋々納得し、魔法を解いて姿を現す。


 「この人があなたの懐刀――”青龍”ですか」


 「ほう、よくわかったな」


 「当然ですよ。違うとはいっても、やはり朱雀に似ている。知っているものからすれば一瞬でわかりますよ」


 まあ、そもそも顔自体、知っていますけどね、と呟く。


 「そうか。では龍司。彼女を玲奈のところまで頼む」


 「わかりました。では、こちらに」


 “青龍”もとい龍司はリーゼロッテを引き連れて、部屋から出て行く。そして、アリスと剛毅――二人だけとなった。


 「望み通り、二人きりにしてやったぞ。ここまで言うには相当な理由があるようだな」


 流石は剛毅。勘も鋭い。それはアリスにとってありがたかった。


 「はい。さきほど祠と聞きまして、思うところがありましてね」


 「ほう、どのようなことだ?」


 「私たちが以前、ファフニールに襲われた理由を探るためにセントラルを調査しました。そこで麒麟と出会い、ファフニールが封印されていた場所まで案内してもらいました。そして、そこにあったのが――」


 「――祠、というわけか」


 「はい。ファフニールの封印が解かれたのは、祠が破壊されたからです。そこで私が思うのは今回の件、サウスで事件を起こしたものと同一人物ではないかと考えています」


 そうなれば、色々つじつまがあう。無意味そうに見える破壊活動。しかし、すべてはある目的のために――


 (ここまでは何も起こっていない。なら、やるべきことは……)


 「それで、イーストには祠がいくつ残っていますか?」


 奴らの目的は祠の破壊。ならば、破壊を阻止すればいい話だ。


 剛毅は神妙な面持ちで――


 「――あと1つだ」


 

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