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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第3章 交流戦
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終わらない任務

 (ふぅ、なんとか勝つことはできたな……)


 結界のダメージ変換により外傷はないが、アリスは魔力を失って倒れている楓を見下ろす。


 自分の慣れない戦闘スタイルということもあったが、やはり”神無月”の一人。アリスであっても一筋縄ではいかなかった。


 (楓を倒すことは出来たが、彼女を救えたかはわからない。だが、これでよかったんだよな……)


 楓がどう思ったかはわからない。しかし、アリスが出来ることはやった。今後どうなるかは楓次第であろう。


 「――勝者、アリス・ロード! よって、今回の交流戦はサウス学園の勝利です! 皆様、死闘を尽くした彼らに精一杯の拍手をお送りください!」


 わあああ! と会場に鳴り響く歓声と拍手。それらを聞いてアリスは交流戦の終わりを感じる。


 (交流戦も無事に終わった。これで一件落着といったところだな……)


 そのまま視線を自分たちの控え室へと向ける。アリスの目に映るのは喜び合って抱き合っているチームメイトの姿だった。それを見てアリスは交流戦に参加してよかったと思えた。


 しかし、あくまで終わりを迎えたのは#交流戦だけ__・__#であった。


 




 この後、リーゼロッテたちの元へ戻ったアリスは全員から祝いの言葉をもらった。しかし、ずっとのんびりしているわけにはいかない。交流戦の後すぐに表彰式があるのだ。当初、表彰式に立つのは生徒会長でもあるリンのはずなのだが――


 「アリス。表彰式はあなたが出なさい」


 もちろん、チーム全員が表彰式に参加する。しかし、代表して一人が国王の前に立つのだ。その役割をアリスがしろというのだ。

 

 「私が出ないといけないというのはわかってる。でも、あなたは元々、任務でここに来たのでしょ? それで何もないはずがない。だから、相手もどこかで接触を図りたいと思っているはずよ」


 最初はアリスも断ったが、リンの言うことも一理あった。


 今回の任務は楓がアリスと戦いたいがためにといった偽りの任務であった。しかし、よく考えてみると、いくら楓が理由を考えて伝えたとしても相手は国のトップ。”神無月”といっても意見が通るはずもない。しかし、結果的に楓の望みは叶い、アリスと戦うことが出来た。それは何故か。答えは簡単だ。


 (イーストもなんらかの目的が俺にあるというわけか……)


 ならば、こちらから接触した方が相手としても嬉しい限りであろう。もし、何も言ってこなければ何もない。本当にアリスの任務は終わりとなる。


 (そんなに都合がいいはずがないか……)


 リンに言われて足取りが重くなるアリスであった。






 そして表彰式――


 サウス学園の代表としてイースト国王の前に立つアリス。


 (この人がイーストの国王……)


 アリスは目の前の剛毅からただならぬ気迫を感じていた。剛毅は立派に生やした髭に鍛え抜かれた大柄な体。いかにも武人といった体つきである。

 サウスの王であるアルベルトも昔は父ガイアと並ぶ実力者であったが、特別大柄と言うわけではなかった。アルベルトとは違った体つきの剛毅をアリスは注意深く観察する。


 「このたびは両者、ご苦労であった。なかなか興味深いものを見させてもらった。そしてサウス学園の生徒よ、よくぞ勝ちをもぎ取った」


 剛毅は一歩前へ出てアリスに握手を求める。アリスも観客の前で剛毅が何もすることはないだろうと、ためらうことなく差し出された手を握る。


 「……楓を打ち破るとは、流石、”エルフリーデ”ではないか」


 「……やはり気づかれますか」


 剛毅がコソッとアリスだけに聞こえる声で伝える。


 「むしろ気づかない方がおかしいだろう? 仮にも学生とはいえ楓も”神無月”の一員なのだ。その楓が流石に普通の生徒に負けるとは思わないからな。だが、祐斗の相手の生徒も実力が桁外れであったな。彼女も”エルフリーデ”と関係があるのか?」


 「完全に関係ないとは言えないですけど、将来、”エルフリーデ”に入ることになるかもしれませんね……さて、わざわざ話しかけてきたということは何か用があるのですか?」


 剛毅はアリスがあらかじめ自分が話しかけてくることを予測していたような口調に、少し驚いたような表情を見せる。


 「……ならば話は早い。今夜、王宮に来てくれないか? 王宮の場所はわかるだろう? 警備の者には伝えておくから、すぐに中には入れるはずだ」


 「わかりました。では、今夜向かいます」


 「理解が早くて助かる。そろそろ表彰式を進めないといけないのでな」


 そう言って、剛毅はアリスから離れ、表彰式を進める。


 「サウスの者たちよ、時間はまだある。この後は気楽にイーストを観光してくれ。それでは、サウスとイーストの交流戦を終了とする!」


 剛毅の言葉で会場は歓声に包まれる。そして、剛毅はその場を悠々と去って行く。やることを終えたアリスもリーゼロッテたちの元へと戻る。


 (やっかい事はまだ続くか)


 任務は終わらない、まさに昔から平穏になれないアリスにとってどうってことはない。しかし、気がかりなこともある。


 (サウスでも問題となっている不審な奴らの動き……もはやサウスだけでは厳しい状況になってきたか……)


 そうと決まったわけではない。もしかしたら、案外、呆気ない任務かもしれない。


 (どちらにしろ、任務は完遂するだけだ)


 それがアリスのプライドであり、生きる意味でもある。どんな任務でもアリスがやることは変わらない。


 不安が残る中、交流戦は無事に終えることが出来たのであった。


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