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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第3章 交流戦
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エピローグ

 交流戦が終わり、時は夕方。剛毅と会うまで少し時間があったので、イーストの街をリーゼロッテと二人でまわっていた。そして今後のことをリーゼロッテに伝える。


 「……そう、まだ終わってないんだね」


 「流石にこれだけではなかった。楓のことは、あくまでついで。本当の任務はこれからだということだ」


 真剣に答えるアリスをリーゼロッテは神妙な面持ちで見つめる。


 ”エルフリーデ”の仕事のことはあまり知らないリーゼロッテだが、危険なことくらいはわかっている。交流戦が終わった後くらい、アリスにはゆっくりと休んで欲しいとリーゼロッテは思っていた。しかし、それは叶わない。それは”エルフリーデ”――力を持った者の定めであるのだから。


 「もう、任務の話は終わり! 今はこの時間を楽しもうよ!」


 暗い話はもう終わりとリーゼロッテは告げる。


 「そうだな。夜まで時間はある。リーゼロッテはどこに行きたい?」


 アリスも任務のことは忘れようとリーゼロッテの話に乗る。


 「じゃあ、私はあの店に――」


 楽しそうに話していたリーゼロッテが突然、指を指したまま黙り込む。どうしたのかと思い、アリスはリーゼロッテの指差した方向に視線を向けると――


 「――ねえ、ちょっといいかな?」


 その先にはアリスの対戦相手であった楓が立っていた。

 目の前に立つ楓は少し気まずそうにしていた。恐らく、リーゼロッテがいたら話しにくいことなのであろうとアリスは結論づける。


 「リーゼロッテ、ちょっとだけ待っててくれないか?」


 アリスもリーゼロッテを一人にはしたくはなかった。自分はリーゼロッテの護衛という立場もあったからだ。

 しかし、クロノスたちを付けていたら大丈夫であろうと、それとアリスも楓と話がしたかったのでリーゼロッテに確認を取る。


 「……別にいいよ。でも、早くしてね」


 何故か少し不機嫌だが、楓と話すことをリーゼロッテは許可する。


 「わかった。先にあの店に行っててくれないか?」


 「うん、わかった……」


 渋々とリーゼロッテは先程、行きたがっていた店へと入っていった。


 「ここでは話しにくいだろ? 場所を移動するか。どこかいい場所はないか?」


 「もちろんあるよ。ついてきて」





 

 楓についていくこと数分、日も完全に落ち、イーストは夜を迎えていた。


 「ごめんね、連れの子もいたのに」


 楓は申し訳なさそうにアリスに謝る。自分が話したいことがあったとはいえ、他人の楽しみを邪魔したことに罪悪感を感じていたのだろう。


 「大丈夫だ、とは言えないが、後で詫びを入れるさ。リーゼロッテも多分、許してくれるだろう」


 「えっ!? あの子がリーゼロッテ!? あ、いやっ、リーゼロッテ様!? 私、無礼なことをしちゃった! まさか国の関係が悪くなったりしないよね!?」


 先程のリーゼロッテからアリスを奪い取ったことを思い出す楓。自分は取り返しのつかないことをしてしまったかもしれないと慌てふためく。

 その様子を見てアリスは苦笑する。これが自分と死闘を繰り広げた”炎帝”なのかと。しかし、今の楓は年相応の少女にしか見えない。


 「リーゼロッテは権力をむやみに使うことはない。むしろ、もう少し王族として振る舞ってほしいのだがな」


 アリスが思い出すのは普段のリーゼロッテ。普通の生徒と変わらない。そのおかげで話しやすいのだが、本当に普通の生徒と変わらない。王族どころか貴族よりも立ち振る舞いを気にしていない。至って普通の生徒。”エルフリーデ”に所属しているアリスとしては、少しでもいいから王族としての威厳を持って欲しかった。


 「彼女を大切に思ってるんだね」


 「友達だからな」


 「本当にそれだけ? 今のアリスの表情から、それだけとは思えないけど?」


 (今の表情……?)


 楓の言葉にアリスは首をかしげる。なんせ、自分の表情は当たり前だが自分では見えない。なので、どんな表情をしているかわからなかった。


 「わからなかったらいいよ。だったら都合がいいから……着いたよ」


 楓が連れてきたところ――それはイーストを一望できる丘の上であった。


 「ここは私が一人になりたいときに来るところなんだ。なんていうか、落ち着くんだ。ここの頂上で寝転がると。アリスも座りなよ」


 楓は丘の上に腰を下ろし、アリスにも座るように促す。アリスも楓の言葉に甘えて、楓の隣に腰を下ろす。


 「……今日はありがと。色々と迷惑をかけちゃったね」


 「別に迷惑などかかっていない。これで迷惑と行っていたら、任務などすべてが迷惑だ」


 「はは、確かにそうだね……」


 アリスの言葉に楓は微かに笑う。そして――


 「……今日さ、アリスに負けて思ったことがあるんだ」


 「ほう。では、俺がやったことは無意味ではなかったということだ」


 「うん。多分、勝ち負け関係なくアリスとの戦いは私のためになったよ。本当にアリスと戦えてよかった」


 ニコリと微笑むように楓はアリスに笑顔を向ける。しかも、普段の無理した笑顔ではなく、何か吹っ切れたかのような笑顔を。


 「では、お前を助けることが出来たということでいいんだな?」


 「うん、本当にありがとう。そのおかげでね――私にも目標が見つかったんだ」


 「そうか。で、その目標とは何なんだ?」


 「ふふふ、秘密!」


 そう言って、楓は丘の上に寝転がり夜空を見上げる。夜空には昨日よりも美しい、完全な満月が浮かんでいた。


 「……月が綺麗だね」


 「ああ、そうだな」


 楓はこの言葉に意味を持って呟いた。恐らくアリスはこの言葉の意味を知らない。アリスの態度を見れば一目瞭然だ。しかし――

 

 (今は伝わらなくてもいい。いずれは――)


 こうして、最強と言われた孤独だった一人の少女は新たな一歩を踏み出したのであった。


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