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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第1章 始まり
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入学4

 「はいっ! 席に座ってください!」


 教室の扉をバンッ! と勢いよく開けて入ってきたのは、このクラスの担当教師であった。


 「ええーと、このクラスの担当のミーナ・シュバルツです。これから1年、このクラスの担当なのでしっかりと覚えてくださいね~」


 ミーナは少し頼りない笑顔を生徒に向ける。


 (ミーナ・シュバルツ……かなりの実力者だな。得意な属性は風か……)


 アリスは頼りなさそうなミーナを視ていた。見かけでは頼りないとしかいえないが、やはり学園の教師。内から溢れる魔力の質が常人のものとは思えないほどであった。


「では皆さん、自己紹介しましょうか。ええーと、じゃあアリス君からどうぞ」


 ミーナを視ていると、ミーナから声がかかる。どうやらアリスはこのクラスで出席番号が一番初めだったようだ。


 「はい。アリス・ロードです。よろしくお願いします」


 アリスは自分の席から立ち、簡潔に自己紹介をする。


 「次、イルシアさん」


 「はい!」


 自己紹介とは何故か最初に行った人に合わせてしまうものだ。最初にアリスが簡潔すぎる挨拶をしてしまったため、誰もが名前、よろしくお願いしますの言葉しか述べなかった。






 (長すぎるだろ、これ……)

 

 アリスから始まった自己紹介は、Aクラス全員――つまり50人分することにより終わりを迎えた。


 「全っ然覚えらんね……」


 レンが机に体を預けながらつぶやく。


 (うん、レンの言う通りだ。印象ない奴らを覚えるのは大変だ……)


 誰かが違った自己紹介をすればよかったのだろうが、このクラスでは全員、同じような自己紹介で終わってしまった。だから、誰も印象に残らず、アリスはほとんどの生徒の名前を記憶していなかった。恐らく他の生徒も同じようなことを考えているだろう。


 「はい、自己紹介が終わりましたね。早速ですが、少しだけ授業をしましょうか。ええっと、それでは魔法についてしましょう」


 そんな生徒たちの様子を全く気にせず、ミーナは授業へと移る。


 魔法――この世界では8つの属性に分けられる。

 まずは魔法の基本となる火・水・風・地・雷の五大属性。五大属性に分類されない光・闇。さらに、その7つの属性のどれにも分類されない無属性魔法がある。


 「では早速ですがアリス君。五大属性について説明してください」


 「はい。五大属性とは火・水・風・地・雷の最も基本となる属性の総称です。また、基本的な特徴ということで、使用者が多いことが特徴です」


 アリスは簡潔に五大属性の特徴を挙げた。


 アリスの言った通り、五大属性の種類が多いのも特徴だが割合も圧倒的に多い。魔法が使えるものでは、五大属性を扱えるものが8割、残りの2割が光・闇属性である。もっといえば、火属性と水属性で全体の4割を占めている。


 「はい、ありがとうございます。では光・闇属性についてリーゼロッテさん。よろしくお願いします」


 「はい。その2つの属性は使用者が五大属性に比べて少ない傾向があります。特に闇属性はまだ解明されていないことが多々あります」


 リーゼロッテは席を立ち、キリッとした表情で答える。


 (確かに闇属性は理解しづらいからな)


 アリスはそんなことを考えながら、机に肘をつく。


 これは光・闇属性の使用者が少ない原因でもあった。魔法とはどれだけ明確なイメージを作れるかで扱える魔法が変わってくる。たとえば、使用者が多い火や水といった属性は普段の生活から身近にあるため想像しやすい。え? 土属性? 実は地味という理由であまり使われない。そういった魔法に対する意気込みも大切である。

 一方、光・闇属性はイメージがしづらい。光属性はただ光っている、もしくは明るいといったイメージしかない。闇に関しては、闇とは何? といった議論が出るくらいである。しかも、闇の定義にも種類があり、そのせいで闇というものが、あやふやになっている。

 しかし、あまり知られていないことだが、誰でも全属性の魔法を使うことはできる。現にアリスの知り合いで全属性の魔法を扱える人がいる。……実際には1つの属性を極めた方が強いのだが、この人物だけは例外だった。なにしろ・・・・魔法・・しか・・扱え・・なかった・・・・からだ・・・


 「ありがとうございます。では最後に、無属性をレンさん」


 「はい!」


 自信満々に席を立ち上がり、返事をするレン。


 (お? 自信ありげだな)


 アリスはレンの答えを期待していると――


 「わかりません!」


 ガクン!


 思わずアリスは体勢を崩してしまった。


 (お前、もうちょっと考えろよ……)


 アリスはレンの答えに苦笑する。正直、もっとまともな答えが出ると思っていただけに、アリスは苦笑するしかなかった。


 確かに無属性の説明は入学したばかりの生徒にとっては難しかった。レンの答えも選択肢としては十分ありえた。

 しかし、無属性は他の属性よりも大切だ。誰でも扱えるだけに、いかに無属性魔法を扱えるかによって勝敗が決するほどである。


 しかし、レンのあの答え方はあまりよくなかった。あれだけ自信満々に返事したのに、この答えとは。さすがのミーナも引きつった笑顔をレンに向けている。


 「で、では、知っている無属性魔法を答えてください」


 ミーナは違う質問をする。さすがのレンでも無属性魔法の名前ぐらいは知っているだろう。


 「はいっ! ええっと、”身体強化フィジカルアビリティ”、”武装強化ウェポンアビリティ”です」


 さすがのレンでも無事、無属性魔法の名前を答えることができた。


 この2つの魔法の熟練度によって実力が変わるといっても過言ではない。特に身体強化は重要で使用していない時と比べて約2倍、身体能力に差が出る。対して武装強化は精霊がいたらそこまで考えなくてもよいからだ。しかしそれも、レベルが高くなっていくと無視できないものになるが。


 「はい、おつかれさまでした。では今日の授業はここまでにします。ありがとうございました」


 「「「ありがとうございました!」」」


 その後も授業は順調に進み、今日は入学式ということもあって午前中だけで終わった。アリスが帰る準備をしていると、レンがアリスに振り返る。


 「なあ! 一緒に帰ろうぜ!」


 「ああ、帰ろうか」


 「アリス、私もいい?」


 「もちろん。いいだろ、レン?」


 「おうっ! じゃあ三人で帰るか!」


 三人で帰ろうとしていると突然、教室で一人の生徒が声を上げた。

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